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ビタミンD不足が引き起こす皮膚の炎症、DHCがメカニズムを明らかに

カレンダー2023.8.15 フォルダー最新研究

ポイント

  • ビタミンDの欠乏は皮膚の炎症を悪化させるが、メカニズムが不明だった
  • ビタミンDにより炎症と関連するインフラマソームの活性低下を確認
  • ビタミンDの補給は、皮膚の炎症を防ぐために役立つ可能性がある
肌の炎症のメカニズム。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肌の炎症のメカニズム。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ビタミンDの不足は皮膚の炎症を悪化させると知られていたが、その仕組みが明らかになった。ディーエイチシー(DHC)が2023年8月10日に発表した。

ビタミンDが不足すると皮膚の炎症が悪化

インフラマソームの活性化により炎症が悪化。ビタミンDにより抑制。このメカニズムについて検証を進めた。(出典/DHC)

インフラマソームの活性化により炎症が悪化。ビタミンDにより抑制。このメカニズムについて検証を進めた。(出典/DHC)

 これまでの研究から、ビタミンDが不足すると、皮膚の炎症が悪化すると分かっている。一方で、ビタミンDが炎症を和らげる仕組みは不明だった。

※炎症とは、皮膚の赤みや腫れ、痛みなどにつながる免疫反応の一種。

 DHCの研究グループは、ビタミンDの不足と、皮膚の防御に関係する「インフラマソーム」との関連について調べた。

※インフラマソームは、巨大なタンパク質の複合体。

 インフラマソームは、感染症などから皮膚を守る一方で、アトピー性皮膚炎のような皮膚の炎症を起こす状態では活性化し、症状を悪化させる。

 研究グループはビタミンDが不足すると、インフラマソームが活性化するという仮説を立てて検証を進めた。

 具体的には、ビタミンDの存在が、インフラマソームを活性化する薬剤(ニゲリシン)の作用に影響するかを探った。

「インフラマソーム」の活性が問題に

薬(ニゲリシン)だけだとインフラマソームの活性が高まるが、ビタミンDを添加すると活性が低下する。ビタミンD受容体の働きを抑えると、ビタミンDの影響が見られなくなる。(出典/DHC)

薬(ニゲリシン)だけだとインフラマソームの活性が高まるが、ビタミンDを添加すると活性が低下する。ビタミンD受容体の働きを抑えると、ビタミンDの影響が見られなくなる。(出典/DHC)

 こうして確認されたのが、ビタミンDが十分にあると、インフラマソームの活性化が抑制され、炎症が起こりにくくなること。

※薬剤(ニゲリシン)によるインフラマソームの活性が、ビタミンDの存在により低下し、炎症の目安になる因子(IL-1β)の産生量が減少した。さらに、ビタミンDの機能に必要なビタミンD受容体を抑えるように操作された細胞では、ビタミンDを添加してもインフラマソームの活性を低下は見られなかった。これは、ビタミンDをビタミンD受容体に結合させることで、インフラマソームの活性を抑制できることを示している。

 こうした観察結果から、ビタミンDの補給が皮膚の炎症を予防する可能性が想定される。

 日本人ではビタミンDが不足している傾向があると報告されている。ヒフコNEWSで伝えたが、「シンデレラ体重」と呼ばれるBMIが低い場合にビタミンDが不足しがちという報告もある。

 こうしたビタミンDの不足が皮膚に炎症を起こしやすくする可能性があり、皮膚をより健康に保つ上でも、ビタミンDの不足に注意するのは重要と言えそうだ。

参考文献

【研究報告】ビタミン D 不足が皮膚炎の悪化に繋がるメカニズムを発見
https://top.dhc.co.jp/contents/guide/newsrelease/pdf/230810-01.pdf

最近の日本人のビタミンD欠乏(国立環境研究所)
https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/79/column2.html

「シンデレラ体重」の実態調査、ビタミンD不足など隠れた問題
https://biyouhifuko.com/news/research/1715/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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