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ルッキズムの新たな視点? 米国で注目される美白化粧品の心配

カレンダー2023.7.17 フォルダー 海外

ポイント

  • 米国における美白化粧品の人気の高まりが調査された
  • 使用者の成分への認識不足や規制されている成分の使用に懸念
  • 医師の指導なしに美白化粧品を使う場合は注意が必要
気になる肌。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

気になる肌。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本では広く受け入れられている美白のトレンドが、米国を含む海外でも普及しつつあるようだ。しかし、美白化粧品の使用成分に関連するリスクなども明らかになりつつある。さらに、明るい肌の色を追求する風潮にも心配の声がある。

美白化粧品を取り巻く規制と懸念

美白にまつわる懸念とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美白にまつわる懸念とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本では、シミやそばかすに対処するために、さまざまな美白化粧品が販売されている。これらの製品には、ハイドロキノンなどの成分が配合されている。こうした美白化粧品の人気は世界的に広がり、数十億ドル(日本円で数千億円)規模の産業になっているとされる。

 しかし、海外では、美白化粧品に対する懸念も高まっているようだ。欧米では美白化粧品の成分に対する規制が厳しい。規制当局の資料によると、一般的な成分であるハイドロキノロンは、欧州では禁止されており、米国でも市販の化粧品に使えない。安全性の懸念があるためだ。さらに、明るい肌の色を美しさの基準として理想化することで、「カラリズム」と呼ばれる差別を生み出しているとも指摘されている。

 今回、米国ノースウエスタン大学の研究グループは、米国における有色人種の美白願望の実態を調査した。対象としたのは、有色人種の455人で、内訳は238人がアフリカ系、83人がアジア系、31人がヒスパニック、14人がネイティブアメリカンなど。美白化粧品の使用実態や成分、カラリズムの影響などが分析された。

「成分を知らない人が多いのは問題」と指摘

肌の白さと美しさ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肌の白さと美しさ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 こうして判明したのは、およそ5人に1人が美白化粧品を使っていること。しかし、成分を知らず、医療機関に相談していない人も少なくなかった。

 具体的には、調査対象者のうち97人(21.3%)が美白化粧品を使用し、使用者の75.3%が、ニキビ、そばかす、色素沈着など特定の肌悩みを解決する使い、その他の人は全体的な美白目的で使っていた。

 重要なことは、97人の使用者のうち半数近く(44人)が、使用している製品の有効成分を特定できなかったこと。一方、最も多く報告された成分はハイドロキノン(34人)で、アスコルビン酸(21人)、グリコール酸(18人)、サリチル酸(16人)、ナイアシンアミド(15人)が続いた。これらの製品の最も一般的な使用部位は、顔(86人)と首(37人)。研究グループが問題視したのは、使用者の77.3%(75人)が、製品を使用する前に医療機関に相談していなかったことだった。オンライン(97人)が、美白化粧品を入手するための主要なルートとして浮上した。

 美白化粧品の使用者はカラリズムの影響を強く受け、「肌が明るい方が美しい」「自尊心が高まる」「恋愛関係や結婚の可能性が高まる」という考えに同意していた。肌の色への満足度は、美白化粧品を使わない人よりも低かった。

 研究グループは、美白習慣の広がりを確認したが、成分に関する知識の欠如や医療機関を受診していないことが健康上のリスクにつながると指摘。また、あらゆる肌の色を受け入れることの重要性を強調した。

 日本では、外見を過度に重視する考え方「ルッキズム」の問題が議論されているが、海外での「美白」が問題視されるようになっており、今後さらに注目されるのかもしれない。

参考文献

Daftary, Karishma MDa; Poondru, Sneha BAa; Patel, Nina MSb; Shramuk, Maxwell MSc; Muhammad, Lutfiyya PhDc; Kundu, Roopal V. MDa,*. Colorism attitudes and use of skin lightening agents in the United States. International Journal of Women’s Dermatology 9(3):p e092, October 2023. | DOI: 10.1097/JW9.0000000000000092
https://journals.lww.com/ijwd/Fulltext/2023/10000/Colorism_attitudes_and_use_of_skin_lightening.3.aspx

Skin lightening products can be dangerous, but users don’t know risks
https://www.newswise.com/articles/skin-lightening-products-risky-users-unaware

COMMISSION REGULATION (EU) 2021/1099 of 5 July 2021
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?rid=2&uri=CELEX%3A32021R1099

Skin Product Safety
https://www.fda.gov/consumers/skin-facts-what-you-need-know-about-skin-lightening-products/skin-product-safety

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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