ショット式と蓄熱式の違いとは?効果的かつ安全な脱毛方法、第46回日本美容外科学会総会・第148回学術集会
ポイント
- 日本医療脱毛学会の専門家たちが有効で安全な脱毛について意見を交わした
- 「ショット式」は施術が素早くて痛みが強く、「蓄熱式」は毛を剃らずにできるなどと紹介
- 医療脱毛の特徴のほか、レーザー照射による煙や時間の節約の観点などが話し合われた
脱毛を効果的、かつ安全に行うにはどうすればよいのか?第46回日本美容外科学会総会・第148回学術集会で、「安全で効果的な脱毛」と題するシンポジウムが開かれ、ムダ毛を処理する最善の方法についての議論が交わされた。日本医学脱毛学会理事を務める専門家5人が登壇し、それぞれの考えを語った。
ショット式脱毛法の長所と短所
ヒフコNEWSでも伝えているように、脱毛をめぐるトラブルが多く報告されている。そうした中で、いかに有効で安全な脱毛を実現していくのかは重要な課題と言える。美容医療の中でも脱毛は特に件数が多いと報告されている。
議論をリードしたのは、日本医学脱毛学会理事長で、医療法人愛誠会つかはらクリニック(大阪市阿倍野区)院長の塚原孝浩氏と、同学会副理事長で、有川スキンクリニック(東京都新宿区)院長の有川公三氏。
このほかおくむらクリニック(長崎県諫早市)副院長の奥村千香氏、広尾プライム皮膚科(東京都渋谷区)院長の谷祐子氏、林原医院(鳥取県米子市)院長の林原伸治氏も登壇した。いずれも日本医学脱毛学会理事を務めている。
塚原氏はショット式の脱毛器を使った効果的で安全な脱毛について解説した。
そもそも脱毛の方法は大きく2つに分かれている。一つは、「ショット式」の脱毛法で、もう一つは、「蓄熱式」の脱毛法。いずれも毛やその周辺の組織にある色素「メラニン」をターゲットにしてレーザーの光を当てて熱を加え、毛を処理する方法だ。
その中でもショット式は、ごく短い時間で高いエネルギーを照射するのが特徴で、毛の生える毛包の周辺組織に熱を加えることで脱毛する。ハンドピースを肌に当て、肌に順番に光を当てていく施術となる。
長所は素早く効果を実感できることなどだ。塚原氏は、「ショット式では、照射したときに毛が跳ね上がる現象があり、毛が早めに抜け落ちて効果を感じやすい」という。さらに、ジェルが不要でベタベタ感や冷たさの不快感がないことも好ましい点だという。ショット式は普及台数も多い。
ショット式の欠点は痛みが強いことで、特に初めての人では痛みが気になりやすい。また、脱毛を繰り返していると「硬毛化」という毛がかえって濃くなることがあるのも課題となる。
塚原氏によると、医療脱毛のトレンドは、効率化にある。そのためレーザーを出す照射口の大口径化が進んでいる。今後課題を解決しながら、冷却するための補助装置を使うなどして、より良いショット式脱毛へと改善していくことが望まれるようだ。
※代表的な施術器であるLumenis社のSplendor Xが27mmの正方形の照射口、Candelakk社のGentleMax Pro Plusが26mmの円形の照射口に対応。それぞれ1秒間に3回の照射を行える。
蓄熱式は剃毛要らず
続いて説明した有川氏は長く蓄熱式脱毛に取り組み、日本美容医療診療指針の作成では蓄熱式脱毛のパートを担当したという。
有川氏によると、蓄熱式ではレーザー光が毛の軸のメラニンに当たり、ここで蓄熱が起こり、約55度に温度が上昇することで脱毛される。ショット式とは異なり、ジェルを塗った肌の表面にハンドピースを素早く滑らせ、行き来させるように施術する。
蓄熱式では、ジェルを使うので、肌を滑らかにするほかにも、保湿や毛髪が熱せられたときに出る煙である「レーザープルーム」を防ぐ効果が期待できるという。
脱毛前に毛を剃る必要があるかどうかで、ショット式と蓄熱式は異なっているという。
というのは、ショット式の脱毛をするとき、先に毛を剃らないといけない。なぜなら、毛が熱せられて焦げると、煙が出るほか、肌にヤケドのダメージを与える可能性があるからだ。そこでショット式の脱毛前には毛を剃ることでこれらの問題を避けている。
それに対して、蓄熱式ではジェルにより肌が覆われるためヤケドの心配がなく、レーザープルームも出ない。
