セルフケアで治すのは難しい大人ニキビですが、クリニックに相談すれば、治療経験豊富な医師が、症状に応じた治療法を提案してくれます。
ニキビ跡が残らないように早期治療するのはもちろん、大人ニキビのできにくい状態に肌を整えることも期待できます。
今回は、クリニックで受けられる大人ニキビ治療には、外用薬、内服薬、ケミカルピーリング、イオン導入、機器を用いた治療法をご紹介します。
2021.09.09
ニキビ治療をクリニックでするメリットは?
段違いの効果
大人ニキビ向け市販薬はドラッグストアでも簡単に手に入るので、とりあえず市販薬を塗っておこう、という方も多いかもしれません。
ニキビの医学的な正式名称は「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」です。日本皮膚科学会がニキビのさまざまな治療方法を評価、ランク付けしている「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」という資料があります。
それによると、ニキビ治療薬は含まれる有効成分によって、効果に差があることが分かります。そして、市販薬の多くに炎症を抑える目的で配合されている「イブプロフェンピコノーム」の効果は、残念ながら「選択肢の一つ」という程度のランク付けでしかないのが実情です。
「強く推奨されるランクの薬=高い治療効果が期待される薬」で治療をするためには、皮膚科で医師の処方を受けるしかないのです。
専門家のアドバイス
専門家である医師には、症状が軽い患者さんから重い患者さんまで、たくさんの治療経験があります。ですから、ひとりひとりの肌の状況に合わせて、適切な治療法を見極めてくれるはずです。
悪化してしまったニキビから、ちょっと気になる程度のニキビ、ニキビの予防まで、まずは相談してみましょう。
クリニックならではの治療
クリニックでは、医師の処方が必要な、効果の高い薬による治療が受けられます。薬での治療は、健康保険が適用されます。
また、保険の適用外にはなりますが、ケミカルピーリングや光治療といった、クリニックだからこその、高い効果が期待できる治療法があります。
ニキビ治療、クリニック受診のタイミングは?
ニキビは、症状によって状態が異なります。
第一段階 毛穴に皮脂が詰まった「白ニキビ」「黒ニキビ」
第二段階 炎症を起こした「赤ニキビ」
第三段階 化膿した「黄ニキビ」
小さくて目立たないからといって白ニキビを放っておいては、いつ炎症を起こして赤ニキビになるかわかりません。その上、化膿してしまったとなったら、治るまでに時間もかかりますし、最悪、ニキビ痕が残ってしまう場合もあるのです。クリニック受診のタイミングは、「早いに越したことはない」この一言に尽きます。
ニキビそれぞれにあった治療法は?
外用薬 | 内服薬 | ケミカル ピーリング |
ビタミンC イオン導入 |
光治療器 | LED治療器 | |
白ニキビ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
黒ニキビ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
赤ニキビ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |
黄ニキビ | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
(◎とても効果的 ○効果あり)
外用薬
毛穴のつまりを改善する薬
厚くなった角質を薄くして毛穴を広げる作用を持つアダパレンが配合された「ディフェリン」や、古い角質をはがれやすくし、アクネ菌殺菌作用もある過酸化ベンゾイルが配合された「ベピオ」があります。
毛穴に詰まった皮脂が外に出やすくなるので、白ニキビ・黒ニキビに特に効果的です。
抗菌・抗炎症薬
アクネ菌やブドウ球菌を殺菌して炎症を和らげる、「アクアチム」「ダラシン」「ゼビアックス」があります。赤ニキビや黄ニキビに効果を発揮します。
毛穴づまり改善薬と抗菌薬を併用すると、治療の効果が上がります。
その一つ、過酸化ベンゾイルと抗菌薬が混ざった薬「デュアック」も、とても効果の高い薬です。赤ニキビの炎症を抑えつつ、白ニキビも目立たなくなり、肌がなめらかになります。
2021.09.09
体の内側から治療する内服薬
抗菌・抗炎症薬
炎症を起こしてしまった赤ニキビや、膿んでしまった黄ニキビには、「ミノマイシン」「ロキシスロマイシン」などの抗生物質が処方されます。症状が落ち着いたら、治療を次のステップへ進めることができます。
皮脂の分泌を抑える薬
ビタミンB2、B6、C には、皮脂腺の働きを抑制して、皮脂の分泌を抑える作用があります。新しいニキビの予防効果が期待できます。
漢方薬
