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「ヘパリン類似物質」の皮膚保護効果を発見、大正製薬が明らかに

カレンダー2023.5.9 フォルダー最新研究

ポイント

  • ヘパリン類似物質は肌のバリア機能を高め、外的ストレスへの抵抗力を高める
  • 皮膚細胞の「接着因子」をヘパリン類似物質が促進して、皮膚をダメージから守ることを確認
  • 一般的な化粧品成分の組み合わせにより、接着因子をさらに促進させることができた
スキンケア。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

スキンケア。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 大正製薬はこのほど化粧品や保湿剤によく使われている「ヘパリン類似物質」という物質について、肌のバリア機能を高めることで、乾燥や洗浄剤、紫外線などの外的要因に耐える肌の能力を向上させるという研究結果を発表した。

肌のバリア機能に保湿成分がどう効くのか

 何度も手を洗ったり、アルコールで手を拭ったり、エアコンの冷風、紫外線など肌に影響を与える要因は数えれば切りがない。

 一方で、肌には外的ストレスから身を守るためのメカニズムも備わっている。研究グループは、外的ストレスやヘパリン類似物質の影響で接着因子がどのような影響を受けるかを確かめた。

バリア機能の鍵となる要因を増強

表皮に対するヘパリン類似物質の作用を検証。(出典/大正製薬)

表皮に対するヘパリン類似物質の作用を検証。(出典/大正製薬)

 このような検討を経て確認されたのが、皮膚の細胞は外的刺激により「接着因子」が減り、バリア機能が損なわれること。さらに、ヘパリン類似物質を使うと、この接着因子の一つに働きかけて、外部ストレスによるバリア機能の低下を防ぐことが確認された。

成分を組み合わせると接着因子が増強された。(出典/大正製薬)

成分を組み合わせると接着因子が増強された。(出典/大正製薬)

 さらに、研究グループは、複数の有効成分を組み合わせることで、接着因子の発現がさらに促進されることも確認した。今回の研究はあくまで細胞を使った研究ではあるものの、スキンケアの科学的な根拠の一端を明かした結果と言えるだろう。

 一方で、ヘパリン類似のグルコサミノグリカンに関連した物質が、カタツムリの粘液から取られ、それを皮膚の欠損を直すために検討した研究報告が最近あるなど、研究が進みつつ状況も見られる。今後、今回大正製薬が報告したような研究が進んでくれば、スキンケアをより科学的な根拠に基づいて行えるようになるのかもしれない。 

参考文献

外部刺激にゆらぎにくく健やかな肌へ、ヘパリン類似物質研究に新知見-有効成分の組み合わせで、肌バリアに重要な接着因子を高める-
https://www.taisho.co.jp/company/news/2023/20230418001285.html

Wu Y, Zhou Z, Luo L, Tao M, Chang X, Yang L, Huang X, Hu L, Wu M. A non-anticoagulant heparin-like snail glycosaminoglycan promotes healing of diabetic wound. Carbohydr Polym. 2020 Nov 1;247:116682. doi: 10.1016/j.carbpol.2020.116682. Epub 2020 Jun 26. PMID: 32829810.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32829810/

Deng T, Gao D, Song X, Zhou Z, Zhou L, Tao M, Jiang Z, Yang L, Luo L, Zhou A, Hu L, Qin H, Wu M. A natural biological adhesive from snail mucus for wound repair. Nat Commun. 2023 Jan 24;14(1):396. doi: 10.1038/s41467-023-35907-4. PMID: 36693849; PMCID: PMC9873654.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36693849/

【補足】
・記事の長さを短く調整しました。(2023/5/10)

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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