引き締まったお腹やくびれた美しいウエストは女性の永遠の憧れです。しかしダイエットを頑張っても、なかなか思うように減ってくれないのがぽっこりお腹の脂肪。痩せるために脂肪吸引を検討していらっしゃる方、ちょっとお待ちください!脂肪吸引の施術は近年著しい進化を遂げて、以前よりも身近で安全な手術となってきましたが、まだまだリスクもあります。そこで今回は、リスクを軽減して満足できる施術を受けるために、知っておきたい脂肪吸引のポイントをご紹介したいと思います。
ダイエットと脂肪吸引の違いってなに?
そもそも太っている人と痩せている人の違いは脂肪細胞の大きさが原因。成人で約400億個あるという脂肪細胞が、風船のように膨らんだりしぼんだりすることで「太った」「痩せた」という状態になります。脂肪細胞は、通常直径0.08mmほどの丸形の細胞ですが、脂肪を蓄えると約0.13mm(直径で1.3倍、体積で2.2倍)まで肥大化します。
ダイエットの場合は、この脂肪細胞を小さくすることで痩せますが、頑張って小さくした脂肪細胞も、ダイエットを止めるとまた大きくなり、リバウンドが起きる可能性があります。
一方、脂肪吸引では部分痩せができることがメリットのひとつです。それに加えて脂肪細胞そのものを除去するため、残った脂肪細胞が大きくなったとしても数が少なくなっている分太りにくくなり、リバウンドは抑えられます。ただし脂肪細胞の数が減っているのは吸引した所だけなので、太りにくくなるのもその部位だけで、体全体が太りにくくなるという訳ではないので注意しましょう。
【ダイエットの場合】 【脂肪吸引の場合】
(引用元:https://www.mizunomori.com/diagnosis/diet/diet-sub/)
お腹にある脂肪の特徴は?
お腹は脂肪がつきやすい部分ですが、脂肪は大きく分けて「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に分けられます。内臓脂肪は内臓のまわりについている脂肪なので、脂肪吸引することはできませんが、ダイエットや運動で比較的落としやすいと言われています。
皮下脂肪はさらに皮膚のすぐ下にある浅い脂肪層と、深い脂肪層「LFD(Local fat Deposit)」の2つに分けられます。
浅い層にある脂肪には血管や神経が通っていますが、LFDにはほとんどありません。このLFDはラクダのこぶと同じで飢餓状態に備えて蓄えられている脂肪なので、普通のダイエットではまず減りません。脂肪吸引ではこのLFDも除去することができます。
(引用元:https://www.lionshop.jp/contents/lactoferrin/)
(引用元:https://ace-clinic.com/shinryo/body_kyuin/asp/)
脂肪吸引について
脂肪吸引は1977年にフランスのイルーズ医師らが開発した、カニューレと呼ばれる細い吸引管を切開した小さな穴から挿入し、脂肪を吸引する「カニューレ吸引法」が元となっています。
脂肪吸引の施術法について
チューメセント法
チューメセント法(Tumescent Technique)は、1990年代にアメリカのクライン医師によって発表されました。生理食塩水に麻酔薬や血管収縮剤などを混合したチューメセント液を、吸引する脂肪量の1~3倍ほど皮下脂肪へ注入し、脂肪を柔らかくしてカニューレで吸引する方法です。ウェットメソッド法とも呼ばれ、従来のドライメソッド法と比較すると、注入した液によってかなり出血や痛みが抑えられるため、より効率的に脂肪吸引できるようになりました。
アキーセル
アキーセルはアメリカのMillennium Medical Technologies社が開発した脂肪吸引機器です。
アキーセル脂肪吸引では、カニューレが細かく前後に振動しながら、脂肪を柔らかくほぐして吸引していくため周辺組織へのダメージが抑えられ、痛みや内出血などのダウンタイムを軽減できると言われています。また吸引口が直径約2mmと非常に細いカニューレを使用するため、脂肪が細かい粒で吸引されるのが特徴です。細かい脂肪は脂肪注入に適しているため、吸引したお腹の脂肪を用いた脂肪注入と併用して行われることも多いようです。
細い吸引口ため細部の脂肪吸引には向いていますが、カニューレが前後に振動するため、皮膚の近くなどデリケートな部分を均等に吸引することには不向きといわれています。
ボディジェット
