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英国政府、 大量の不正フィラー製剤を押収 非医療者による施術に懸念、英国美容医療学会が規制強化を要求 世界で発生する不正美容医療の事件

カレンダー2024.5.20 フォルダー 海外
BBCで報道。(写真/Adobe Stock)

BBCで報道。(写真/Adobe Stock)

 2024年5月、英国で美容医療に使われる製剤の不正品が押収された。これを受けて、英国美容医療学会(BCAM)が規制強化を求める声明を発表している。

 背景には、英国の独特な規制の仕組みがあるようだ。

大量の不正な製品が押収される

注射針。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

注射針。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 事件→英国政府の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)がグラスゴーで数千ポンド相当の未承認製品を押収
  • 押収品の内訳→400個近いフィラー剤、320本の針やカニューレ、180個以上のボツリヌス療法の製剤
  • 承認状況→いずれも国からの承認を得ていない製品
  • 使用予定者→医療専門家以外の人々が使う予定だった可能性
  • リスク→安い非正規品の使用により、感染症や肉芽腫などの合併症リスクが高まる

 今回、英国スコットランドの都市グラスゴーで、英国政府の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)が数千ポンド(日本円で100万円前後と見られる)相当の未承認製品を押収した。

 押収された製剤の内訳は、400個近いフィラー剤、320本の針やカニューレ、さらに180個以上のボツリヌス療法の製剤。いずれも国からの承認を得ていない製品だった。

 英国美容医療学会によると、これらは医師などの医療専門家が使うために保管されていたわけではなく、医療専門家以外の人たちによって使われる予定だった可能性があるという。

 BBCの報道によれば、英国では、「ポップアップクリニック」と呼ばれる形態で、安易な美容医療が広がる状況があるという。不正な製剤を使うことは違法であるものの、一方で、英国政府の示している文書によると、非外科的治療のライセンス制度が存在し、このライセンスを取ることで医療関係者でなくともフィラー注射などの非外科的治療を行うことができる状況もある。

 英国美容医療学会は、法律の欠陥があり、不正な製品が出回りやすいと指摘する。「悪徳な施術者が、安い非正規品を使い、一般の市民を危険にさらす結果につながっている。そのような製品は、感染症や肉芽腫などの合併症のリスクを高める」(同学会)。

 学会評議員の医師ネスター・デモステノス氏は、押収された製品について「非医療専門家によって一般市民に使用される予定だった可能性がある。非医療者は、美容医療における診断、評価、治療のための訓練を受けていない。結果として合併症が大幅に増加している。組織壊死、敗血症、麻痺、死亡はすべて、間違った人々が安全でない製品を注射することから生じるリスクである。これは止めなければならない」と指摘する。

医療専門家以外も非外科的治療のライセンスを取れる

英国の規制は甘い。(写真/Adobe Stock)

英国の規制は甘い。(写真/Adobe Stock)

  • 政府の規制→英国政府は美容医療の施術者を規制することに消極的との指摘
  • 美容医療の位置づけ→美容医療は通常の医療とは異なる位置づけにある
  • 規制強化を求める声→ライセンス制はあるが、安全性に対する規制強化を求める声がある

 英国では、政府は美容医療の施術者を規制することに消極的だという。同国では医療が基本的に無料で提供されているが、美容医療は国が提供する医療の対象外になっている。こうした状況から、美容医療は通常の医療とは異なる位置づけにある。国内に前述のライセンス制があるとはいえ、一方で学会では、政府に対して安全を最優先として規制強化を求めている。

 ヒフコNEWSでは、英国での合併症や後遺症の増加について伝えている。国の医療を運営しているNHS(国民保健サービス)は美容医療の合併症や後遺症に対応することを拒否する場合もあり、それも問題になっている。

 日本を含めて国際的に非医療専門家による美容医療が事件になっている。美容医療を誰が担い、トラブルが起きたときにどのように対処するか、英国の対策は他国にも参考になるかもしれない。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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