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東京都がエステ脱毛のローンや契約問題に対処、女性22人の申立を受け、専門家委員会で協議開始、10~20代のエステ脱毛の相談急増の解決目指す

カレンダー2024.10.23 フォルダー 国内
東京都庁。(写真/Adobe Stock)

東京都庁。(写真/Adobe Stock)

 東京都は、数十万円のローンを組んで全身脱毛エステ契約を結んだ10~20代の女性が返済に苦しむケースに対応するため、解決策の検討に着手した。今後、同様なトラブルへの対処につなげていきたい考えだ。

 東京都が2024年10月22日に検討を開始したことを発表した。

エステ脱毛「一生無制限」でローンに苦しむ

「一生通い放題」などの言葉に勧誘され高額の契約を結びローン支払いに苦しむ例が多い。(出典/東京都)

「一生通い放題」などの言葉に勧誘され高額の契約を結びローン支払いに苦しむ例が多い。(出典/東京都)

 ヒフコNEWSが伝えるように、エステ脱毛業界では運営会社の破綻により、顧客が路頭に迷うケースが多数発生し、大きな社会問題となっていた。22年度には脱毛サロンの倒産が7社と、2000年以降で最多となった。エステ脱毛や医療脱毛市場は顧客が増加している一方で、競争が激化し、広告費や人件費の増加、さらには新型コロナウイルスの影響による顧客減少で、利益を圧迫する状況に陥っていた。23年も倒産が相次いでおり、6月には男性専門のウルフクリニック、9月には「C3(シースリー)」を展開するビューティースリー、12月には「銀座カラー」を運営するエム・シーネットワークスジャパンが破産に至った。

 エステ脱毛業界では、無料体験で顧客を引き寄せ、高額な契約に勧誘し、ローンでの支払いを促す手法が一般的。多くのエステチェーンは、前払いされた代金を広告費などに充て、新規顧客を集め、さらに前払い金を得て広告を展開するという、資金繰りが悪化しやすい構造がある。そのため、コロナのような外的要因が発生すると、事業継続が難しくなることがある。それによって経済的な被害を受ける人も出てくる。

 今回、22人の女性が東京都に申し立てを行い、これを受けて知事は専門家からなる「東京都消費者被害救済委員会(会長は、東京大学大学院法学政治学研究科教授の沖野眞已氏)」に解決策の検討を依頼した。

 申し立てを行った22人が訴えるトラブルの経緯は次の通りである。

  • 申立人→ 10代~20代の女性22名
  • 契約内容→ 平均契約金額は約58万円の全身脱毛エステ契約
  • 勧誘経緯→ 友人の紹介でエステの無料体験に参加後、全身脱毛エステのコースを勧められた
  • 割引内容→ 学割で45万円に割引され、ボディとフェイシャルのセルフエステがセットと説明された
  • 契約時の説明→ 担当者から「契約書には書いていないが、一生無制限で通える」と説明され、契約を決断
  • 支払い方法→ 36回払いの個別クレジット契約を結び、支払総額は約58万円
  • 確認の電話→ クレジット会社から契約内容確認の電話があり、「エステ契約で間違いない」と返答
  • 施術提供の停止→ 全身脱毛やボディ・フェイシャルエステを10回受けた後、事業者から「施術が提供できなくなった」と連絡
  • 連絡不通→ その後、エステ店と連絡が取れなくなり、消費者センターに相談
  • クレジット会社の対応→ クレジット会社に請求停止を求めたが、請求は止められないと回答された
  • 契約解除の要求→ 「一生通える」という説明と異なるため、契約の解除を求めている

 今回の検討により、東京都は解決策を示し、同様の消費者被害の防止と救済を図ることを目指す。

 東京都が高額脱毛ローンを巡る消費者問題に対応するため、消費者被害救済委員会に紛争の解決を付託した背景には、都内の消費生活センターに寄せられる脱毛エステに関する相談の急増がある。

※付託とは、議題を委員会の審査に委ねること。

 特に若者を中心としたトラブルが増えており、成年年齢引き下げ後の18歳、19歳からの相談件数が顕著に増加している。脱毛エステに関する相談のうち、29歳以下の若者による相談が全体の7割を占める。22年4月に成年年齢が引き下げられて以降、特に18歳や19歳の相談が増加しており、大きな問題となっている。

 脱毛エステの勧誘では、個別クレジット契約による分割払いがよく用いられ、顧客の支払い能力を超える高額な契約が結ばれることがある。これ自体も問題ではあるが、今回の22名の女性においては、エステ店舗が施術を提供できなくなったにもかかわらず、ローンの支払いが残るという、さらに深刻な問題が生じた。

契約をクーリング・オフできる可能性を検討

エステサロンの倒産が急増している。(出典/東京商工リサーチ)

エステサロンの倒産が急増している。(出典/東京商工リサーチ)

 東京都が現時点で示している論点は3つある。一つは、今回の検討では、ローン自体の契約に問題があることから、クーリング・オフが有効となり、契約を解除できる可能性があると考えられる。二つ目は、クレジット会社が支払い可能額をより慎重に確認するなどの対応を求めるべきか検討する。三つ目は、勧誘においても、説明と契約内容の違いに関する問題を検討する。

  • 特定商取引法の適用→ エステ脱毛を提供する期間が1カ月を超え、5万円以上の全身脱毛契約であり、「特定継続的役務提供」に該当。契約書にサービス期間などの不備があり、クーリング・オフ期間が始まっていない可能性がある。これはクーリング・オフが適用できる可能性がある。
  • 割賦販売法の確認→ 割賦販売法では、クレジット会社に対し、支払い可能額の確認や過剰与信の禁止、加盟店調査が義務付けられている。契約でクレジット会社の対応に問題がなかったかを確認する必要がある。
  • 勧誘の問題→ 申立人は「一生無制限」「通い放題」と勧誘されたが、契約書にはサービス期間が定められており、説明との違いや勧誘方法に問題がある可能性がある。

 このようなトラブルの解決には、国民生活センターが提供するADR(裁判外紛争解決手続)もある。今回の東京都での検討は、都独自のものとなる。ADRは消費者が直接、国民生活センターに申し立てるのに対し、東京都消費者被害救済委員会では、まず消費生活センターに相談し、それが知事を介して付託と呼ばれる検討が依頼される形になる。

 今後、エステ脱毛のトラブルをどのように解決していくべきかの東京都としての回答が出される方向で、その内容は注目される。

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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