有川氏は「15年前から剃毛をしていない。剃毛すると、肌を傷つけたり、VIO脱毛の場合には剃毛された状態に心が追いつかなかったりする場合もある。そうした心配がなく、脱毛が楽になる」と説明する。
毛を剃らないで脱毛することは、毛の生えている様子を直接見ながら、脱毛の調整ができるようになるという。これを利用して、脱毛だけでなく、蓄熱式の方法で毛を細くする「軟毛化」という手法を使っている。有川氏は、髪の毛の生え際やもみあげ、うなじなどで、毛を全部なくすと不自然に見える部分には、毛を完全に取り除く代わりに、毛を少し細くし、自然に見えるように調整していると話す。
なお、蓄熱式の脱毛器は、ショット式の脱毛もできるので、必要な場面でどちらの方法も使える。そして、細かい場所には特別な「フェイシャルチップ」を使って脱毛する。
このほか「蓄熱式の脱毛器が白髪にも対応できるか」という質問に対して、有川氏は白髪には対応できないと強調した。
脱毛にまつわる課題とその解決
続いて奥村氏は、顔の毛の脱毛について説明した。顔の毛がなぜ生えるのか、地域性、性別、目や鼻などを守る効果などの背景を説明した。最近の脱毛トレンドとして、男性はひげの脱毛ニーズが高く、女性では毛穴を目立たなくしたいニーズが高いという見方を述べた。
奥村氏は、スキンケアで毛穴の状態が改善する人もいるなど、脱毛以外の課題に注意をしてあげられるのが医療脱毛の特徴と説明した。顔が赤い人に酒さと診断して、その治療を優先することで、毛穴の状態が改善するような例を挙げた。肝斑を先に治療するといったこともそうだ。
また、家庭用脱毛機でのトラブルや、化粧を部分的に取ると、ラメが残っていてレーザーで過熱する危険性があるなどの注意点にも触れていた。
続いて谷氏は、医療脱毛を継続的に運営していく上で注意すべき課題について説明した。その中で説明したことの一つに、レーザープルームの問題がある。レーザーを照射すると、毛が焼けるときに煙が出るものだ。毛を実験的にレーザーで焼く研究によると、13種類の既知の発がん物質などが出るという。そうした問題もあり、脱毛をした個室は、できるだけ換気や空気清浄機をかけて時間を置いてから使うのが望ましいと説明した。
スタッフが煙を吸わないような注意も必要であるなど、医療脱毛ではスタッフの健康管理も欠かせないと強調した。
続いて林原氏は、ひげ脱毛についての考えを述べた。脱毛の人気が高まっている中で、ひげ脱毛を希望する人は増えているが、特に男性ではひげが濃いこともあり、脱毛では痛みを伴うこともある。そうしたときに、林原氏は、自分自身の体験も踏まえて、ひげがなくなることで生活がより幸せになることを説明しているという。
林原氏は時間の節約へのメリットについて紹介した。というのも、ひげそりを毎日30分ほど行っているとした場合、単純に計算すると、40年間で300日程度の時間に相当する。そうしたひげそりの時間の無駄を減らせるほか、シェーバーの購入費や肌を傷める問題などを考えたときに、医療脱毛は人を幸せにできるものだと説いた。
医療脱毛は美容医療の中でも特に人気の施術になっている。一方で、エステ脱毛を中心にトラブルも多く発生している。課題を解決しながら、より良い脱毛が広がることが期待される。
参考文献
日本で人気の美容施術トレンドが明らかに、2位は「女性脱毛」、1位は…
https://biyouhifuko.com/news/japan/1645/
ウルフクリニック「経営関与の会社」破産へ、美容医療の信頼性に懸念抱かせかねない問題
https://biyouhifuko.com/news/japan/2002/
男性医療脱毛ウルフクリニック突然閉鎖も根は共通か、診療所の倒産が過去30年で最多、東京商工リサーチ調査
https://biyouhifuko.com/news/japan/1536/
医療脱毛クリニック突然閉院、SNSで嘆きの声、相談窓口の設置も
https://biyouhifuko.com/news/japan/1123/
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