エクソソーム療法は、細胞の再生や老化防止といった美容医療の新たな手段として注目を集めているが、その効果や安全性を巡る議論が日本国内外で活発化している。
オーストラリアでは、この治療法を提供する美容クリニックが増える中、効果を裏付ける科学的データの不足や規制の整備が求められている。
2024年10月9日、オーストラリア美容皮膚科学アカデミー(AACDS)は、エクソソーム療法の現状と課題を報告し、治療の可能性とともに課題を指摘した。
美容医療におけるエクソソームの根拠不足
エクソソームは、細胞から分泌される粒子の一種。細胞同士がシグナルを伝達し合う機能を持っている。これにより組織修復や抗老化作用が期待され、近年医療分野での応用が検討されている。その一つに、美容医療分野がある。幹細胞や血小板から抽出されたエクソソームが、肌の若返りや再生医療に有望な治療法として期待されている。
AACDSによると、効果と安全性に関する課題は多く残されている。エクソソームは細胞を直接使用しない「細胞フリー」の治療法として、一見すると安全性が高いように思われるが、製品の標準化や品質保証の面で未解決の問題が多い。
特に、エクソソームの分離や製造技術が確立されていない現状がある。そのため製品ごとに品質や効果が異なる可能性が高い。AACDSはオーストラリアにおける臨床データの不足や、国内規制機関である「Therapeutic Goods Administration(TGA)」による正式な承認が得られていない点を問題視する。
エクソソーム療法の普及には、製品の高コストと標準化の課題が大きな障壁となっている。エクソソームの製造は高度な技術を要するため、治療費が高額となり、一般的な美容治療と比較して経済的負担が大きい。また、製造過程での汚染リスクや、エクソソームの品質維持のための特殊な保存条件が必要であることから、広範な普及にはまだ時間がかかるとされている。
日本でも25年めどにガイドライン整備
エクソソームの課題は日本でも同様に見られている。ヒフコNEWSが以前に伝えたように、日本では2024年7月に厚生労働省がエクソソームの自由診療に対して注意喚起を行い、エクソソーム製品が「未承認」であり、安全性と効果が確立されていないことを指摘した。また、25年を目途にエクソソームの品質管理に関するガイドライン整備が進行し、日本再生医療学会もエクソソームの適正利用に向けたガイダンスを発表している。
今後、日本では再生医療に関連する規制の強化が予想される中、エクソソームを用いた治療は医療の分野で注目されると考えられる。普及には国際的な研究進展や規制整備が欠かせない。慎重な検討と、効果や安全性を裏付けるさらなる臨床試験が求められる。