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美容目的のA型ボツリヌス製剤の安全性とは?約1万人の副作用を解析

カレンダー2023.4.2 フォルダー最新研究

ポイント

  • 約1万人分の情報を分析し、ボツリヌス療法の安全性について調査した
  • まぶたや眉の位置の変化、顔面神経まひ、頭痛などが治療に関連する有害事象として確認された
  • 有害事象は軽度から中程度で一時的なものであり、注射は安全に使用できるとの結論に至った

1970年代から使われているボツリヌス毒素注射。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ボツリヌス療法は、ボツリヌス毒素注射としても知られ、顔の小ジワを目立たなくする施術である。額や目の周り、眉間など、さまざまなシワに使用することができる。従来、まぶたの痙攣、斜視、わきの下の過剰な発汗の治療にも医療目的で使用されてきた。

 ボツリヌス療法は、ボツリヌス菌の毒素を使ったものであり、毒素の安全性が気になるが、その安全性については研究が進んでいる。このたび1万人近くのデータに基づいて安全性が詳しく調べられその結果が報告された。

美容目的のA型ボツリヌス製剤の安全性とは

およそ1万人の情報を分析。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ボツリヌス菌の毒素は複数の種類があるが、中でもA型ボツリヌス毒素は、1970年代から医療行為に使用されている薬剤だ。A型ボツリヌス毒素製剤(以下、A型ボツリヌス製剤)の商品名としては、ボトックスやゼオマインなどがある。時を経て、シワを減らすための美容目的でも人気が出ている。この治療法の安全性を調査するために多くの研究が行われ、常に新しい情報が報告されている。

 今回、カナダ、ウエスタン大学と米国ハーバード大学の研究グループが、美容目的でのA型ボツリヌス製剤の安全性を調べた。研究者は2022年3月に、オフサルミック・プラスティック・アンド・リコンストラクティブ・サージェリー誌という目の整形手術に関する医学雑誌に研究結果を発表した。

 この論文の要点は次の通りだ。

 研究者らは、美容目的のA型ボツリヌス製剤について、プラセボと比較した研究結果を分析した。研究は2020年1月までに実施されたもので、研究者らは使用したボツリヌス毒素の種類と注入技術を考慮した。分析対象は9669人を対象とした32の研究で、研究者は治療に関連する有害事象の件数とリスク上昇を算出した。

A型ボツリヌス製剤の注射、安全性と副作用

効果ばかりではなくリスクを知ることも大切。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 32のランダム化比較試験の分析から、A型ボツリヌス製剤を使った注射を受けた人は、プラセボを受けた人に比べて治療関連の副作用のリスクが1.53倍に上昇すると明らかになった。

 研究者はA型ボツリヌス製剤を使った注射後の有害事象のリスク上昇は、毒素の注入量と関係があるが、製品の種類や治療部位とは関係がないことを明らかにした。さらに、A型ボツリヌス製剤の総単位数および注射1回あたりのA型ボツリヌス毒素の単位という、ボツリヌス毒素そのものの量は有害事象のリスクと関連しなかったが、注入された液体の量は関連していた。

 A型ボツリヌス製剤を使った注射した後の副作用は、プラセボ投与後に比べ、まぶたや眉の位置異常、顔面神経まひ、頭痛の発生頻度が高いことが示された。ただし、研究者はこれらの分析からA型ボツリヌス製剤を使った注射の安全性は許容範囲内と判断されると結論づけた。有害事象は軽度から中程度であり、一過性で、A型ボツリヌス毒素の薬理作用や性質から予想されるものだったと指摘する。

 この研究論文のポイントは以上の通りだ。美容目的で一般的に使用されているA型ボツリヌス製剤を使った注射は安全に使用できると結論付けられたが、潜在的な副作用を理解しておくことが重要である。

参考文献

Gostimir M, Liou V, Yoon MK. Safety of Botulinum Toxin A Injections for Facial Rejuvenation: A Meta-Analysis of 9,669 Patients. Ophthalmic Plast Reconstr Surg. 2023 Jan-Feb 01;39(1):13-25. doi: 10.1097/IOP.0000000000002169. Epub 2022 Mar 30. PMID: 35353777.
https://journals.lww.com/op-rs/Fulltext/2023/01000/Safety_of_Botulinum_Toxin_A_Injections_for_Facial.3.aspx

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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