日本人の美しさの価値観を調べたところ、周囲との調和を重視する考え方が強く、内面よりも外見を重要視する傾向が強いという結果が得られた。
これは、コーセーとコペンハーゲン商科大学の研究チームが2024年11月に開催された第29回日本顔学会大会で発表した内容で、美容医療との関わり方を考えるときにも通じるところがあるかもしれない。
日本特有「社会調和性」に根ざす美意識
- 美しさの主観性→ 美しさの基準は個人や文化によって異なり、普遍的ではない。
- 研究の目的→ 各国で美しさを感じる要素や価値観の違いを調査。
- 美しさの構成要素→ 「内面重視」「自己受容」「社会理想の追求」などの観点から分析。
美しさとは何かというのは、その人それぞれの考え方によって変わってくる主観的なものと言っていいのだろう。ある人は、目が二重であることがよいと考えたとしても、別の人が同じように考えているとは限らない。顔が老いていくことを避けたいと考える人もいれば、それは雰囲気があって良いと考える人もいるかもしれない。
そのような考え方は、お国柄によっても変わる可能性があり、ある国で美しいとされることが、別の国では美しくないとされる場合もある。例えば、体型一つとっても、痩せ型が美しいとみられる地域もあれば、もう少しふくよかな方が美しいとされる地域もある。
そうした中で、今回の研究チームは国によって、どのようなことを美しいと感じるか、タイプ分けすることを試みた。まずは、どのようなポイントから美しいと感じるのかの構成要素を導き出し、それを使って、日本のほか、英国、米国、フランス、デンマーク、中国、台湾、ドイツで違いがあるかを確かめた。
検討の結果、美しさを感じる構成要素には、内面を重視するのか、自分を受容するのか、社会の理想に寄せていくのかなどによって定まるとされた。
これに基づいて、美しさの価値観は、「個性尊重性」「内面性」「自己研鑽性」「他者優越性」「社会調和性」の5要素に分けられると整理された。さらに17の心理指標で判定されるとされた。
美容医療の利用動機にもつながる?
- 日本の美しさの価値観→ 「社会調和性」に重きを置き、周囲と調和した外見的美しさを重視。
- 横並び意識→ 他者に配慮し、外見の「周囲との一貫性」を気にする傾向がある。
- 米国・フランスの価値観→ 「個性尊重性」に重きを置き、自分らしさや独自性の表現を重視。
調査によると、日本の美しさの価値観は「社会調和性」に寄ったものであると分かった。これがどういうことかというと、外見的美しさが周囲と調和していること、他者に配慮されたものであることが重視されるということだという。
平たく言えば、横並び意識が強いともいえるのだろう。
これに対して、米国やフランスでは「個性尊重性」に寄った価値観と判断された。これは自分らしさや独自性の表現が重視される傾向が強いということ。文化的背景の違いが、美容に対する動機や方法に影響を与えている可能性がある。
この研究で浮き彫りになった「社会調和性」の重要性は、美容医療の利用動機にも大きく関わっている可能性もある。例えば、シワやシミの改善などの美容医療を選択する背景には、自己満足という側面だけではなく、周囲と調和しているかとつながっている可能性がある。
ただ、最近では、日本でも自分らしさを重視する考え方が広がっており、SNSでの自己表現も広がっている。他人の目を気にするというだけではない、美しさの価値観がこれから強まる可能性もある。