紅麹が国内で大きな問題となっている。
小林製薬は2024年3月22日、紅麹含有健康食品「紅麹コレステヘルプ」に関連した腎疾患などの報告を受け、使用中止の要請と自主回収を発表した。報道では発表時点で10人近くが影響を受けているとされる。同社は他社にも関連製品を供給しており、影響はさらに広がる可能性がある。紅麹関連の製品はすぐに中止して、健康被害がある場合は相談する必要がある。
一方、2014年に欧州で紅麹を含む食品に関連した副作用が相次ぎ、注意喚起されていた。日本国内で使われていても、海外で禁止されている製品は紅麹に限らず存在し、それは美容医療と関連することもある。
2014年に欧州で副作用が相次ぐ
小林製薬が販売する紅麹含有の機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」に関連する腎疾患報告を受け、同社は製品や自社製造の紅麹原料を対象とした成分分析を行った結果、一部の紅麹原料に意図しない成分が含まれていた可能性が明らかになったという 。
小林製薬が販売する商品のうち、自主回収を発表している製品は次の通り。コレステロールを低下する効果を強調しているものだけではなく、内臓脂肪の低下や血流の改善、血圧の低下を強調しているものも含まれている。コレステロールを下げる効果をうたった製品に紅麹が含まれていることから対象になる。
- 紅麹コレステヘルプ
- ナイシヘルプ+コレステロール
- ナットウキナーゼ さらさら粒GOLD
さらに、同社ではグループ会社の小林製薬バリューサポートが他社向けに販売している紅麹原料も回収対象としている。報道では52社に供給していると伝えられている。
紅麹に関連する問題は、欧州で早い時期から指摘されていた。14年、紅麹で米を発酵させて作るサプリメントが、「血中のコレステロール値を正常に保つ」という効果をうたう一方で、健康被害を引き起こしていると注意喚起されていたのだ。
紅麹含む食品が販売された背景には、紅麹の中に含まれる「モナコリンK」という成分がコレステロールを下げる効果があると考えられていたからだ。副作用を引き起こした一因とされたのは、紅麹によって作られる可能性のあるカビ毒「シトリニン」の影響だ。
12年、欧州の小委員会では、一般的に食品などに含まれる可能性があるシトリニンは、健康に影響ないと考えられる量であっても、腎臓に有毒となるリスクを排除できないと結論付けていた。その後、13年、欧州の小委員会は紅麹に含まれるモナコリンKについて、コレステロールを下げる効果を認めている。
しかし、14年、紅麹関連の健康被害の報告が相次いだため、リスクを踏まえてシトリニンの基準値を設定した。
健康被害を受けて、スイスでは14年に紅麹を成分に含む食品の売買が違法であると注意喚起。フランスでは25件の健康被害があったと示した上で、副作用報告後に医師への相談を推奨した。
「欧州で禁止、日本では売られている」はほかにも
紅麹に関する問題が注目された一方、欧州で10年前から既に問題されていた。今回、紅麹のリスクが日本国内ではそもそも一般にはあまり認知されていなかったかもしれない。
紅麹に限らず、国によってリスクについての認識が異なるケースには注意は必要だろう。
例えば、美白成分として日本で広く使われているハイドロキノンは欧州では使用が禁止されている。米国では市販化粧品での使用が禁止されている。安全性に心配があるためだ。
最近では、ニュージーランドでは、「PFAS(パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質)」と呼ばれる化学物質を化粧品に使うことを26年末までに禁止することが発表された。これは化粧品を滑らかに保つなどのために使われているが、やはり安全性への心配や、環境への悪影響が問題視された。日本でもこの成分の規制は進んでいるものの、国による使用のルールが異なる一つのケースととらえられる。
美容医療においても、注目されているエクソソームは欧州などでは禁止されている状況がある。
日本では当たり前に使われているものが、潜在的なリスクを持ち、突然、健康被害として大きな問題になることはある。情報を集め、リスクに敏感になることは身を守るためには大切だ。