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美容医療のトラブルから身を守るチェックポイント
番組では、美容医療で合併症などのトラブルが起こった報告数について、3年前で1500件以上あったと紹介していました。美容医療によるトラブルは、とても身近なものなのです。
番組で紹介されていた、美容医療のトラブルから身を守るためのチェックポイントは3つ。
美容医療は医療機関で受けることを大前提として、美容施術を受けるときには次のポイントをしっかり頭に入れて確認するようにしてください。
医師のキャリアを確認する
クリニックの公式サイトでは、院長や在籍する医師のキャリアが紹介されています。クリニックを受診する前に、医師が十分なキャリアを持っているかどうか、確認しておきましょう。
特に美容医療においては、以下の項目が重要です。
- 形成外科医・皮膚科医としてのキャリアが長く、経験が豊富である
- 美容医療に関する学会に所属している
医師としてのキャリアがはっきりしていない、また医師の情報が公表されていないクリニックは、選択肢から外してもよいといえそうです。
施術内容を自分で説明できるか
自分が受ける施術の内容を、自分で説明できるようになりましょう。施術を受けることで得られるメリットはもちろん、どのようなリスクがあるのかを医師からしっかりと聞き、理解することが大切です。
また、ほかの治療も選択肢として提示されたうえで、自分でその治療を選んでいるでしょうか。改善が期待できる複数の治療方法を教えてくれる医師がいるクリニックで、信頼関係を築きながら施術を選びましょう。
一度持ち帰り、情報を調べて冷静に判断する
どんな治療方法やクリニックでも大切なのが「その場で決めない」ことです。治療方針や施術内容を一度持ち帰り、自分で治療について情報を調べることで、より冷静な判断ができるようになります。
クリニックによっては、カウンセリングと同時に施術・手術をすることで安くなる、未承認の機器・製剤だと安くなると説明されることもあるでしょう。しかし、即決したり未承認の施術を選んだりしてトラブルが起こった場合、その治療にかかる料金や時間が莫大なものになる可能性は否定できません。
美容医療を選ぶときはコストだけで考えず、安全性を確かめたうえで納得できるまで相談し、自分で施術を選ぶことが大切です。
美容医療のトラブルが起こる背景
医師や看護師が治療・施術をおこなう美容クリニックでも、さまざまなトラブルは報告されています。本来、安全性が高いはずのクリニックで、なぜトラブルが起こるのでしょうか。
番組で紹介された、トラブルが起こる背景には次の4つがありました。
美容医療の多くはあくまで「自由診療」である
美容クリニックで受けられる治療・施術のほとんどは、症状にあわせて保険で治療できる保険診療ではなく、自費で受ける「自由診療」です。国内外で新しい治療法や治療機器が生まれる一方、施術についての安全性は十分に仕分けがされていません。
通常の医療では標準医療、先端医療のほか、危険な医療といった区分が取り入れられ、明確に仕分けられています。しかし自由診療では、そうした仕分けはまだまだ不十分です。
さらに、国内では未承認の医薬品や機器もあります。未承認の治療については安全性が確認されていない場合もあり、よりリスクが高くなるといえるでしょう。
調査の回答率が低く実態が見えづらい
美容医療で起こったトラブルについては、クリニックなどに実態調査をおこなっています。しかし実態調査の対象からは、2.3%しか回答されていないのが現実です。
美容医療の業界では、トラブルの実態や治療で起こりうるリスクなど、ネガティブな情報を嫌う傾向にあります。ネガティブな情報が多いほど、施術を受ける患者さんが減ると考えているからです。
合併症などのトラブルを減らし、治療・施術の安全性を高めるには、美容医療業界の意識を変えることも必要なのかもしれません。
美容医療がビジネス化している
美容医療業界がネガティブな情報を嫌うのは、業界がビジネス化していることにも原因があるといいます。日々、顧客獲得競争がおこなわれており、施術によるメリットを大きく強調し、リスクを隠して顧客を得ようとしているのです。
番組では、大手クリニックで勤務経験のある医師が、クリニック内における強引な勧誘について証言していました。
カウンセリングをしたその日のうちに契約を促さないと、クリニックの売り上げに繋がりにくく、リスクについてていねいに説明する医師だと患者が逃げるといいます。そのため、真面目な医師ほどクリニック内での評価が下がるというのです。
そのクリニックでは、リスクの説明は利益を生まないため、軽視されていたそうです。医師は、リスクについて理解してもらう、医療行為として当たり前のことができないのがつらかった、と話していました。
市場拡大による弊害も
また番組では、美容医療の市場拡大によって弊害も起こっていると説明していました。
特に大都市圏では、既存のクリニックに加えて、次々と新しいクリニックが開院して数を増やしています。そのため医師が不足し、経験が少ない医師を採用しているクリニックも少なくありません。
患者さんの回転を上げるため、安全教育が十分にできていないクリニックもあると考えられています。
美容医療診療指針(ガイドライン)で確認を
美容医療業界では、学会に所属する現役の医師や研究者によってとりまとめられている「美容医療診療指針」、通称「ガイドライン」があります。治療について施術内容が有効であるか、また安全性はあるかがわかるようになっている指針です。
ガイドラインでは、それぞれの治療法を次の4段階に分類しています。
- 治療を希望する患者に、行うことを強く推奨する
- 治療を希望する患者に、行うことを弱く推奨する
- 行わないことを強く推奨する
- 行わないことを弱く推奨する
これらのガイドラインは、学会の公式サイトなどで公表されており、誰でも見られるようになっています。これから受けようと考えている治療について、ガイドラインで「行わないことを(強く・弱く)推奨する」と記載されている場合、施術をすぐに決めないほうがよいでしょう。
カウンセリング後は、治療についてガイドラインで確認してみてください。
まとめ
『クローズアップ現代』で放送された、美容医療によるトラブルから身を守るポイントについて紹介しました。
トラブルを避けるためにはクリニック選びにくわえ、治療を自分で選んで確認することが大切です。ガイドラインを活用しながら、紹介したポイントをしっかり確認して、納得できるクリニックと治療法を選んでくださいね。