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肥満症の新たな治療法?セマグルチド飲み薬が体重減少に効果

カレンダー2023.7.8 フォルダー最新研究

ポイント

  • 糖尿病治療薬として開発されたセマグルチドが2023年3月に肥満症治療薬としても承認された。
  • この薬には注射薬と飲み薬があり、目的や形態によって異なる商品名が付けられている
  • セマグルチドの飲み薬の減量効果が検証され、有効性が確認された
肥満症の解消。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肥満症の解消。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 肥満症の新たな治療法として、「セマグルチド飲み薬」が登場する可能性がある。2023年6月、国際研究グループがその承認に向けて減量効果を確かめた研究を発表した。

飲み薬の注目度が高まる

飲み薬に注目。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

飲み薬に注目。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 セマグルチドは当初は糖尿病の薬として開発されたが、最近では、その体重減少効果が大きく注目されている。

※セマグルチドは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬として知られる薬。血糖値を下げるホルモンのインスリン分泌を促進し、血糖値を低下させる効果を持っている。もともと糖尿病治療を目的として開発されたが、体重減少の効果から肥満症治療を目的としても開発され、日本を含めて各国でそれぞれの治療目的で承認されている。なお、注射薬と飲み薬が存在しており、使用目的と薬の形態によって商品名が異なっている。糖尿病治療を目的とする場合、注射薬は「オゼンピック」という商品名で、飲み薬は「リベルサス」という商品名。肥満症治療を目的とする場合、注射薬は「ウゴービ」という商品名である。今後、肥満症治療を目的とした飲み薬が登場する可能性がある。

 セマグルチドは先に注射薬が登場したが、その後に飲み薬も使えるようになった。注射薬は手間がかかる分だけ治療を続けるのが難しい。飲み薬であれば注射の手間がなく治療を続けやすい。

 今回、米国ノースカロライナ大学をはじめとした研究グループは、セマグルチドを糖尿病治療の標準的な用量(飲み薬)1日14mgと比較して、1日25mgまたは50mgの高用量で使用した場合の血糖値や体重減少への効果を調査した。

 この臨床試験は、米国で高用量のセマグルチド飲み薬として承認を申請するための最終段階の研究。試験では、平均58.2歳の男性1606人をランダムに3つのグループに分け、52週間にわたって1日14mg、25mg、50mgのそれぞれの飲み薬の効果を比較する。

自由診療で広がるが乱用に心配も

ダイエットでの関心高い。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ダイエットでの関心高い。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 この試験の結果、高用量である場合に、血糖値をより効果的に下げて、体重もより大きく減らせることが確認された。

 具体的には、血糖値の指標となるHbA1cが7.0%未満に低下した人の割合を高められた。さらに、体重減少の程度も高用量の場合にはより大きくなった。14mgの場合は約4.5kgの減量だったのに対し、25mgでは約6.7kg、50mgでは約7.8kgの減量となった。

 観察された一般的な副作用は吐き気で、参加者の中には下痢や便秘を経験した人もいた。

 日本では、肥満症の治療薬としてウゴービが承認されているが、自由診療においてダイエット目的で処方され、使用されるケースが増えていた。しかし、セマグルチドは本来は糖尿病の薬であり、適切な処方や使用方法を守らない場合、低血糖による意識障害などのトラブルが起こる可能性もあるため、乱用に警鐘も鳴らされている。

 もっともセマグルチドを使用した減量に対する世界的な関心は高く、その入手しやすさにも影響を与えている。今後、米国で高用量のセマグルチドが肥満症治療薬として承認されれば、さらなる注目度の上昇が予想される

参考文献

Higher Doses of Oral Semaglutide Improves Blood Sugar Control and Weight Loss
https://news.unchealthcare.org/2023/06/higher-doses-of-oral-semaglutide-increase-blood-sugar-control-and-weight-loss/

Aroda VR, Aberle J, Bardtrum L, Christiansen E, Knop FK, Gabery S, Pedersen SD, Buse JB. Efficacy and safety of once-daily oral semaglutide 25 mg and 50 mg compared with 14 mg in adults with type 2 diabetes (PIONEER PLUS): a multicentre, randomised, phase 3b trial. Lancet. 2023 Jun 23:S0140-6736(23)01127-3. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01127-3. Epub ahead of print. PMID: 37385279.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37385279/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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