美容医療で存在感を増している非外科的治療の最新の情報について、自由が丘クリニック(東京都目黒区)院長の古山登隆氏、みやた形成外科・皮ふクリニック(東京都港区)院長の宮田成章氏、東海大学形成外科教授の河野太郎氏の3人の専門家が美容医療技術の最新の考え方について講演した。
2024年6月2日、第24回日本校加齢医学会では、「非外科的治療による見た目の若返り」というテーマでシンポジウムが開催された。
BONSAI意識してジャパンビューティー実現
- 古山氏の指摘→ゴール設定とプランニングの重要性
- 目指すべき美しさの観点→BONSAI(盆栽)の考え方を学び、「ジャパンビューティー」を実現
- 盆栽と美容医療の類似性→自然美に手を加え、美しさを引き出す
- 日本人らしい個性を生かす美容医療→同じ顔にしないアプローチが注目される
- 3LCBSTの重要性→フェイシャルライン、S字曲線、側傍、中心の三角形、バランス、スキントーン
- ハイフの進化→MFU-Vの登場、点状・リニア照射の進化
- ハイフの効果→若返りではなくたるみ治療との指摘
- ハイフの対象年齢→35歳以降との見方示す
自由が丘クリニック院長の古山氏は、ゴール設定とプランニングが重要だと指摘。目指すべき美しさの観点から、「BONSAI(盆栽)」の考え方に学びながら、「ジャパンビューティー」を実現する考え方を解説した。
古山氏は、加齢性変化の3大原因を「萎縮」「下垂」「筋過緊張」と説明した。筋肉や骨が縮み、これに伴って皮膚がたるんだり、筋肉が緊張する。これらの変形により顔は逆三角形から三角形へと大きく変化する。
形成外科と美容外科の基本を土台とし、加齢によってマイナスになったものをゼロに戻し、美しさを意識しながら総合的にプランニングしていくのが大切となる。萎縮にはフィラーを使ったり、下垂を糸リフト、筋過緊張にボツリヌス療法を行う。年を追うごとに新しい製品や使い方が開発され、施術が洗練されてきた経緯を振り返った。
先に示したように、古山氏は「ジャパンビューティー」を意識した美容外科に取り組んでいる。盆栽と美容医療の類似性に着目し、「BONSAI」というコンセプトを打ち出す。それぞれ自然美に手を加えてより美しくするという点で共通点があると指摘。みんなを同じ顔にするのではなく、日本人らしい個性を生かした美容医療を実現する考え方を重要視する。
その視点として挙げたのは、解剖を知ること、プランを立てること、美しさを最大限に引き出すこと、加齢を目立たなくして美しさを際立たせること、どこから見ても綺麗に映えること、雰囲気やオーラが良いこと。それぞれ美しい盆栽を作る上でのポイントと似た部分があり、美容医療でも気を付けるべき点であると説明した。
古山氏はかねて「3LCBST」に注意すべきだと述べてきた。それらは「フェイシャルライン(facial line)」「S字曲線(Ogee Line)」「側傍(Aesthetic line)」。「中心の三角形(Center Triangle)」「バランス(Balance)」「スキントーン(Skin tone)」であらためてそれぞらの観点について実例を示し解説した。
BONSAIのアイデアは海外でも受け入れられつつあるようだ。今後注目されるかもしれない。
みやた形成外科・皮ふクリニック院長の宮田氏は、HIFU(高密度焦点式超音波治療、集束超音波治療、ハイフ)について基本的なメカニズムを解説した上で、歴史を振り返った。
その中で、ハイフの照射の範囲に変化が出ていることに言及していた。例えば、主要な機器であるウルセラシステムを開発している米国Merzは、HIFUではなくMFU-V(microfocused ultrasound with visualization)と表現していることを紹介した。この名称の通り、照射の範囲が小さくなっており、画像を見ながら照射できるものであると説明し、実態に近い名称であると述べた。このほか、超音波の照射についても、点状で照射するものだけでなく、リニアに照射できる機器が登場していることなどを紹介していた。
シンポジウムのタイトルが「見た目の若返り」となっているが、宮田氏はハイフは若返りではなくたるみ治療である点を強調した。「これらは似ているようで異なり、ハイフは組織を破壊するもので、若返りではない」(宮田氏)。ハイフは熱をかけることで瘢痕を作って引き締める施術となる。そのことから、宮田氏は20代は対象にはならないと述べ、対象は35歳以降という見方を示した。
ハイフがエステで使われるべきではないとも指摘。海外では医師のみが行える施術で、医師以外が行うと法に触れる国もあるとした。宮田氏の講演後、質疑応答の時間ではハイフの合併症や後遺症の実態についても紹介され、対策の必要性についても意見が交わされた。
レーザー治療、メカニズムが徐々に明らかに
- 美容医療へのレーザーの応用→仕組みが明らかになってきている
- レーザーの効果→熱的作用、機械的作用など
- 脱毛治療→熱的効果を利用して毛を作る細胞を破壊
- ピコ秒レーザー→2010年代以降に利用され、短時間で強いエネルギーを与える
- ピコ秒レーザーの特徴→選択性が高い。刺青色素を効率的に除去
東海大学形成外科教授の河野太郎氏は、レーザー治療について解説した。
重要なのは、美容医療へのレーザーの応用において、その仕組みが明らかになってきていることだ。
レーザーの光は、皮膚の内部の何に吸収されるかが分かっている。主なターゲットは、メラニンとヘモグロビンと水。それぞれ吸収する光に違いがある。細胞などにレーザーを当てると熱が発生(熱的作用)、しかも組織の内部で急激に圧力が高まる(機械的作用)。レーザーの光の波の長さ(波長)などの条件でこれらの効果を使い分ける。例えば、脱毛治療では熱的効果を利用して、毛にレーザーを当てることで発生する熱を使って周囲の毛を作る細胞を破壊している。
2000年代にナノ秒Qスイッチレーザーが普及し、2010年代以降、ピコ秒レーザーが利用されるようになった。ピコ秒レーザーは比較的新しいレーザーとなる。ピコ秒レーザーの特徴は短時間で強いエネルギーを与え、主に機械的作用により細胞などを破壊する。周囲への熱や衝撃波の影響を最小限にとどめながら破壊できること。つまり、選択性が高い。ピコ秒レーザーはその特徴を生かして刺青色素を効率的に除去するために活用されている。
レーザー光のメカニズムについて徐々に明らかになっており、今後レーザーの特徴を生かした新しい治療が登場する可能性もありそうだ。