2024年8月31日~9月1日にかけて名古屋市で開催された第42回日本美容皮膚科学会では、近畿大学アンチエイジングセンターファウンダーの山田秀和氏が、「診療指針の解説 シミ(日光黒子、肝斑、ADM)に対するレーザー治療」と題して、22年度版の美容医療診療指針に基づきシミのレーザーと光治療について講演した。
講演では、複数の種類があるシミに対するレーザー治療の効果や、治療技術の進歩、課題について説明された。
シミといっても異なる種類があり、治療も変わる
シミの治療では、レーザーや光治療(IPL)が活用されている。これらの治療は、皮膚の中のメラニン色素をターゲットにし、レーザー光を当てることで色素を分解し、シミを薄くする効果を実現している。
講演のタイトルでは「シミ(日光黒子、肝斑、ADM)」とひとくくりにしたことについて山田氏は、「シミといっても実際は日光黒子、肝斑、ADMなどと分かれるが、一般的にはどれもシミと表現されている、分かりやすさのためにシミと言っているが、対応は分かれてくる」と前置きした。
例えば、シミの一つである、日光黒子、別名老人性色素斑は、紫外線によるダメージでできるシミで、年を重ねると多く見られる。レーザーやIPL治療はこのタイプのシミに効果的で、数回の治療でシミが薄くなるのを実感できる。ただし、シミの状態によっては、レーザーの強さや回数を調整する必要があり、治療後の紫外線対策も重要である。
シミの種類によって治療法や注意点が異なるため、自分に合った適切な治療を選ぶことが重要になる。山田氏は、ガイドラインに沿ってそれぞれのシミへの対応について続けて解説した。
新しいガイドラインと治療法の選び方
山田氏は、22年度版の美容医療診療指針で採用されている「クリニカルクエスチョン(CQ)」に基づいて説明した。これは、治療の効果や安全性を治療を受ける人たちの視点から考えるものとなる。
以下のような質問(CQ)に基づいて、それぞれのシミに対する治療法が検討されている。
CQ1-1-1: シミ・日光黒子(老人性色素斑)にレーザーや光治療(IPL)は有効か?
診療指針によると、多くの研究から、日光黒子や老人性色素斑に対するレーザーや光治療が効果的であることがわかっている。紫外線が原因のシミには、QスイッチレーザーやIPLがよく使われる。治療は数回にわたり、経過を見ながら進める。正しい診断と治療計画がとても大切である。
CQ1-1-2: 肝斑にレーザーや光治療は有効か?
肝斑は、30代から50代の女性によく見られるシミで、ホルモンバランスの変化や紫外線が原因とされている。
診療指針によれば、肝斑のレーザー治療は効果があるが、慎重さが必要である。強いレーザーを当てるとシミが悪化する可能性があるためだ。このため低出力のレーザーやIPLが推奨されている。治療を始める前には、しっかりと診察し、治療中も経過をしっかり観察して、治療後の肌ケアやフォローアップも重要である。
CQ1-2: 後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)にレーザー治療は有効か?
ADMは、アジア人に多いシミで、肌の深いところにあるメラニン細胞が原因である。Qスイッチルビーレーザーなどが効果的で、深い部分の色素をターゲットにする。治療は複数回必要で、再発することもあるため、長期的なケアが必要である。
山田氏は、レーザー治療の技術がどんどん進歩しているため、ガイドラインも最新の情報に合わせて更新していく必要があると話した。特に、日光黒子や肝斑、ADMなどのシミに対する治療法は、日本でも、医療承認を受けたピコセカンドレーザーが使用されており、さらにエクソソームや外用剤や内服についても、進歩を素早く反映したガイドライン、できればAIを用いた新たな手法が求められるという。
山田氏によると、レーザー治療を行う医師やスタッフの教育も重要になる。シミの種類を正確に見分けることは難しく、治療の成功に大きく影響する。欧米では、医療者が最新の知識や技術を学ぶための継続的な教育プログラム(CME)が充実し、日本でも同様の取り組みが必要だと指摘した。
シミに悩んでいる方は、信頼できる医療機関で自分に合った最適な治療法を選んでもらうことが重要になる。最新のガイドラインや技術を取り入れた治療を受けることで、より安全で効果的なシミ治療が可能になる。