チューメセント液をカニューレの先からジェット水流で噴射することにより、より深くまで浸透しながら脂肪を分解し吸引していきます。水の力で組織を分離させるため、超音波による火傷や、カニューレの摩擦による周辺組織へのダメージなどのリスクが少ないとされています。皮下脂肪の約70%の除去が可能と言われていますが、線維質な脂肪や硬い脂肪を柔らかくするほどの威力は無いため、部位によっては不向きのこともあります。
ベイザー
カニューレの先端からベイザー波という超音波を出して脂肪を乳化し、柔らかくして吸引していきます。ベイザーでは約90%の脂肪除去が可能といわれ、脂肪の浅い層から深い層に至るまで全ての脂肪を吸引することができるとされています。また、カニューレの種類が豊富なため、お腹のようにデザインにこだわった部位への施術に向いているといわれています。さらに線維組織の多い硬い脂肪に対しても、他の吸引方法よりも効果が期待できます。
ベイザー波には止血効果もあるため体への負担が少なく、更に線維組織の構造を保ったまま吸引できるといった特徴があります。そのため術後の皮膚を引き締める効果があり、痩せた後も皮膚のたるみが起こりづらいとされています。
お腹で脂肪吸引できる部位は?
お腹の場合は脂肪のすぐ近くに内臓がありリスクも高いため、他の部位と比べて手術の難易度が高いといわれています。
上腹部(お臍からバストまで)
お臍より上は内臓脂肪の影響が出やすくあまり脂肪はありませんが、上腹部の脂肪は線維質で硬いという特徴があります。LFDはほとんど無いため浅い層の脂肪吸引が主となり、傷口が見えないようにお臍の中やわき腹などを小さく切開してそこから吸引していきます。
下腹部(お臍より下)
ぽこっと下腹が出ている人の中には内臓脂肪が原因の方も多くいますが、吸引できるのは皮下脂肪だけとなります。指で沢山お肉がつまめるタイプの方に効果的だと言われていますが、皮膚が薄いため吸引による凹凸も出やすいとされています。さらに、脂肪吸引で多くの脂肪を取りすぎると、余った皮膚がたるんで残ってしまう可能性もあるため、かなり医師の技術力が問われる部位です。そのため下腹部の吸引では肌質、吸引する脂肪の量、脂肪のついている部位の見極めがとても重要になってきます。たるみを予防するには、引き締め効果のあるマシンを扱っているクリニックを選ぶ、引き締め効果のあるサーミタイトを併用するのもひとつの方法だと言われています。
ウエスト・腰回り
魅力的なボディになるには、女性らしい丸みを帯びた腰や細いウエストラインがポイントとなります。ウエストは浅い層の脂肪ですが、腰回りはLFDが多くしっかり脂肪が取れる部位。だからといって吸引しやすい部位の脂肪ばかり除去すると、バランスが不自然になってしまいます。ウエストと腰回りの脂肪量を調整してメリハリをつけることで、キュッと引き締まって見えるウエストラインへと繋がります。
お臍周辺は線維質が多く面積も広いため、ちょっとした取りムラでも凹凸が目立ってしまいます。左右前後どこから見ても滑らかになるように丁寧な吸引が必要になります。
吸引量の目安、取りすぎに注意
お腹は脂肪の多い部位なので吸引量は多めになりますが、500~2000cc程度が目安です。人によって脂肪のつき方が違うため、吸引量が少なくても効果が得られる場合もあります。施術後に報告される脂肪の吸引量は、注入した麻酔液や血液も混在しているため、単純に脂肪のみの量とは限らないこともあります。
また全身を脂肪吸引したら一気にスリムになれるかも?と思われるかもしれませんが、大量吸引はとても危険です。なぜなら吸引する際に体液と一緒に血液も吸引されるため、多量の脂肪吸引は出血多量に繋がってしまうからです。また脂肪を除去するとそのスペースを埋めようとして、体液が吸引された部位に溜まりむくみとなって現れます。大量に脂肪吸引するとその分だけ水分が必要となり、血管内の水分まで奪われてしまうため血液がドロドロになり、血栓ができやすくなります。この血栓が原因となる肺塞栓症(エコノミー症候群)や心筋梗塞、溜まった水分からの感染症など命に関わるような疾患につながる可能性があるため、無理な大量吸引や、複数・広範囲に渡る部位を一度に吸引することはできるだけ避けてください。目安は体重の3~5%以内、例えば体重50㎏ならば1500~2500㏄以内です。
そして美しいボディラインになるためには吸引量よりも「デザイン」が重要で、脂肪を取り過ぎると女性らしい丸みが無くなり、美しさが半減してしまいます。必要な部分の脂肪はきちんと残して、余分な脂肪だけをしっかり取り除くことで、メリハリのある女性らしい美しいボディラインになることができます。
ダウンタイムやアフターケアは?
