顔の輪郭や形を変える手術である「顔面骨切り」の最新の情報について、骨切りの実績豊富な美容外科医3人が解説した。
画像を利用し、手術の際の注意点を明確にすることで、より安全で満足度の高い手術が可能となっている。
5月31日、第112回日本美容外科学会(JSAS)で、「次世代の顔面骨切り術─その魅力と落とし穴─」と題した講演が開かれた。座長はリッツ美容外科(東京都渋谷区)院長の廣比利次氏が務めた。
画像シミュレーションで満足を高める。
- 山本崇弘氏の注目する点→「ファストリカバリー(早い回復)」「アキュラシー(正確性)」「セイフティー(安全性)」「ハーモニー(調和)」、略して「FASH」が重要視されている
- 播摩光宣氏の講演内容→ 手術のプランニングについて説明
- 安全な手術→ 手術で起こり得る落とし穴を理解することが重要
- 客観的な画像シミュレーション→ 術後のイメージを確認してもらい、目指すイメージを明確にするプロセスが必要
コントアクリニック東京(東京都中央区)院長の山本崇弘氏は、顔面骨切りのより良い結果を目指すために配慮すべき点について考えを述べた。
配慮すべき点として「ファストリカバリー(fast recovery、F、早い回復)」「アキュラシー(accuracy、A、正確性)」「セイフティー(safety、S、安全性)」「ハーモニー(harmony、H、調和)」、略して「FASH」が重要視されていると述べた。
早い回復に関連して、山本氏は、外科医や矯正歯科医、口腔外科医、看護師、麻酔科医、歯科衛生士が協力して施術に当たっている体制を説明した。手術時間や出血を減らすほか、術前後の歯科矯正を積極的に行っていることなどを解説した。
正確性については、施術を受ける人と手術の後のイメージを共有し、より良い手術ができるように取り組んでいることを説明した。
安全性は、薬やサプリメントの服用の状態を確認するほか、禁煙や禁酒を勧めることを重要視していると述べた。
調和については、顔面骨切りをする骨格が小さくなるため表面の皮膚のたるみなど変化が出やすいため、鼻の治療やフェイスリフトなどの追加の施術も行っていることを解説した。術前のうちに、こうした鼻の治療など術後の追加施術の可能性は説明しているという。
山本氏は、自ら実践する「FASH」について改善を進めることが重要と強調した。
加藤クリニック麻布ANNEX院(東京都渋谷区)院長の播摩光宣氏は、顔の手術のプランニングについて講演した。
手術で起こり得る落とし穴を理解することで安全な手術が可能になると説明した。
施術を希望する人を目の前にしたときに、適切な術式を選択することが大切だと述べた。最小限の変化で、満足度を引き出そうと工夫しているという。
そのため客観的な画像シミュレーションが必須だと強調した。播摩氏は実際のケースを紹介。施術の希望者に術後どうなるかを確認してもらって、目指すイメージをはっきりさせる必要性を解説した。こうしたプロセスを踏むことで満足度を高められるという考えだ。
また、手術台などで人が横になると顔の印象が変わることには気を付ける必要があると指摘した。工夫の一つとして、播摩氏は横顔をかたどったテンプレートを作り、手術のときに輪郭を正しく把握できるようにしていると紹介した。
「匠から理論の時代」と播摩氏は指摘した。
男性顔を女性顔に変える手術
- 大島直也氏の講演内容→ 性同一性障害の顔面女性化手術について説明
- ホルモン療法の限界→ 女性ホルモンは骨格を変えないため、顔の輪郭や形を変える手術が必要
- 男顔と女顔の特徴→ 男顔は凹凸があり、喉仏があるなどの特徴。女顔は丸みを帯びた小顔
杏林大学形成外科助教の大島直也氏は、性同一性障害の顔面女性化手術について講演した。性同一性障害において、人は見た目で直ちに性別を判断することから、男顔を女顔に変える手術は重要になる。女性ホルモンが使われているが、これでは骨格まで変化しない。そのため顔面女性化手術により顔の輪郭や形を変える施術が行われている。
大島氏は男顔と女顔の特徴を踏まえ、女顔に変える取り組みをしている。男顔は凹凸がある輪郭であるほか、喉仏があるなどの特徴がある。そこで顔面女性化手術では凹凸をなくして丸みを帯びさせ、小顔にする手術を行っている。大島氏は実際の手術の映像を交え手術のプロセスを紹介した。
手術によって男性の特徴となる輪郭の凹凸をなくすなど、外見の変化をもたらすことで、男顔から女顔に近づけられることを示した。
骨切りの手術は画像シミュレーションや手術のポイントを明確にすることで、より良い結果をもたらすようになっている。今後も課題を解決していくことで、美容外科の手術はより良く進化することが予想される。