マスク生活が長引く中、美容クリニックではレーザー治療を受ける女性が増えているようです。顔のシミでお悩みの方は、レーザー治療を受ければ今あるシミが全部きれいに消せるのか気になるところだと思います。今回はシミの種類から効果的な治療法まで、シミ治療の基礎知識についてご紹介します。
勝手な判断は禁物!シミ治療はシミの適切な診断から
顔のシミの種類
「シミを消したい!」と思ったら、まず押さえておかなければいけないポイントとしてシミの種類に合った治療法を選択することが重要です。そのためにはシミの種類を特定する必要があります。シミには様々な種類があり、それぞれ異なる特徴があります。
自己判断のみで正確な判断をするのは難しいですが、シミが現れた時期や年齢、色や場所などによってある程度はシミの種類が特定できることが多いです。シミの種類別に特徴をご紹介します。
シミの種類 | 色 | 特徴 |
老人性色素斑 | 薄茶色〜茶色 |
・頬や手の甲など紫外線が当たりやすい場所にできやすい |
肝斑 | 薄茶色 |
・額、頬周辺に左右対称にできることが多い |
そばかす | 薄茶色~茶色 |
・鼻、頬の周りを中心に散らばったように小さな斑点状に出る |
炎症後色素沈着(PIH) |
薄茶色~黒色 |
・怪我、やけど、ニキビなどの炎症が起きた後にできる |
ADM | 薄茶色〜茶色 灰色・青 |
・両頬、まぶた、額、鼻などにいくつかまとまってできる |
太田母斑 | 青紫〜グレー |
・額、眼瞼(まぶた)、頬、顔面片側に青みがかった点状の斑ができることが多い |
扁平母斑 |
薄茶〜茶色 |
・全身どこにでもできる |
老人性色素斑
シミの代表格といえるほど発症するケースが多いシミです。早ければ20代から気になり始める人も多いでしょう。老人性色素斑ができてしまう主な原因は、「紫外線」と「肌の老化」です。若いうちはシミとして現れず、時間の経過とともに症状が現れます。紫外線を大量に浴びてしまったり、老化による肌の代謝が落ちてしまったりすると、メラニンの生成と排出のバランスが取れず色素が沈着して肌に残ってしまいます。これが、老人性色素斑のシミになります。
肝斑
30代~40代以上の女性に多く見られるシミで、両頬や額などに左右対称にでき、シミの境界線がぼやけており、大きさや形がバラバラなことが特徴です。原因の一つとして、女性ホルモンとの関連が指摘されています。妊娠、出産時期にできてそのまま改善しないケースが多く、更年期やピル内服中などに出現することもあるといわれているのです。また、紫外線だけでなく、ストレスや摩擦刺激によって炎症が強くなり、悪化するケースもあります。
そばかす
小さなシミが鼻や頬を中心に広範囲に現れます。遺伝によってできることが多く、幼少期からできる場合もあります。他のシミとは反対に加齢とともに薄くなっていくこともありますが、紫外線を浴びると濃くなるといわれています。
炎症後色素沈着(PIH)
傷や虫刺され、赤〜黄ニキビといった肌に赤みが強く出るような炎症をきっかけにして過剰に作られたメラニンが色素沈着を起こし、シミになったものです。通常は半年程度で自然に薄くなっていきますが、ターンオーバーの乱れや過度な紫外線の影響により、長期間そのまま残ることもあります。炎症後色素沈着の発症に年齢は関係ありません。
ADM:後天性真皮メラノサイトーシス
あざの一種で、額の両側や頬骨部にいくつかまとまって出現します。20代~30代で発症することが多いようです。症状が軽度のうちは薄茶色をしていますが、メラニンの蓄積によって徐々に灰色から青みがかった色へと進行していきます。初期は肝斑と間違われやすいのですが、ADMと肝斑では治療法が異なるため正しい診断が重要です。ADMが発症する原因はまだ解明されていませんが、「遺伝・加齢・紫外線・ホルモンバランスの崩れ」が関係しているのではないかといわれています。
太田母斑・扁平母斑
太田母斑は顔の半分、特に目の周辺に出る先天性の青いあざのことをいいます。生後1年以内くらいから色が出始め、成長とともに色が濃くなることが多いといわれています。
扁平母斑は体のどこにでもでるいわゆる茶あざです。生まれつきあることが多いですが、思春期に目立ってくる場合もあります。太田母斑、扁平母斑ともに保険適応でレーザー治療を受けることができますが、症状によっては自由診療になることもあるため、診察時に確認しておくとよいでしょう。
シミ治療は適切な診断から
「肝斑と思われるシミを消したくて、ずっとサプリメントを飲んでいるが変化がない」といった声をよく耳にします。特徴があるとはいえ、シミの正確な見極めは容易ではないため、自己判断でシミのケアを始めても、高い効果は期待できなないでしょう。
実際、シミだと思っていたらあざだったというケースもあります。また、目立つシミの下に肝斑が広がっているなど、複数の種類が重なって出現していることもあります。
気になるシミがあるなら、まずは医療機関で診断してもらうとよいでしょう。美容クリニックの無料カウンセリングを利用して、複数の治療方法を提案してもらう方法もあります。シミは種類によって治療方法が大きく異なるため、医師による正確な診断が治療のカギであるともいえるのです。
美容クリニックの最新シミ治療
レーザーだけではない最新のシミ治療
シミ治療といえばレーザーを照射して、しばらくかさぶたをはがさないようにテープで保護する、という治療方法を想像される方が多いかもしれませんが、昨今様々な機器が開発され、クリニックのシミ治療はかなり進化しています。ダウンタイムがほとんどなく、緩やかに症状が改善していく光治療など、一人ひとりの症状や希望に合わせて治療方法を選ぶことが可能です。
レーザー治療で消えないシミもある
レーザー治療なら短期間でシミが消えると期待してしまうところですが、肝斑のように一般的なシミ治療に使用される頻度の高いレーザーを用いた治療が合わないシミもあります。また、レーザー治療の効果が高い老人性色素斑のシミであっても、1回のレーザーで取り切れない場合や、数年かけてシミが再発するケースもあります。
ダウンタイムの少ないレーザー治療「ピコレーザー」
シミ治療で一般的に使用されているQスイッチレーザーは「ナノ秒(10億分の1秒)」でレーザーを照射しますが、ピコレーザーはさらに短い「ピコ秒(1兆分の1秒)」で照射できるレーザーです。極めて短い時間でレーザーを照射し、衝撃波でメラニンを粉砕するため、熱発生が少なく、痛みやかさぶたといった肌ダメージを抑えることができるため、従来よりも色素沈着のリスクが少ないといわれています。比較的新しい治療法ですが、特にピコトーニングはレーザー治療でありながらダウンタイムがほとんどなく、テープ保護も不要という点から、次世代のレーザー治療として注目されています。
「肝斑」は治療が困難?
