シワやたるみ、シミ、薄毛、肥満など、老化と関連する体の変化をどのように防ぐことができるか。美容医療とも関わりの深い課題といえる。
再生医療や若返りの研究が世界的に活発になっている中で、米国コネチカット大学の研究チームが新たな治療法を発見し、マウスを使った実験で注目すべき成果を上げた。この治療法により、マウスの寿命が平均して9%延び、その結果、人間換算で約130歳に相当する寿命にまで延びた。
老化予防と健康寿命の延伸
ヒフコNEWSで伝えているように、世界的に若返り研究が発展している。英語では「rejuvenation(レジュビネーション)」と呼ばれ、生物学的年齢の上昇を抑える方法の研究が進んでいる。例えば、老化細胞除去ワクチンの研究が進んでおり、老化した細胞が周囲も老化させるという現象に注目し、老化細胞を除去する治療法の研究が進んでいる。
※生物学的年齢とは、生まれてからの年月によって決まる「暦年齢」とは異なり、体の組織や細胞の老化の度合いによって決まる年齢のこと。
こうした中で、コネチカット大学の研究では、老化に伴う体力の低下を防ぐ治療法を開発し、その効果をマウスを用いた実験で確認した。この治療を受けたマウスは、治療を受けなかったマウスに比べて握力や歩行速度が向上し、最も長生きしたマウスでは43カ月間生存した。これは人間換算で約130歳に相当する。
この結果は、老化を予防しつつ健康的な寿命を延ばす可能性を示す。今回の発見は、特に老化による身体機能の低下に対して効果的なアプローチになり、今後の人間への応用の可能性もある。
「p21遺伝子」を標的に老化細胞を除去
今回の研究の中心となるのは、p21遺伝子を発現する細胞の除去。この遺伝子は、細胞の老化と深く関わり、炎症を引き起こす役割を持つ。研究グループは高炎症性細胞と呼んでいる。炎症は老化の主要な要因の一つとされ、老化に伴う病気や機能低下を引き起こすと考えられている。
研究チームは、月1回の頻度でp21遺伝子を高く発現する細胞を除去することで、マウスの体力を維持しつつ寿命を延ばすことに成功した。この方法により、老化に伴う炎症を抑制し、健康寿命の延長が実現された。
ヒフコNEWSでは「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype、老化関連分泌表現型)」という老化を引き起こす仕組みを紹介したが、炎症性細胞は、こうした老化のメカニズムとも関与する可能性がある。老化細胞が持つSASPによる悪影響を減少させ、老化に伴う様々な病気を予防する可能性を示している。
今後、老化細胞を除くという若返りの治療が注目される可能性がある。