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老化を防ぐ最新トピック、再生医療や若返りの最新状況、第41回日本美容皮膚科学会学術集会の講演より

カレンダー2023.9.20 フォルダー 国内

ポイント

  • 日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏が老化や若返りの最新状況を講演
  • 生物学的年齢と若返り治療の効果を決定する「DNAメチル化」の変化に注目
  • 再生医療などには可能性があるが、有効性や安全性の両面を理解すべきだと指摘

 老化を遅らせ、若返りを目指す研究が進んでいる。美容医療の世界でも、再生医療やNMN(ニコチンアミドモヌクレオチド)のような新しい方法に注目が集まっている。しかし、これらの方法の良い面と悪い面を知り、正しく行うことが求められている。日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏が、第41回日本美容皮膚科学会学術集会の講演で、最新の研究や実用化について語った。

若返りの尺度「エピジェネティック・クロック」

 ヒフコNEWSでは日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏のインタビューをお送りしているが、大きな流れとして、老化を防ぐアンチエイジングから一歩進んで、時計を巻き戻す若返りへと主眼が移ろうとしている。

 日本抗加齢医学会では、「老化は病」をテーマとして、運動、栄養、睡眠、環境など、ライフスタイルに関連した要因に注目して、老化防止や若返りの問題に取り組んでいる。

 山田氏が特に注目するテーマの一つとして「エピジェネティック・クロック」がある。こちらはヒフコNEWSの記事で伝えたこともあるが、エピジェネティック・クロックとは、遺伝子のオンオフをコントロールする「DNAのメチル化」と呼ばれるDNA変化に着目して、この変化から私たちの体の年齢(生物学的年齢)を知ることである。

 エピジェネティック・クロックに注目すると、若返りの治療をしたときにそれが有効かどうかも示すことができる。実際にメチル化の程度は若返りにつながることも確認され始めている。若返り研究の第一人者として知られる米国ハーバード大学のデイビッド・シンクレア氏の研究グループは2020年、メチル化の状態を変化させることで、緑内障のマウスの視力回復が実現できる可能性を示した。

再生医療はルールに従うのが重要

山田秀和氏が講演。第41回日本美容皮膚科学会学術集会。(写真/編集部)

山田秀和氏が講演。第41回日本美容皮膚科学会学術集会。(写真/編集部)

 山田氏によると、アンチエイジングや若返りの治療については、その効果が完全に分からないものもある。細胞療法やエクソソームといった再生医療関連の治療が、美容医療分野では盛んに行われているが、山田氏はこれらは、さまざまなリスクがある点に注意を促す。

 再生医療は「安確法(再生医療法)」に基づいて、リスクの度合いによって分類されている。実施に当たっては倫理委員会などの審査を経て実施するのが望ましいと指摘した。

※「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」のそれぞれ略称である。

 再生医療は、一般的な医薬品のように薬機法に基づく承認を受ける前に行われていることが多い。承認を受けるためには、臨床試験を行って、有効性や安全性をステップを踏んで証明する必要がある。山田氏は、承認される前の再生医療を行うに当たっては、将来の診療試験を視野に入れて実施している位置づけにするのが良いという考えを示した。いつまでも有効性や安全性が曖昧なまま続けるべきではないという見方だろう。

※「薬機法」は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」

 さらに、再生医療がどのように行われるべきかについては、いくつかの関連する法律がある。山田氏はこれらの法律を理解することが不可欠であると強調した。安確法(再生医療法)、医療法、医師法があり、再生医療の専門家の意見を聞くことも大切と、山田氏は述べた。

NMNの点滴は自己責任

 若返りの効果が注目されるNMNについては、効果がまだ定まっていない点を指摘した。20年3月に厚生労働省が食薬区分を見直し、NMNは「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(非医薬品リスト)に入った。これはNMNが人気となるきっかけになったが、山田氏は、良い意味でとらえると、効く可能性が高いとも考えられるが、悪く言うと、危険性があるかもしれない。

 NMNのサプリメントとして内服するのは用量を注意したら問題ないが、一方で、点滴については原末がどこから作られたかなどに気を付けるべきだと指摘。その利用については医師が自己責任で使う必要があると説明した。

 このほか新しい治療についてはルールを意識する重要性を説いた。例えば、再生医療は使われる細胞の種類ごとに分類できるので、それに応じた対応が求められる。脂肪幹細胞は「第2種再生医療等」、自分以外の人から移植される細胞(他家細胞)は「第1種細胞医療等」などがある。また、培養上清は細胞が含まれないので分類できず、だから自由というとらえ方もあるが、事故が起こったら100%(医師の)自己責任であると述べた。

 これからの時代、老化に関連する病気と同じように、老化そのものを病気として扱う考え方が強まる可能性もある。そうなった場合、老化を測定する明確な尺度を持てるようにすることと、治療がデメリットよりもメリットになるか、注意していくことが重要になりそうだ。

参考文献

「見た目の大切さ」とは?──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語るVol.1
https://biyouhifuko.com/news/interview/1082/

美容医療と美しさ──美容医療の第一人者 日本抗加齢医学会の山田秀和理事長と語る Vol.2
https://biyouhifuko.com/news/interview/1100/

美容医療の新常識「エピジェネティック・クロック」が教える、あなたの本当の年齢
https://biyouhifuko.com/news/japan/2078/

再生医療連載vol.1 日本独自の再生医療のルールを解説、知っておきたいこと
https://biyouhifuko.com/news/column/958/

○食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc4935&dataType=1&pageNo=1

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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