漢方医学では「肌は内臓の鏡」といわれ、身体の内側の状態が、皮膚にあらわれると考えられています。ニキビができる根本的な原因を改善することを目的に治療が進められます。
ニキビそのものをよくしていく漢方薬として、次のようなものが処方されます。
- 白ニキビ・黒ニキビ 荊芥連翹湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁
- 赤ニキビ・黄ニキビ 荊芥連翹湯、十味敗毒湯、清上防風湯
- 月経前にできるニキビ 加味逍遥散、当帰芍薬散
ケミカルピーリング
肌にグリコール酸、サリチル酸などの薬剤を塗って、余分な角質を溶かし、毛穴からの脂の排出を促す治療です。
毛穴に詰まった汚れが取り除かれて黒ニキビが目立たなくなる効果、ザラザラとした白ニキビ肌がなめらかになる効果が期待できます。
同時に肌の再生を促すため、シミやくすみにも効果があり、肌のトーンアップが叶うのもうれしいポイントです。
ただし、炎症を起こしているニキビには刺激が強いので、注意が必要です。
施術前に肌の状態をしっかりチェックしてもらって、薬剤の種類や濃度を選んでもらいましょう。
グリコール酸 | サリチル酸マクロゴール | |
特徴 | サトウキビ由来 |
|
角質を溶かす力 | マイルド | 強い |
注意点 | 赤みやヒリヒリ感といったトラブルが、サリチル酸よりも起きやすい。 | アスピリンアレルギーの人は使用不可 |
メイク | 施術直後からフルメイク可 |
|
治療間隔 | 2週間に1回 | 4週間に1回 |
イオン導入
美容有効成分を、肌に浸透しやすくする治療法です。
肌に微弱な電流を流すことで、浸透しにくい有効成分をイオン化して、肌の奥深くまで届けることを目的としています。肌への浸透率は、手やコットンでつけた場合の数十倍から100倍と言われています。
ニキビ治療では、有効成分としてビタミンCが使用されています。ビタミンCには消炎・抗炎症作用、皮脂抑制作用があり、ニキビの炎症や赤みを抑えて、油っぽく目立つ毛穴を改善することが期待できます。
ケミカルピーリングで余分な角質を取り除いてからイオン導入をすると、更に効果的です。
機器を用いた治療法
光治療器(IPL)
IPLとは、Intense Pulsed Light(インテンス・パルス・ライト)の略で、メラニンやヘモグロビンといった色素や水分に反応する様々な種類の光を、束にした状態で肌に照射する光治療です。
ニキビへのIPLの効果は、①アクネ菌殺菌作用のある青色光、②ヘモグロビンに吸収されて、ニキビの炎症や赤みを抑える赤色光の相乗効果によるものです。また、光を照射された部分は50~60度になるので、ニキビの原因となるアクネ菌を殺菌するという効果もあります。有名なものに「フォトフェイシャル」などがあります。
ニキビの治療はもちろんのこと、メラニン色素にも作用するので、くすみの改善も期待できますし、光エネルギーによる熱作用で開いた毛穴もキュッと引き締まり、透明感のあるキメの整った肌になることが期待できるのもうれしいですね。
治療時には、赤みやシミのある部分は反応が強くなるため、パチンとゴムで弾かれたような痛みがありますが、我慢できる程度です。3~4週間に1回の治療が理想的です。
LED治療器「ヒーライトⅡ」
医療用のLEDを使用した治療法です。波長590nmと830nmの二つの光を肌に照射します。これらの光は近赤外線と呼ばれる波長で、皮膚の深いところまでエネルギーが到達するのが特徴です。
このエネルギーがアクネ菌を殺菌し、皮脂腺を収縮させて皮脂の過剰な分泌を抑えることで、ニキビを改善します。継続して受けることで、新たなニキビの予防にもなります。
それだけでなく、コラーゲンの生成やターンオーバーの促進、リンパの流れの促進と、うれしい効果が盛りだくさんです。コラーゲンの生成を促すことでニキビ痕の治癒を早める効果も期待できます。
フォトフェイシャルと違って、痛みがまったくないのも特徴です。1~2週間に1回の治療が可能なので、短期集中型の治療ができるのもうれしい点です。ケミカルピーリングやイオン導入と併用すると、より効果が上がります。
まとめ
今回はクリニックのニキビ治療についてご紹介しました。
健康保険適用のお薬による治療から、医療用LEDを用いた最新治療まで、ニキビの治療には様々な方法があります。治療のノウハウを熟知した医師は、あなたのお肌の強力な味方です。
「たかがニキビで…」なんて思わずに、早めにクリニックを受診して、正しく、キレイに治療しましょう。
記事監修
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山下真理子先生
京都府立医科大学を卒業して、医師に。 大阪市内で美容医療に携わりながら、医療教育にも従事。 コラムの執筆やモデル業の傍ら、17公式ライバーとしてライブ配信も行っている。