NMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド、β-Nicotinamide mononucleotide)は人気のサプリメントだが、新たな研究で最適な用量が1日600mgであると報告されている。人間における効果についてはまだ確定的な結論を出した研究は少ないが、参考になるかもしれない。米国の研究者を中心としたグループが2024年2月に報告している。
NMN補給による血中NAD濃度の有意な増加
NMNは、植物や哺乳類の組織に存在する天然物質。細胞のエネルギーを生み出すNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)の前駆体として機能する。
※加齢に伴うNAD濃度の減少はエネルギー代謝、細胞のDNA修復に関連するPARP(ポリADP-リボースポリメラーゼ)、細胞の老化に関連するサーチュインタンパク質の活性化に影響する。ハエを使った実験では、NMNによってNAD濃度が2.2倍に増えて寿命が延長。また、マウスを使った実験では、短期間で肝臓のNAD濃度が上昇し、長期間の投与で加齢による機能衰退が緩和された。
一方、人間におけるNMNの臨床試験はまだ少ない。NAD濃度の増加や加齢関連の健康影響についての結果は一致していない。これまでの研究では固定用量(1日当たり250 mgや300 mg)が多く、特定の性別や健康状態の参加者を対象にしていた。実際に、日本国内で市販されているものもっこの範囲のものがよく見られる。
健康な中年の男女に対してNMNの効果を詳しく理解するには、1日当たり300~900 mgの範囲で、用量を増やした効果を確かめる必要がある。今回、臨床試験では、中年の健康な成人80人を対象に、60日間にわたるNMN補給(1日当たりの用量は、300mg、600mg、900mg、プラセボ)の効果が検証された。
6分間での歩行距離が伸びる結果に
こうして確認されたのは、NMNが1日当たり600mgが最適である可能性だ。
NMNによる臨床試験では、プラセボグループと比べて、いずれのNMN用量でも血液中のNAD濃度が統計的に有意に上昇していた。600mgと900mgの投与量では同等だった。
6分間の歩行試験でも、NMNグループはプラセボグループに比べて歩行距離を有意に延長し、600mgおよび900mgの投与量で同等だった。健康状態をスコア化する「SF-36」によると、NMNグループはプラセボグループに比べて改善が有意に改善していた。
副作用については、NMNを原因とした副作用は確認されなかった。
こうした結果から、研究グループは600mgと900mgが同様に効果的であるが、600mgが最適だと結論付けている。
NMNは人気のサプリメントとなっているが、このような研究結果を参考にすると良さそうだ。