美容医療とスキンケアの分野で注目が集まるメディカルコスメとドクターズコスメの市場が、今後数年で大幅に成長する見込みだ。
富士経済による最新の市場調査によれば、2028年までにメディカルコスメ市場は310億円、ドクターズコスメ市場は1025億円に達するとの予測が立てられている。美容クリニックの利用者数が増える中で、「アンチエイジング」「角質・毛穴ケア」などの機能、低刺激性などへの関心が高まっている。
美容クリニック人気でメディカルコスメ拡大
- 長期予測(2028年)→ メディカルコスメは310億円(23年比54.2%増)、ドクターズコスメは1025億円(同44.6%増)。
- メディカルコスメの普及要因→ コロナ禍のマスク生活により肌トラブルが増加し、美容医療の利用者も増加したため。
- マスク生活解除後の動向→ 肌ケアへの関心が高まり、メディカルコスメやドクターズコスメへの需要が拡大。
- 2022年のメディカルコスメ人気傾向→ 高濃度の美容成分が人気だったが、2023年には肌トラブル報告が増え、販売方法の見直しが進んだ。
- ドクターズコスメの進化→ 敏感肌向けの安全性・低刺激性が支持されていたが、近年は機能性重視の商品が増加。
美容皮膚科などで扱われている化粧品は、一般的にドクターズコスメとして認識されるが、はっきりした定義があるわけではないとされる。今回の富士経済の調査では、「メディカルコスメ」と「ドクターズコスメ」を明確に定義づけている。
富士経済によれば、メディカルコスメとドクターズコスメはそれぞれの役割や特徴に明確な違いがある。メディカルコスメは医療機関において主に販売されている化粧品で、治療や施術に使われる製剤を除いたもの。一方で、ドクターズコスメは、医師や皮膚科などの医療機関が監修したもので、一般向けに薬局や百貨店、通販でも販売されるものと定義している。今回の調査で「メディカルコスメ」とされるものが「ドクターズコスメ」と呼ばれることも多いと見られ、その点は理解する必要がある。
富士経済はメディカルコスメの市場が22年以降毎年10%ほどのペースで拡大し、24年は前年比10.4%増の222億円になると推測している。ドクターズコスメも毎年市場が広がり、24年は前年比約2割増の約800億円になると予測している。メディカルコスメは28年に23年比で54.2%増の310億円、ドクターズコスメは44.6%増の1025億円と推測している。
メディカルコスメは、新型コロナウイルスによるマスク生活などで、皮脂や毛穴といった肌トラブル、シワ、顔のたるみといった問題に悩む人が増えた一方で、マスクや外出自粛で施術後のダウンタイムを気にせずに生活できることで、美容医療を利用する人が増えて急速に普及したようだ。
23年以降、マスクを外すようになってからは、肌ケアへの関心が高まり、その効果からメディカルコスメやドクターズコスメへのニーズがさらに高まっていると、富士経済は分析している。
メディカルコスメは22年に攻めの美容として高濃度の美容成分が人気だった一方で、23年にレチノールなどの高濃度配合の製品での肌トラブルが報告されるようになり、販売方法が見直されて、市場の伸びは落ち着いたという。
ドクターズコスメについては、安全性や低刺激の特徴が敏感肌を意識する人たちに受け入れられてきたが、最近は美容効果を求める人が増えるに伴って、機能性を打ち出した商品が増えていると、富士経済は指摘している。
「アンチエイジング」と「角質・毛穴ケア」に注目
- メディカルコスメの特徴→ シミ、シワ、たるみ改善を目指したアンチエイジング効果の高い商品が多い。
- ドクターズコスメの特徴→ 角質・毛穴ケアを中心に、敏感肌向けの美白・アンチエイジング製品も人気。
- 注目のキーワード→ 「アンチエイジング」と「角質・毛穴ケア」が富士経済の調査で挙げられている。
- メディカルコスメの成分傾向→ 高濃度レチノール配合商品が人気だが、副作用を考慮し植物成分やペプチド配合の製品も増加。
- ドクターズコスメの差別化→ ビタミンC配合でレチノールと組み合わせるのが難しい処方を工夫した商品が広がり、低刺激から高機能まで多様なラインナップ。
メディカルコスメは、シミ、シワ、たるみの改善を目指すアンチエイジングの効果を打ち出した商品が多くを占めているのに対して、ドクターズコスメは角質・毛穴ケアを打ち出した商品などが人気になっている。さらに、敏感肌でも使える美白やアンチエイジングのための製品も登場し、低刺激なアイテムとして、敏感肌以外の人にも受け入れられるようになっているという。
富士経済では注目のキーワードとして、「アンチエイジング」と「角質・毛穴ケア」を挙げている。メディカルコスメでは、アンチエイジング効果を期待できる高濃度レチノール配合製品が20年以降にブームになった。前述の通り赤みや皮むけといった副作用があるものの、マスク生活で肌を見せなくて済むために受け入れられていた。一方で、マスクを外すようになり、最近では、レチノール非配合で植物成分やペプチド配合のエイジングケアを打ち出した商品が登場し、今後伸びると予想している。
また、調査によると、ドクターズコスメは、レチノールと同時配合が難しいビタミンCと組み合わせた処方で差別化された製品が広がっている。高い効果を訴求したものから、低刺激商品までラインナップが幅広く、今後も伸びていくとみられている。
角質・毛穴ケアについては、メディカルコスメでは美容クリニックでのピーリングが定着する中で、ホームケア用品として広がりを見せている。皮脂コントロールや毛穴詰まり、黒ずみの根本的なケアが医師から支持を集めている。日本人の肌に合わせた商品が広がっていくという。ドクターズコスメでは、従来ピールオフ用のパックなど物理的に角質を剥がすものが定番だったものの、肌への刺激が気にされる中で、日本ロレアルの「タカミスキンピール」が剥がさない角質ケアを打ち出した美容液が話題になり人気となった。他社も参入して、入門ユーザーにも受け入れられている。今後も敏感肌向けのアイテムが人気になりそうだという。
メディカルコスメ、ドクターズコスメは、各社が新たに力を入れたり、新規に参入するメーカーがあったりして、今後、商品の拡大が予想される。美容医療の面では、クリニックでどのような商品がどのような目的で扱われていくか、引き続き注目される。