トラネキサム酸を配合した医薬品のCMで広く知られるようになった肝斑ですが、改善しにくいシミの一つです。
ほかのシミには有効とされる治療を肝斑に対して行うと、症状が悪化することがあります。
また、肝斑とほかのシミが合併していることも多いため、治療が難しいともいわれているのです。
肝斑治療としては、肝斑を悪化させない程度の弱い出力で繰り返しレーザーを照射するレーザートーニングや、肝斑用の出力に設定されている光治療で穏やかに作用させていく方法が挙げられますが、肌状態によっては施術の効果が十分に得られない可能性もあるといわれています。今のところ、肝斑には内服薬・外用薬とレーザートーニングを併用した治療が最も有効であるとしているクリニックが多いようです。
マイクロニードルRF機器によるシミ・肝斑治療について
そんな中、シミや肝斑への効果について注目が高まっているのが、マイクロニードルRF機器「ポテンツァ(POTENZA)」と「シルファーム」です。マイクロニードルRFとは、肌に極細のニードル(針)を刺入し、真皮層に直接RF(ラジオ波・高周波)を流し熱刺激を与える治療を指します。創傷治癒力によりコラーゲン生成を高めながら、「メラノサイト」の働きを抑え、シミや肝斑の原因であるメラニンの過剰な生成を防ぐ効果が期待できるのです。
ポテンツァは従来のマイクロニードルRF機器とは異なり、10種類以上あるチップ(機器の照射面に装着する複数のマイクロニードルが集まっているもの)から肌状態や悩みに合わせ、最も適している針本数や深さのチップを使用できるという特徴があります。
さらに、真皮層まで薬剤を浸透させる高いドラッグデリバリーシステムにより、理想的な肌に導きやすくなるのです。
シルファームはメラニンを作るメラノサイト周辺の毛細血管へアプローチし、シミや肝斑の原因となるメラノサイトへの栄養供給を断つことでメラニン生成を抑制する効果が期待できます。また、肝斑の生成だけでなく悪化リスクまでを最小限に抑えられると考えられています。レーザー照射が難しいまぶたにも施術可能なため、シミと同時にまぶたのたるみもケアしたい方にも対応できる機器なのです。
ポテンツァやシルファームによる肝斑への効果については、まだエビデンスが確立しているわけではありませんが、今後さらに注目度が高まるかもしれません。
内服薬・外用薬でのシミ治療
皮膚科での治療と平行して、自宅でも体の内外からケアすることで、シミの早期の症状改善が期待されるため、レーザーなどのシミ治療を受けた方に内服薬や外用薬の治療を併せて勧めることがあります。また、肝斑治療の場合、まずは内服薬でシミ治療をスタートして経過を観察するという方法もあります。ただし、内服薬や外用薬による治療は、効果が出るまでに数カ月程度の時間がかかります。
内服薬としてはシミ全般に効果があるとされるビタミンC(シナール)や、特に肝斑に対して効果を発揮するといわれるトラネキサム酸(トランサミン)、ビタミンCとの併用で相乗効果のあるビタミンE(ユベラ)やLシステイン(ハイチオール)などがあります。
外用薬でのシミ治療としては「ハイドロキノン」や「トレチノイン」の処方があります。ハイドロキノンには、紫外線による影響でメラニン色素が作られるのを抑える作用、炎症を抑える作用があり、シミ全般の改善に適しています。トレチノインはメラニン色素を皮膚の外へ出す働きと、シワを改善し、肌の弾力を高める作用があります。
シミ治療を選ぶ際のポイント
治療を始めたいと思っても、「どの治療が自分に合っているのか分からない」「クリニックで進められるままに治療を選択するのは不安だ」という方もいらっしゃるでしょう。シミ治療を選ぶ際のポイントとして、それぞれの治療のデメリットを考えるとよいでしょう。老人性色素班であれば、ダウンタイムを許容できるかどうかによってレーザーかそれ以外の治療かに分かれます。また、トータルの金額や複数回通院できるか?などによっても治療が絞られます。
まとめ
顔にできるシミには種類があり、それぞれ効果的な治療方法が異なります。医師の診察を受けた上でシミの種類をの判別してもらうと安心です。診断だけであれば初診料のみで行ってくれるクリニックも多いので、無料カウンセリングを利用してみる方法もよいでしょう。
多少のダウンタイムがあってもマスクで隠せるので、今の時期はシミ治療に向いているといった声も聞かれます。ずっと気になっていたシミを、思い切って治療をしてみませんか。