米国フロリダ州で、無免許で美容外科手術を行ったとして、メディカルスパの関係者4人が逮捕された。米国では、美容医療とスパを組み合わせたメディカルスパが増加しているが、適切な医療が提供されていない可能性が指摘されており、問題になりつつある。
医師が不在の施設で脂肪吸引
米国の報道によると、摘発されたのは、フロリダ州ポート・セント・ルーシーのCosmetica Plastic Surgery and Anti-Aging。メディカルスパと呼ばれる施設で医師免許を持たない偽医師が脂肪吸引、豊尻術であるブラジリアン・バットリフト(BBL)、豊胸手術を手掛けていた。手術の失敗によって感染症が発生するなどの健康被害も引き起こしていた。
報道によると、このメディカルスパでは施設の設立当初は医師が在籍していたものの、その後、医師が施設を去り、無免許のスタッフが運営を引き継いでいた。その後も幅広い美容外科手術を提供したが、既に閉鎖済みのウェブサイトのスタッフ紹介には医師の名前がなく、公然とでたらめな治療が続けられていた。
このような治療ができた背景には、免許がなくても美容医療の手技を学べるような仕組みが南米のコロンビアに存在したこともあったようだ。無免許のオーナーは同国で脂肪吸引のトレーニングを受けていたことが伝えられている。
同メディカルスパは、2022年にフロリダ州の捜査当局により摘発され、同年に医療過誤で訴訟も起こされている。
米国で増加するメディカルスパの問題
メディカルスパに関連して、今年4月には米国南西部のニューメキシコ州で「ヴァンパイア・フェイシャル」という血液を使った治療で使われる針を介してHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染が広がるという事件が明るみに出た。
これも無免許で営業を続けていたメディカルスパで健康被害が発生した。同スパでは、器具を消毒するために重要な高圧滅菌器「オートクレーブ」が見当たらないなどの衛生上の問題が発覚していた。
メディカルスパは美容医療とリラックス目的のスパを融合させた施設として増加しているが、学会認定の医師が所属していなかったり、医療責任者が施術の現場にいなかったりする問題点が指摘されている。一般に施術スタッフの経験が不足し、提供される医療の質が低い可能性もあるとされる。
メディカルスパでは主に非外科的治療が提供されているとされているが、今回のフロリダ州で逮捕者を出した事件では、美容外科手術が行われており、しかも施術者が無免許だったということで、とりわけ極端なケースだったとも見られる。逮捕者が出たことで、米国で増加するメディカルスパの問題は従来以上に注目されることになるだろう。
また日本でも完全に違法な状態で無免許者によるフィラー治療などの非外科的治療が摘発される事例が相次いでいる。これは主に外国籍の人たちの間で広がっているものだが、美容医療を受ける際に施術者の資格に注意することは重要だ。