ヒフコNEWS 美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイト

老化細胞の除去で寿命を延ばす効果、人間ならば130歳相当に、国内外で注目される「SASP」、米国コネチカット大学の研究グループが発表

カレンダー2024.8.11 フォルダー最新研究
若く保つ新しい方法が発見されている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

若く保つ新しい方法が発見されている。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 シワやたるみ、シミ、薄毛、肥満など、老化と関連する体の変化をどのように防ぐことができるか。美容医療とも関わりの深い課題といえる。

 再生医療や若返りの研究が世界的に活発になっている中で、米国コネチカット大学の研究チームが新たな治療法を発見し、マウスを使った実験で注目すべき成果を上げた。この治療法により、マウスの寿命が平均して9%延び、その結果、人間換算で約130歳に相当する寿命にまで延びた。

老化予防と健康寿命の延伸

老化細胞を除去することに意味がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

老化細胞を除去することに意味がある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ヒフコNEWSで伝えているように、世界的に若返り研究が発展している。英語では「rejuvenation(レジュビネーション)」と呼ばれ、生物学的年齢の上昇を抑える方法の研究が進んでいる。例えば、老化細胞除去ワクチンの研究が進んでおり、老化した細胞が周囲も老化させるという現象に注目し、老化細胞を除去する治療法の研究が進んでいる。

※生物学的年齢とは、生まれてからの年月によって決まる「暦年齢」とは異なり、体の組織や細胞の老化の度合いによって決まる年齢のこと。

 こうした中で、コネチカット大学の研究では、老化に伴う体力の低下を防ぐ治療法を開発し、その効果をマウスを用いた実験で確認した。この治療を受けたマウスは、治療を受けなかったマウスに比べて握力や歩行速度が向上し、最も長生きしたマウスでは43カ月間生存した。これは人間換算で約130歳に相当する。

 この結果は、老化を予防しつつ健康的な寿命を延ばす可能性を示す。今回の発見は、特に老化による身体機能の低下に対して効果的なアプローチになり、今後の人間への応用の可能性もある。

「p21遺伝子」を標的に老化細胞を除去

老化を防ぐ可能性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

老化を防ぐ可能性。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 今回の研究の中心となるのは、p21遺伝子を発現する細胞の除去。この遺伝子は、細胞の老化と深く関わり、炎症を引き起こす役割を持つ。研究グループは高炎症性細胞と呼んでいる。炎症は老化の主要な要因の一つとされ、老化に伴う病気や機能低下を引き起こすと考えられている。

 研究チームは、月1回の頻度でp21遺伝子を高く発現する細胞を除去することで、マウスの体力を維持しつつ寿命を延ばすことに成功した。この方法により、老化に伴う炎症を抑制し、健康寿命の延長が実現された。

 ヒフコNEWSでは「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype、老化関連分泌表現型)」という老化を引き起こす仕組みを紹介したが、炎症性細胞は、こうした老化のメカニズムとも関与する可能性がある。老化細胞が持つSASPによる悪影響を減少させ、老化に伴う様々な病気を予防する可能性を示している。

 今後、老化細胞を除くという若返りの治療が注目される可能性がある。

参考文献

Live Longer, Die Healthier.
https://today.uconn.edu/2024/08/live-longer-die-healthier/

Wang B, Wang L, Gasek NS, Kuo CL, Nie J, Kim T, Yan P, Zhu J, Torrance BL, Zhou Y, Flores LC, Allen C, Andrade AM, Guo C, Cohn RL, Jellison ER, Bartley JM, Kuchel GA, Li S, Pirtskhalava T, Tchkonia T, Yadav S, Haynes L, Kirkland JL, Ikeno Y, Xu M. Intermittent clearance of p21-highly-expressing cells extends lifespan and confers sustained benefits to health and physical function. Cell Metab. 2024 Aug 6;36(8):1795-1805.e6. doi: 10.1016/j.cmet.2024.07.006. PMID: 39111286; PMCID: PMC11315361.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39111286/

老化を防ぐ最新トピック、再生医療や若返りの最新状況、第41回日本美容皮膚科学会学術集会の講演より.
https://biyouhifuko.com/news/japan/3363/

「老化細胞・老化細胞除去ワクチン」「SASP」「ANGPTL2」、最先端のキーワード3つ、細胞はなぜ老化する?第24回日本抗加齢医学会総会の尾池雄一会長講演.
https://biyouhifuko.com/news/japan/7696/

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

お問い合わせ

下記よりお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。