タウリン、時計の針を巻き戻す?世界的な科学誌が報告する老化防止効果に注目
ポイント
- タウリンを補給すると、マウスの寿命がメスで12%、オスで10%延びた
- また体重増加を抑制し、筋力を向上させるなど健康状態を改善した
- 日本では、タウリンの豊富な供給源の魚の消費量減少で、タウリンの摂取量が減少
若返りにつながる栄養素として、魚などに含まれる「タウリン」の価値が急速に注目を集めている。美容医療の分野でも今後、話題になることが増えそうだ。インド国立免疫研究所や米国コロンビア大学などが参加した国際研究グループが2023年6月、世界的な科学誌サイエンスで発表した。
タウリン欠乏と老化
ヒフコNEWSで報じている通り、美容医療の分野ではアンチエイジングのアプローチから、若返り(rejuvenation)へとシフトが進んでいる。より積極的に若い状態を保つという考え方が強まっていると言っていいだろう。例えば、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)やNR(ニコチンアミドリボシド)のようなサプリメントが若返りに関与する可能性が、細胞機能を改善する能力から注目されている。
その中で、日本人にはよく知られた栄養素のタウリンへの関心が高まっている。冒頭の通り、この6月、国際的にも評価の高い科学誌で論文が発表されたのが大きい。
そもそもタウリンとは何か
そもそもタウリンはアミノ酸の一種だ。人体を構成しているタンパク質は20種類のアミノ酸がつながった鎖のような形になっているが、タウリンはこの20種類には入っていない。しかし、最近の研究で、タウリンは骨を形作るために必要とされるほか、免疫機能、肥満、神経との関係が分かってきている。
また、人では、5歳の時点と比べると、60歳の時点では、血液の中のタウリンが3分の1になることが確認されている。このタウリンの減少により、タウリンが老化の一因になっているのではないかと推測されるようになった。
そこで、インドや米国などの老化を専門とする世界中の科学者がタウリンの老化への影響について調査を開始した。
タウリン摂取で寿命が1割近く延びた
こうして判明したのは、タウリンを補充することで、寿命が10%近く延びることだ。マウスを使った動物実験では、タウリンのサプリメントを与えたマウスは長生きし、寿命がメスで12%、オスで10%延びた。
さらに、タウリンの補給は、さまざまな面から健康につながることも確認された。加齢に伴う体重増加の抑制、エネルギー消費量の増加、骨量の改善、筋持久力と筋力の強化、抑うつ行動の減少、免疫系機能の向上などである。
細胞レベルでは、タウリンが、細胞死に至らず存在し続ける「ゾンビ細胞」を減らしたほか、幹細胞の増加やミトコンドリアの機能向上、DNAのダメージを減少させることも分かった。
このような老化を防ぐ効果は、より人に近いサルにおいても確認された。人においてもタウリンのレベルが高いほど、病気が少ないことが確認できた。
日本人は年々摂取量減少
日本ではタウリンといえば、大正製薬が栄養ドリンク剤「リポビタンD」に配合していることを宣伝していることからよく知られているだろう。しかし、今回の科学誌サイエンスで発表された研究は、大正製薬が資金提供しているわけではなく、独自に行われたものである。
その大正製薬はこの6月に、日本人のタウリンの摂取量が減少していると報告した。主な原因は、魚はタウリンの豊富な供給源である魚の消費量の減少だ。今回の研究結果をきっかけに、美容医療の分野も含めて、タウリンへの注目が高まる可能性がある。
参考文献
Taurine May Be a Key to Longer and Healthier Life
https://www.cuimc.columbia.edu/news/taurine-may-be-key-longer-and-healthier-life
Singh P, Gollapalli K, Mangiola S, Schranner D, Yusuf MA, Chamoli M, Shi SL, Lopes Bastos B, Nair T, Riermeier A, Vayndorf EM, Wu JZ, Nilakhe A, Nguyen CQ, Muir M, Kiflezghi MG, Foulger A, Junker A, Devine J, Sharan K, Chinta SJ, Rajput S, Rane A, Baumert P, Schönfelder M, Iavarone F, di Lorenzo G, Kumari S, Gupta A, Sarkar R, Khyriem C, Chawla AS, Sharma A, Sarper N, Chattopadhyay N, Biswal BK, Settembre C, Nagarajan P, Targoff KL, Picard M, Gupta S, Velagapudi V, Papenfuss AT, Kaya A, Ferreira MG, Kennedy BK, Andersen JK, Lithgow GJ, Ali AM, Mukhopadhyay A, Palotie A, Kastenmüller G, Kaeberlein M, Wackerhage H, Pal B, Yadav VK. Taurine deficiency as a driver of aging. Science. 2023 Jun 9;380(6649):eabn9257. doi: 10.1126/science.abn9257. Epub 2023 Jun 9. PMID: 37289866.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37289866/
日本人のタウリン摂取量の年次推移を初めて推定~魚介類の摂取減に伴い8年で約2割減少~
https://www.taisho.co.jp/company/news/2023/20230605001321.html
美容医療の新常識「エピジェネティック・クロック」が教える、あなたの本当の年齢
https://biyouhifuko.com/news/japan/2078/
「見た目の大切さ」とは?──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語るVol.1
https://biyouhifuko.com/news/interview/1082/
美容医療と美しさ──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語る Vol.2
https://biyouhifuko.com/news/interview/1100/
寿命400歳まで示唆する最新研究、慶應義塾大学の早野元詞氏が解説するアンチエイジングから若返りへの最新トレンド、第111回日本美容外科学会(JSAS)
https://biyouhifuko.com/news/japan/1439/
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