フィラー注入やフェイスリフトなどの美容医療において、施術を受けたと感じさせない自然な結果が注目されている。2024年11月10日、東京都内で開催された「AMWC JAPAN 2024」にて、オランダ・アムステルダムの美容外科医アリ・ピライェシュ氏が講演し、統合的な美容医療アプローチや解剖学に基づく安全な治療について解説した。
自然な結果を生むための「SILC」アプローチ
- 自然な結果の重要性→美容医療では、年齢を重ねても健康的で若々しい外見を目指すことが重要と述べ、老化を放置せず自然な結果を追求することを強調
- SILCアプローチ→美容医療の総合的な方法として、Surgery(外科手術)、Injection(注入療法)、Laser(レーザー治療)、Cell(細胞治療)の4要素を提唱
- ディーププレーンフェイスリフト→フェイスラインや首のリフトアップに優れた効果があり、深層にアプローチする外科的手法として高評価
ピライェシュ氏は、美容医療における「自然な結果」について、次のように述べた。「美容医療では自然な結果を実現することが大切です。しかし、老化をそのまま放置すると老けてしまいます。そこで、年齢を重ねても健康的で若々しい外見を目指すことが重要です」。
同氏は、SILCという総合的アプローチを提唱している。このアプローチは、Surgery(外科手術)、Injection(注入療法)、Laser(レーザー治療)、Cell(細胞治療)の4つの要素で構成されている。当初はCosmeceutical(コスメシューティカル)だったが、現在はCellに焦点を当てているという。
ピライェシュ氏は、これらのアプローチの中でも外科的な方法である深層にアプローチするフェイスリフトの効果を高く評価した。特にディーププレーンフェイスリフトが、フェイスラインや首のリフトアップに優れていると指摘した。
また、同氏は、ヒアルロン酸やバイオスティミュレーターによる注入法については、液体の製剤を使って顔のリフトアップを実現するという意味から「リキッドフェイスリフト」と呼んだ。これは外科的フェイスリフトの完全な代替にはならず、視覚的効果をもたらす補助的な手法と述べた。
レーザー治療は、肌の再生や引き締めを促進するものであり、細胞治療は線維芽細胞やエクソソームを活用した再生医療的アプローチとして注目している。「ニーズに応じて施術を組み合わせることで、自然で健康的な外見を提供できます」と説明した。
解剖学を理解してリスクを避ける
- フィラー治療の限界とリスク→フィラーの繰り返し注入により組織が硬化し、外科的フェイスリフトが困難になる可能性があると指摘
- 解剖学的リスク→眉間や鼻への注入が原因で失明するケースが注射による失明の90%を占めるため、危険ゾーンの熟知が不可欠
- 超音波の活用→過去の施術や注入剤の位置を確認するために超音波を使用し、安全性を確保する手法を推奨
美容医療で人気のあるフィラー治療について、ピライェシュ氏はその限界やリスクを指摘した。特に、フィラーを繰り返し注入すると、組織が硬化して外科的フェイスリフトが難しくなると説明した。
さらに、解剖学的リスクとして、眉間や鼻への注入が原因で失明するケースが、注射による失明の90%を占めると指摘した。これを防ぐためには、解剖学的な危険ゾーンを熟知することが欠かせないと述べた。
ピライェシュ氏は、超音波を活用することで、過去の施術や注入剤の位置を確認することを推奨。特に、複数回のフィラーやスレッドリフトを受けた場合には、安全性を確保するための重要な手法であると述べた。
ピライェシュ氏の講演では、再生医療や地域別の美容トレンドについても触れられた。
コラーゲン生成の重要性について、線維芽細胞によるコラーゲン生成(タイプI・III)が若々しい肌を保つ鍵であり、球状粒子を含むバイオスティミュレーターが効果的にコラーゲンを刺激すると説明した。
また、地域ごとの施術傾向として、アジアでは「ウェディングドレス・ショルダー・エンハンスメント」などの独特なトレンドがあり、欧米とは異なるニーズが存在すると述べた。「解剖学に基づく治療や、一人ひとりに合った総合的な施術計画を通じて、美容医療の未来はより安全で効果的なものへと進化していくでしょう」と述べた。
自然な結果を実現するトレンドはより意識されることになりそうだ。