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全国展開の「東京プラス歯科矯正歯科」、医療法人が民事再生法申請、経営行き詰まりはなぜか?

カレンダー2023.10.4 フォルダー 国内

ポイント

  • 「東京プラス歯科矯正歯科」を全国展開した医療法人「有伸會」が経営に行き詰まった
  • 「マウスピース矯正」を武器に施設を増やしたが、課題が多く経営の立て直しが困難に
  • 共通した課題を抱える施設は多いと見られ、契約では注意する必要がある

 2023年9月29日、「東京プラス歯科矯正歯科」という歯科クリニックを全国展開する医療法人「有伸會」が、東京地裁に民事再生法の適応を申請。経営難により、スポンサーの支援を受けて再建を目指すことが分かった。

マウスピース矯正で全国展開したが苦境に

マウスピースを使って歯を動かす矯正法。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

マウスピースを使って歯を動かす矯正法。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 同医療法人の開設するウェブサイトによると、虫歯治療で削った部分にセラミック系素材を補う「ジルコニア治療」、および透明のマウスピースで歯を動かす「マウスピース矯正」など、自費診療で行われる歯科治療をメーンに行っていることが見て取れる。

 経営破たんを伝えた帝国データバンクの報告によると、同医療法人は「マウスピース矯正」が人気となり、全国への拡大路線を歩んできたという。2017年以降に施設数を増やし、全国29施設まで増やすに至ったという。

 一方で、帝国データバンクによれば、マウスピース矯正は他社から購入しており、原価率が高く、利益が少ないという課題があったという。それを改善しようと、別の矯正法に切り替えようとしたがうまく行かず、経営が暗転。それに追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症の影響で売上が伸び悩み。赤字が拡大する状況になった。結局、自力での再建を断念するに至った。

 なお、現在の同医療法人のウェブサイトで示される情報では、東京都を中心に、北海道、千葉県、神奈川県、石川県に合計で12医院に減っている。

抱える課題が共通する可能性

スポンサーの支援を受けて経営を立て直す。(出典/有伸會)

スポンサーの支援を受けて経営を立て直す。(出典/有伸會)

 同法人は、冒頭の通り、東京地裁に民事再生法の適用を申請することとなった。帝国データバンクによれば、負債総額は債権者150人に対して37億3000万円。今後は、債権者を含めて、この負債を減らすなどの話し合いを進め、さらにスポンサーの支援を受けながら、経営を立て直すことになる。

 ヒフコNEWSでも伝えているように、エステ脱毛や医療脱毛の経営が立ちゆかなくなるケースがたびたび起きている。今回の矯正歯科の分野でも同じような状況があるようだ。

 経営破たんを伝える東京商工リサーチによると、今回の矯正歯科の破たんの背景には次のような状況があったようだ。施設数の増加による競争激化と新型コロナウイルス感染症による経営への悪影響。これらはエステ脱毛や医療脱毛の運営会社が破たんしたときにも、背景の状況として指摘された。エステ脱毛などでは、広告宣伝費の増加、人材不足と採用を増やすための人件費の増加、サービスの低下などが指摘されていた。

 こうした課題は美容の領域では共通して存在する可能性があり、当面、同様な問題による経営の問題が浮上することは続くのかもしれない。今回の矯正歯科のような民事再生法申請の場合には、スポンサーの支援を受けて、診療は継続するが、そうではなく先日のエステ脱毛「C3」のように破産した場合には施術を受けることが難しくなる。契約をするときには、このような経営の問題についても理解しておく方が賢明と言えるかもしれない。

参考文献

東京プラス歯科 矯正歯科
https://www.tokyo-plusdental.com/clinic

医療法人社団友伸會(帝国データバンク倒産・動向速報記事)
https://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/5004.html

(医)社団友伸會(東京商工リサーチTSR速報)
https://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/detail/1198033_1521.html

大手脱毛サロン「C3(シースリー)」運営会社が破産、約4万6000人に影響、クレジット返金など利用者の対応要する状況も見込まれる
https://biyouhifuko.com/news/japan/3518/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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