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脂肪吸引のリスク、40人に1人が合併症に、日本では死亡事故も発生、海外の研究グループが報告

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世界で最も一般的な美容整形手術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

世界で最も一般的な美容整形手術。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 日本で脂肪吸引の合併症による死亡事故が発生し、注目されている。貧血を引き起こし、輸血に至った事故も報告され、脂肪吸引に関連したトラブルはときおり起きていると推測される。

 2024年4月、海外の研究グループが、脂肪吸引に関連した合併症のタイプと頻度について論文で報告している。

 日本とは異なる状況にあるが、参考になり得る。

合併症の全体的な率と個別のリスク

余分な脂肪を除く。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

余分な脂肪を除く。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 脂肪吸引は、過剰な脂肪を取り除く手術。それは世界で最も一般的に行われている美容整形手術となっている。国際美容外科学会(ISAPS)調査によると、男女合わせたランキングは次の通り。脂肪吸引は年間約230万件と推測された。

外科的手術 トップ5(全世界)

ランキング 手術名 絶対数 2021年との比較
1 脂肪吸引 2,303,929件 +21.1%
2 豊胸術 2,174,616件 +29.0%
3 眼瞼手術 1,409,103件 -2.6%
4 腹部形成術 1,180,623件 +19.1%
5 バストリフト 955,026件 +22.2%

 冒頭に紹介した通り、脂肪吸引後の事故が問題視されている。

 23年4月、大阪市のクリニックであご下の脂肪吸引を受けた男性が、福岡市の自宅に帰宅後、窒息死するという事故が起きている。その後、医師は書類送検された。このほかにも23年8月、脂肪吸引の手術を受けた後に貧血を起こし、点滴や輸血の治療を受けるという事故も報告された。

 ヒフコNEWSでは、海外の事例として、あご下の脂肪吸引を受けた後、血腫を作って呼吸が苦しくなるなどの合併症の論文報告を紹介している。

 脂肪吸引に関する合併症のリスクが問題となっているが、合併症の実態はまだ十分には分かっていないようだ。

 このたび米国ピッツバーグ大学を中心とした研究グループが、脂肪吸引の合併症に関連した過去の論文を集めて、分析した結果を論文報告した。

最も一般的な合併症は「変形」

合併症が起こることがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

合併症が起こることがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 研究から判明した合併症の実態は次の通りとなった。

合併症の種類 発生率(%)
全体の合併症率 2.62
形状の変形 2.35
色素沈着 1.49
漿液腫 0.65
血腫 0.27
肌表面のヤケド 0.25
アレルギー反応 0.16
皮膚壊死 0.046
全身性浮腫 0.041
感染 0.020
静脈血栓塞栓症 0.017
局所麻酔薬の副作用 0.016

※漿液腫(しょうえきしゅ)は血液の中の透明な液体がたまるもので、血腫(けっしゅ)は赤い血液がたまるもの、浮腫は水がたまってむくむ状態を指す。皮膚壊死(えし)は皮膚の組織が死ぬこと。静脈血栓塞栓症は、血管の中で血液が固まりを作り、それが肺の血管などに流れて血管を詰まらせる病気。

 関連した論文2957件から39の論文が選ばれ、合計2万9368人のデータが詳しく調べられた。施術を受けた人たちの平均年齢は40.62歳、平均BMIは26.36 だった。研究グループは合併症の発生率について、全体で2.62%について非常に低いと指摘している。

 論文からの報告は以上の通りだ。

 今回の論文を参考にすると、脂肪吸引の合併症は海外の情報としては40人に1人くらいの割合で起きているといえる。頻度は低いかもしれないが、日本では死亡事故に至るものもあり、施術を検討する人は可能性のある合併症について知っておく必要があるだろう。施術を受けた人は、施術後の異変に十分に注意しておく必要があるだろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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