厚生労働省は2024年6月27日、「第1回美容医療の適切な実施に関する検討会」を開催した。
美容医療に関連したトラブルが増加する中で、課題を洗い出し、法的な規制を含めた対策を練ることになる。第1回は検討会のスコープと検討の進め方を確認するのが目的となった。年内にも方向性がまとめられる見通しだ。
皮膚障害やヤケドなどが多発
既にヒフコNEWSで伝えているように、美容医療関連のトラブル増加により、国による検討会が初めて開催されることになった。健康被害に加え、経済的被害も問題になっている。多くが自由診療であるため法律に基づくチェック体制不備も指摘されている。
先日HIFU(高密度焦点式超音波治療、集束超音波治療、ハイフ)は医師免許がないと施術できないと厚労省から通知されたが、美容医療の施術が法的に規制されていない場合が多い。実施できる場所のルールも不在で問題になっている。このほかにも美容医療をめぐる課題は多い。
検討会では、最初に厚労省医政局から美容医療に関する現状の説明が行われた。厚生労働省による19年~22年の4年間に行われた実態調査から継続的に回答を寄せていた52の医療機関およびチェーンのデータより詳細な分析結果が公開された。
その分析によると、コロナ禍でいったん美容施術は20年には年間47万3000件に落ち込んだが、22年には373万2000件まで急増したことが見て取れる。非外科治療が増加したのが特徴だ。
手術を伴う外科的手技による施術では、まぶたの施術が圧倒的に多かった。
非外科的手技による施術では、脱毛に続いて、ボツリヌス療法、セルライト治療がトップスリーを占めた。
それに伴い、国民生活センターや都道府県の消費生活センターに寄せられる質問も年々増加し、23年度は美容医療関連は5507件に上った。このうち危害に該当する質問は796件となっていた。
危害の内訳として皮膚障害、熱傷が目立つことが見て取れる。
「勧誘・説明・契約」と「診療の実施」が焦点に
厚労省として認識している現状と課題は次のように示された。
- 美容医療については、近年、施術の幅が広がると共に心理的ハードルも低くなり、比較的侵襲性の低い施術を中心に、広く国民の需要が高まってきていると考えられる。これに伴って美容医療を提供する医師・医療機関も増加している一方で、美容医療の利用件数の増加に伴い、利用者による相談件数や、危害事例も増加している。
- 他方、美容医療については、保険適用されない自由診療として提供されることから、指導・監査等の範囲が保険診療と比較して限定的である。
- また、標準化されていない多様な診療行為に対して医事関係法令の適用関係が明確でないことや、違法行為を確認する手段が少なくその効果的な指導が行いにくいという指摘があったり、消費者トラブルに発展した場合に医療機関が消費者保護法制を正しく理解できていないことから、不適切な広告表示や消費者被害が発生してしまう事例が見受けられる。
検討会の目的は「美容医療に関する被害を防止し、質の高い医療の提供を行うために、どのようなことが考えられるか、検討を実施する」と示された。厚労省医政局医事課によると、検討会では課題を明確にするほか、法的な対応なども含め、議論により方向性を決めていくことになるという。
ここまで紹介した事柄のほか、厚労省からは、美容医療の契約金額の増加、美容医療の医師急増、自由診療ではルール、確認・指導監査の仕組みが存在しないことなどの情報が共有された。
さらに検討会では、日本美容医療協会理事長の青木律氏(グリーンウッドスキンクリニック立川院長)から、同協会の公開オンライン相談室に寄せられた相談事例が紹介された。
同協会は、本来医師の診察を受け自分に合った治療法の相談を受け、他の治療法やリスク・ダウンタイム、または費用について合意を得た後に治療を受けるべきだが、そうなっていない実態があることを指摘した。また、「トラブルが起きている治療法やクリニックに偏りがある」と述べた。
その上で、厚労省からは、検討会のスコープが提案された。
今後、美容医療は美容目的の外科的手技、非外科的手技、内服薬など、内科的療法と整理される。
検討会では、主に美容医療の「勧誘・説明・契約」と「診療の実施」について美容医療に特に関連した問題について検討していくことが提案された。これらの問題に焦点が当てられることになる。
今後は、具体的なそれぞれのポイントについて「法令やガイドラインへの違反事例または違反が疑われる事例」と、それ以外の「医療水準に課題のある事例」「利用者に不利益を及ぼす事例」「その他」と分けて、課題が整理していくという検討の進め方が提起された。
検討会のメンバーは次の通り。グリーンウッドスキンクリニック立川院長の青木律氏、国立がん研究センター生命倫理部部長の一家綱邦氏、日本看護協会常任理事の井本寛子氏、美容・医療ジャーナリストの海野由利子氏、国立大学法人政策研究大学院大学政策研究科教授の小野太一氏、 日本美容外科学会(JSAS)理事長の鎌倉達郎氏、共立美容外科理事長の久次米秋人氏、高芝法律事務所弁護士の高芝利仁氏、日本美容外科学会(JSAPS) 理事長の武田啓氏、日本医師会常任理事の宮川政昭氏、 新宿区保健所主査の宮沢裕昭氏、オブザーバーとして消費者庁が参加する。
次回以降、検討会では、経済的な被害や健康被害の実態が共有され、課題が整理されていく。年内にも方向性がまとめられる見通しで、美容医療をより安全で安心なものに改善していくための道筋が示されることになる。