タトゥーをピコ秒レーザーで完全に除去するまでに、何回の施術が必要になるのか。タトゥーの種類やインク密度などから施術回数を予測する、新たな評価方法が開発された。
イタリアの医師らの研究グループが、ピコ秒レーザーによるタトゥー除去を受けた545人のデータを分析した。2026年7月に美容皮膚科誌で発表した。
タトゥーの6項目から施術回数を予測

タトゥー除去に必要な施術回数には、デザインの種類やインクの密度が大きく影響する。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 新しい評価方法→ピコ秒レーザーに対応した「PTスケール」を開発し、完全除去までに必要な施術回数の予測を目指した。
- 評価項目→タトゥーの種類、インク密度、部位、色、傷あとの有無、重ね彫りの有無という6項目を使った。
- 研究方法→545人のデータを分析し、その8割でモデルを作成、残りの2割で予測精度を検証した。
タトゥーの除去では、レーザーを使って皮膚の中にある色素を細かく砕き、少しずつ薄くしていく。中でもピコ秒レーザーは、短い時間で光を照射し、色素を細かく砕く治療に使われる。
ただし、タトゥーは1回の施術で完全に消えるとは限らない。インクの量や色、入っている場所などによって、必要な施術回数が異なるためだ。治療を始める前に、どれくらいの回数が必要になるのかを正確に示すことは容易ではない。
研究グループによれば、タトゥーの除去回数を予測するために「KD(Kirby–Desai)スケール」と呼ばれる評価方法が使われてきた。肌のタイプやタトゥーの場所、インクの色や量、傷あとなどを点数化する方法となる。しかし、この評価方法は、以前から使われているナノ秒レーザーによる治療をもとに作られた。研究グループによれば、ピコ秒レーザーによる治療に使うと、実際よりも多い施術回数が示される傾向があった。
そこで研究グループは、ピコ秒レーザーに対応した「PTスケール」と呼ばれる新しい評価方法を作った。
評価するのは、タトゥーの種類、インク密度、入っている場所、インクの色、傷あとの有無、重ね彫りの有無という6項目となる。
タトゥーの種類については、トライバル、文字、ブラックワーク、幾何学模様、写実的なデザインなどに分けた。インク密度は、低い、中程度、高いの3段階で評価した。
場所については、除去しにくいと考えられる手や足、骨が出ている部分と、それ以外の部分に分けた。色については、黒または赤だけのもの、複数の色を使ったもの、パステルカラーを含むものに分類した。
研究グループは、2019年から2024年までにピコ秒レーザーによるタトゥー除去を受けた18歳以上の545人を調べた。完全に除去するまでの施術回数と、タトゥーの特徴との関係を分析した。
さらに、データの8割を予測方法の作成に使い、残りの2割を予測の精度を確かめるために使った。複数の統計的な方法や機械学習を用いて、従来の評価方法と新しいPTスケールを比較した。
タトゥーの種類とインク密度が大きく影響

ピコ秒レーザーによるタトゥー除去では、タトゥーの種類、インク密度、色、部位などから施術回数を予測する新たな評価方法が開発された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 予測精度→最も精度の高いPTリッジモデルでは、予測回数と実際の施術回数の差は平均約0.6回だった。
- 主な影響要因→施術回数にはタトゥーの種類が最も大きく影響し、次いでインク密度と色の影響が大きかった。
- 今後の活用→必要な回数を事前に予測できれば、治療期間や費用の説明、個人に合った治療計画に役立つ可能性がある。
対象となった545人では、タトゥーを完全に除去するまでの施術回数は平均8.4回だった。
分析の結果、新しいPTスケールを使った予測方法は、従来のKDスケールを使った方法よりも高い精度を示した。
中でも「PTリッジ(Ridge)モデル」と呼ばれる方法が、全体として最も良い結果を示した。検証用のデータでは、予測した回数と実際の施術回数の差は平均約0.6回だった。また、施術回数のばらつきの約73%を説明できる結果となった。
一方、KDスケールの項目を使った最も精度の高いモデルでは、予測と実際の差は平均約1回となり、施術回数のばらつきを説明できる割合は約25%だった。
予測に最も大きく影響していたのは、タトゥーの種類だった。次いで、インクの密度と色の影響が大きかった。
タトゥーの種類によって、インクの量や入り方、色の重なり方などが異なる。インクが多く、密に入っている場合は、完全に除去するまでに多くの施術が必要になると考えられる。
色については、黒または赤だけのタトゥーよりも、複数の色を使ったものの方が高い点数となった。特にパステルカラーを含む場合は、除去が難しいものとして評価された。
手や足、骨が出ている部分も、ほかの場所より除去しにくいものとして点数が高くなった。また、傷あとがある場合や、以前のタトゥーの上に新しいデザインを重ねた場合も、施術回数が増える要因として評価された。
研究グループは、影響が比較的小さい項目も含め、6項目すべてを使うことで予測の精度が保たれると説明している。
事前におおよその施術回数が分かれば、治療期間について説明しやすくなり、費用の見通しも立てやすくなる可能性がある。医療者にとっても、本人に合った治療計画を立てるために役立ちそうだ。
今回の結果では、異なる施設や幅広い肌タイプでも同じ精度が得られるか、今後さらに確認する必要があるとされているが、タトゥーの特徴から治療の見通しを伝えるための新たな手掛かりになる。日本でもタトゥー除去は行われており、同様な仕組みが広がると良さそうだ。
参考文献
Pedrelli V, Tauro E, Tretti Clementoni M, Zevini A, Barini R, Caiani EG. Prediction of Tattoo Removal Sessions With Picosecond Lasers: Development and Validation of a Novel Clinical Scale With Machine Learning Techniques. J Cosmet Dermatol. 2026;25(8). doi: 10.1111/jocd.71088.
https://doi.org/10.1111/jocd.71088