ダウンタイムはどのくらい?
お腹は施術範囲が広く吸引する脂肪の量も多いため、術後の痛みが他の部位よりも強く、ダウンタイムは長めになると言われています。体を動かした時、寝返りをうったりベッドから起き上がったりする時、トイレでいきむ時などに強い筋肉痛のような痛みや痺れが出ます。痛み止めで緩和できますが、特に当日~3日後くらいは痛みが強く現れるため、この間はできるだけ安静にしておくことをお勧めします。人にもよりますが、抜糸する1週間後頃には仕事復帰できる程度、3か月で8割、半年でほぼ完成となります。痛みは個人差がでやすいので、まずは無理をしないことが一番ですね。
内出血の青あざは吸引部に現れ、時間と共に重力によって徐々に下の方へ移動していきます。青あざは少しずつ体内に吸収されて黄色くなり、最後には消えます。この内出血が消えるまで平均で1ヵ月程度かかるので、温泉やプールなど人前で肌を見せる予定のある方は、余裕を持ってスケジュールを立てたいですね。
腫れやむくみはダメージを受けた皮下の炎症と注入したチューメセント液によるものです。腫れやむくみの症状が落ち着き、痩せたと感じられるまでにおよそ3~6か月かかるといわれています。
術後の通院は1週間ほどで抜糸、1か月目と3か月目に定期検診があるところが多いようです。
圧迫固定を忘れずに
お腹の術後は、胸の下辺りからお腹・腰周りをしっかりサポートできるロングタイプの医療用ウエストニッパーを着用して施術部位を圧迫します。ガードすることで接触による痛みを防ぎ、圧迫で筋肉の収縮や血液の循環が助けられるため、むくみや腫れなどが軽減できるとされています。圧迫を怠ると仕上がりに影響するため、術後1か月は24時間、2~3か月はできる限り12時間の圧迫を続ける必要があります。クリニックによってはウエストニッパーのレンタルができるようなので確認しておきましょう。
美しい仕上がりに向けてマッサージやケアを
2週間を過ぎた頃から、施術部位が硬くなる「拘縮」という症状が起こることがあります。皮膚が引き締まっている証拠なので心配ありませんが、マッサージをすることで回復が早くなります。またインディバという高周波温熱機器を利用すると、体を内部から温めて血行促進、体内細胞の活性化、新陳代謝を上げることによって、拘縮を和らげ、ダウンタイムからの早期回復や痛みの緩和が期待できます。術後1週間頃から使用可能となり、クリニックによってはアフターケアの一環として、無料でインディバ施術が受けられるところもあるようです。
お腹の脂肪吸引のメリット
- 確実に脂肪が除去できるため、ダイエットの努力が必要ない
- リバウンドの可能性が極めて低い
- くびれや腰の滑らかなカーブなど、体型を整えて理想のプロポーションに近付くことができる
- 気になる部分だけ部分痩せができる
- 1回の施術で脂肪を取り除くことができる
ダイエットでは体全体が痩せたり、必要な部分の脂肪が落ちて、逆に痩せたい部分は全く変化なかったり…ということも起こりますが、脂肪吸引では狙った部位だけを1回の施術でリバウンドなく細くすることができます。
お腹の脂肪吸引のデメリット
- ダウンタイムが長い
- 術後の痛みがある
- 完全に効果が出るまでに時間がかかる
- 副作用などのリスクを伴う
- 傷跡が目立つ、皮膚の凹凸、左右差、ボディラインの不自然さ、色素沈着、たるみが起こる可能性がある
- 思ったような仕上がりにならなり可能性がある
- 費用が高額
外科手術が必要になり、ダウンタイムも長くなるため完成までに時間がかかります。またお腹の場合は面積が広いため凹凸や左右差、たるみなどがとても目立ちやすい部位で、熟練したドクターの技術力が不可欠。失敗の可能性を低くするためには、ドクター選びやクリニック選びがとても重要になります。
ちょっと待って!脂肪吸引を受ける前のチェックポイント
良いクリニックやドクターを探すポイントは?
