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美容医療で重みを増す倫理問題、日本を含むグローバルの声、アラガン・エステティックスが美容医のインタビュー集を発表

カレンダー2024.3.27 フォルダー 海外
美容医療に求められる倫理とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容医療に求められる倫理とは?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容医療において倫理の重要性が増している。具体的にどのように倫理を実践するかが課題になっている。

 アラガン・エステティックスは2023年7月から11月にかけて、世界中の美容医にインタビューを行い、「Moving the Needle on Ethics」と題したインタビュー集をまとめ、3月、モナコで開催された「Anti-Age Medicine World Congress (AMWC)」で発表した。

 このインタビュー集は医療関係者を主な対象にしているが、施術を受けるか検討する人にとっても、適切な施術や医療機関を選ぶ上では有益と考えられそうだ。

美容医療の倫理基準が求められる時代

規制強化を進めるオーストラリア。(写真/Adobe Stock)

規制強化を進めるオーストラリア。(写真/Adobe Stock)

 アラガン・エステティックスによると、25年までに年間2300万件のフィラー治療、1460万件の身体への施術が実施される見通しで、美容医療の急速な成長の中で、倫理に関する話題が増えている。この状況に対応するため、同社では「Aesthetics-Ethicsプログラム」=美容倫理プログラムと呼ぶ、倫理に関した活動を推し進めていくという。

 その一環として今回、公開したのが世界の美容医に対するインタビュー集「Moving the Needle on Ethics」。同社の製品であるフィラーを注入する針の動き(move the needle)と、倫理にも働きかけていくという姿勢を掛け合わせたタイトルといえるだろう。このインタビュー集には、英国、オーストラリア、サウジアラビア、ブラジル、スイス、米国、カナダ、中国、日本の医師が登場し、各国およびテーマ別に課題を語っている。インタビューでの談話が掲載された医師と、その国とインタビュータイトルは次の通りだ。

医師 インタビュータイトル
ジョンキール・シャントレー医師(Dr Jonquille Chantrey) 英国 倫理的羅針盤を定義する: 倫理の心理学
カーラ・マクドナルド医師(Dr Cara McDonald) オーストラリア 規制を超えた倫理
ハイサム・ジャムジョーム医師(Dr Hytham Jamjoom) サウジアラビア 医師患者教育の重要性を認識する
マルセル・ヴィニシウス医師(Dr Marcel Vinicius) ブラジル 正しい製品、正しい患者、正しい時期
マルヴァ・サファ医師(Dr. Marva Safa) スイス 若い患者との効果的なコミュニケーション
カヴィタ・マリワラ医師(Dr. Kavita Mariwalla) 米国 ソーシャルメディアにおける誠実さの証明
シャノン・ハンフリー医師(Dr Shannon Humphrey) カナダ 患者とのコンサルティングを成功させるために
ソフィー・ショッター医師(Dr Sophie Shotter) 英国 国(公的)医療システムのサポート
張余光医師(Dr. Zhang Yuguang) 中国 中国での真の連帯の倫理的な影響力
加藤聖子医師 日本 医療従事者のための美容教育の強化

 特に長いページが割かれていたのは、ブラジルのマルセル・ヴィニシウス医師とオーストラリアのカーラ・マクドナルド医師のインタビューだった。

 ブラジルのマルセル・ヴィニシウス医師は美容医療を選ぶときの倫理的な課題について述べている。具体的には、ソーシャルメディアの過度な画像フィルターが現実の自分自身を受け入れることを困難にして、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすと指摘する。「実際の自分の姿を受け入れにくくする原因となり、自尊心の低下につながる可能性がある」とヴィニシウス医師。「フィルターの使用はメンタルヘルスに悪影響を及ぼし、非現実的な美の基準を作り出すだけでなく、年齢、人種、性別に関する偏見を強化する可能性がある」とヴィニシウス医師は警鐘を鳴らす。

 オーストラリアのカーラ・マクドナルド医師は、オーストラリアにおける美容医療の規制強化について言及している。オーストラリアは美容医療の施術者の資格や宣伝広告などへの規制強化の策を次々と打ち出している。

 そうした中でマクドナルド医師は、非外科的治療に対する安全対策強化や、施術前のインフォームドコンセントの重要性を説明している。「オーストラリアの規制の目的は、患者が総合的な評価や他の選択肢を検討することもせずに、誤解や誘導によって施術を受けるリスクを減らすことにある」(マクドナルド医師)。マクドナルド医師のインタビューのタイトルは規制を超えた倫理であり、規制されなくとも、倫理観を持って施術を受ける人たちを中心に必要な施術を考えることの重要性を説く。

 ヒフコNEWSでも紹介しているが、例えば、オーストラリアでは、フィラー関連の広告が全面禁止となる方針が示されている。マクドナルド医師のいう「誘導の影響を排除する規制」強化といえる。このようなオーストラリアの規制強化は倫理を重視する観点からも重要で、今後もオーストラリアの動きが注目されそうだ。

美容医療は、倫理的な課題どう対処?

美容医療の倫理を大切に考える動き。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容医療の倫理を大切に考える動き。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 インタビュー集の終章では、美容医療を実践する上で倫理面の土台を築くためのポイントが掲げられた。

  • 絶えず教育すること→施術者と施術を受ける人たちの双方に啓蒙やトレーニングの機会を継続的に提供する。
  • オープンなコミュニケーション→透明性のある、信頼に基づいたコミュニケーションを通じて、施術者と施術を受ける人との間の理解を深める。
  • 美とエステティックスにおける個性→個性を重視し、パーソナライズされたカウンセリングと治療を行う。
  • 科学的な厳格性→科学的な根拠に基づき、品質と安全性を伴った製品を使用する。
  • すべての中心には施術を受ける人たちの安全→安全を最優先事項とし、倫理的な課題に対処しながら質の高い診療を提供する。

 これらの原則は、アラガン・エステティックスが進める「Aesthetics-Ethicsプログラム」の核心になりそうだ。こうした活動を続けることは、美容医療をより良いものにするためには重要と考えられる。今後、引き続き注目される可能性はある。ヒフコNEWSではインタビュー集「Moving the Needle on Ethics」の談話から、引き続き各国の抱える倫理面の課題を伝える。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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