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美容医療の関連学会の「ライブ注入」に安全面の課題、専門家96%超が行動規範を支持、録画や少人数教育も有力な代替策に、オーストラリア中心の国際研究グループ

カレンダー2026.9.3 フォルダー最新研究
横になった女性の眉間付近に、医療従事者が注射器を近づけている美容医療の施術場面。

ライブ注入の代替策として、録画映像や少人数教育を支持する意見も示された。画像はイメージ。

 美容医療の学会で広く行われている、実際に施術を受ける人に注入治療を行いながら手技を解説する「ライブ注入」について、安全性や倫理面から運営方法を見直す必要性が示された。

 オーストラリアを中心とする国際研究グループが2026年9月に報告した。

通常の診療との違いを専門家が問題視

美容医療の施術前に、医療従事者が患者の顔の状態を確認している様子。

注入治療では、施術前の診察や説明、治療環境の整備が安全管理の前提となる。画像はイメージ。

  • 研究対象→ライブ注入の経験を持つ専門家31人と、美容医療学会に参加した医療従事者218人を対象に、安全性や教育的価値を調べた。
  • 通常診療との違い→学会会場では設備や姿勢、時間制限、観客やカメラの存在などが、施術者の判断や安全性に影響する可能性がある。
  • 教育上の懸念→専門家の95.7%が「パフォーマンス圧力」を、91.3%が経験の浅い施術者への悪影響を問題視した。

 美容医療の学会では、著名な医師などが、実際の患者を対象に美容医療の注入治療を行い、その様子をカメラで撮影して大画面に映す教育形式が長年取り入れられてきた。実際の組織の反応や施術者の判断をリアルタイムに確認できることが利点とされてきた。

 しかし、学会の会場は通常の診療室とは環境が異なる。照明やベッド、救急対応の設備が十分でない可能性があり、さらに観客やカメラを意識する必要もある。限られた時間内で複数の部位を治療したり、映像に手元が映るよう普段とは異なる姿勢を取ったりすることも考えられる。

 研究グループは、こうした環境が施術を受ける人の安全や施術者の判断、さらに見学する医療従事者の学習にどのような影響を与えるのかを検討した。

 研究ではまず、美容医療の学会発表やライブ注入の経験を持つ形成外科医、皮膚科医、美容医療医、看護師など31人の専門家を選んだ。専門家に対し、施術を受ける人の安全、倫理、教育的価値、企業による影響、運営体制などについて46項目の質問を行い、賛成または反対のいずれかで70%以上となった場合を「合意」とした。

 1回目で十分な合意が得られなかった項目は内容を修正し、2回目に29項目を改めて検討した。

 さらに、実際に美容医療学会へ参加している医療従事者218人にも23項目の調査を実施した。参加者の93%は注入治療を行っており、85%は4年以上の経験があり、92%が過去に学会でライブ注入を見た経験を持っていた。

ライブ実演なしでも82%が「学会に参加」

美容医療の施術室で、横になった女性に注射器を用いた顔の注入治療を行う様子。

美容医療の注入治療では、施術者の判断や姿勢、治療環境が安全性に影響する。画像はイメージ。

  • 安全管理→術後フォローや救急設備、責任者の明確化などに加え、96.6%の専門家がライブ注入の行動規範を支持した。
  • 代替手段→参加者の81%は高品質な録画でも同程度の教育的価値があると考え、74%は少人数で学ぶ形式を好んだ。
  • 学会参加への影響→82%は、ライブ注入を事前収録映像とリアルタイム解説などに置き換えても学会への参加を続けると回答した。

 その結果、専門家の95.7%は、大勢の観客の前で施術することが施術者に心理的な圧力を与える可能性があると回答した。91.3%は、ライブ実演が経験の浅い施術者にとって不適切な手本になる可能性があると考えた。

 例えば、カメラの位置に合わせるため施術を受ける人と施術者の姿勢を変えたり、時間内に見栄えのする変化を示そうとしたりすれば、通常の診療で行われる慎重な治療とは異なる手技に見える可能性がある。学会で見た方法を若い施術者が「標準的な治療」と受け取る危険性を、専門家は問題視した。

 研究では、ライブ注入を続ける場合に必要となる具体的な安全対策も専門家の合意が得られた。

 施術者と現地で責任を負う医療従事者、学会主催者の3者で書面による合意を結ぶべきだとした専門家は93.1%に上った。また、医学的、法的責任を担う医療従事者が施術中にその場にいるべきだとの回答は89.7%、適切な術後フォローが必要との回答は93.1%だった。

 適切な照明や治療環境、救急用の設備、緊急時に対応できる人員についても専門家は必要性で一致した。ライブ注入に関する自主的な行動規範を設けることについても96.6%が支持した。

 研究結果は、著名な施術者が学会で治療を行った後にその地域を離れる場合でも、誰が施術後の診療を担い、合併症が起きた際に誰が対応するのかをあらかじめ明確にする必要があることを示している。

 一方で、ライブ注入そのものを全面的に否定する結果ではなかった。学会参加者のおよそ7割はライブ注入に教育的な価値があると考え、必要な安全管理を整えることを前提に専門家の75.9%も継続を支持した。

 「大人数の会場でリアルタイムに施術すること」が不可欠だという考えには疑問も示された。参加者の74%は、8人以下の少人数で学ぶ形式を大規模会場での実演より好むと回答。また81%は、高品質な録画による施術映像でも大規模会場でのライブ注入と同程度の教育的価値を得られると考えていた。82%は、ライブ注入を高画質の事前収録映像とリアルタイムの解説や患者評価に置き換えても、学会への参加を続けると回答した。

 美容医療の教育への関心は高まっているが、美容医療の技能向上を支える学会教育でも、安全性を重視し、ライブ実演から録画や少人数教育へ教育方法を見直す動きが広がる可能性がある。

参考文献

Goodman GJ, Magnusson MR, Rahman E, et al. A Modified Delphi Study on the Ethics and Governance of Live Injecting at Aesthetic Conferences. Is There a Better and Safer Alternative? Aesthetic Surgery Journal. Published September 2, 2026. doi:10.1093/asj/sjag179
https://academic.oup.com/asj/advance-article/doi/10.1093/asj/sjag179/8778765

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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