ドクターの技術力やセンスによって、仕上がりが変わってくるのが脂肪吸引。症例数が豊富であれば、ドクターの経験や技術、実績を見極めるための指標になります。ベイザーの場合は認定医制度が設けられているので、認定医かどうかも確認しておきましょう。
また治療内容やリスクについても丁寧に分かりやすく説明してくれるなど、ドクターとの信頼関係やコミュニケーションも大切になるため、まずはカウンセリングで実際に会って話を聞いてみるのも良いかもしれませんね。
信頼のおける熟練した技術を持つドクターが、最新のマシンで施術を行うことが満足のいく結果につながるポイントとなるので、そのような治療が可能なクリニックを探してみましょう。
手術のリスクを把握しておく
安全に施術が受けられるようになってきてはいますが、切開を伴う外科手術になるため、出血多量、感染症、内臓破損、麻酔事故などのリスクが考えられます。麻酔の管理やオペ室の衛生管理、万が一の緊急時の対応ができる体制が整っているかなど、クリニック選びも慎重に。
また体に負担がかかる施術であることから、心疾患がある、極度の貧血、アレルギー、特にお腹の場合は腹壁・臍ヘルニアの有無や過去の腹部手術の傷跡など事前にドクターへ伝えておくことも必要です。
料金設定や相場が自分に合っている?
脂肪吸引は保険適用のない自由診療なので、上腹部など1パーツで30万前後、腹部全体では70~100万程度とかなり高額になります。施術方法、施術の範囲、吸引量、施術代に含まれている諸経費等で費用は変動します。相場より費用が高かったり低かったりする場合は麻酔代、手技料(消耗品など)、血液検査代、処方薬、サポーター代、アフターケア代などが含まれているかどうか、また自分の場合は具体的にいくらかかるのか、など事前に確認しておくとトラブルが回避できます。
お休みが取れるかどうか?
個人差はありますが、ダウンタイムが長くなる可能性もあるため、仕事内容やお休みがどの程度取れるかなどのスケジュール調整も必須です。無理をすると症状が悪化する場合もあるため、術後の体調をみながら、徐々に普段の生活に戻れるように慣らしていきましょう。
本当に脂肪吸引が必要なのか?
色々と調べているうちに、脂肪吸引が不安になってきた方もいらっしゃると思います。脂肪吸引以外にも、脂肪溶解注射、超音波で脂肪を破壊するリポセル(HIFU)、脂肪のみを凍らせて破壊するクールスカルプティングなど、切らない他の方法もあるので検討してみては?
まとめ
脂肪吸引は減量というより、部分痩せで「美しいプロポーションに整える」ための施術といえます。とても効果が高い施術ですが、その分リスクもあります。そして何よりもドクターの技術力やクリニックの体制が重要となるため、良いドクターと巡り合うためには、ある程度脂肪吸引に対する基礎知識が必要といえます。トラブルを回避して満足のいく施術を受けるためにも、念入りに情報収集やチェックをしておきましょう。