
検索サイトの情報は適切に美容医療の情報を届けられているのか。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)
Googleやヤフーという主要な検索エンジンで、医療界での評価が定まらない美容施術が安易に上位表示されるケースが珍しくない。
一部の施術が健康被害を引き起こすことがある中で、結果的に検索エンジン上位表示によって誤解が生じるリスクがある。
「グロースファクター注入のほうれい線改善」を宣伝してよい段階なのか

グーグル(Google)。(写真/Adobe Stock)
例えば、この2025年1月の時点で、「グロースファクター注入によるほうれい線改善」という施術について、Googleで検索すると、ニュースとして確認される。
ヒフコNEWSでは22日にグロースファクター注入によるほうれい線治療について有効性や安全性が十分に確認されていない可能性について指摘している。bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子)などを皮膚に注入し、組織を増殖させることでシワの改善を狙う施術とされている。こうした薬剤はそもそも皮膚に注射することが想定されておらず、製薬企業が適正な使用を求めて文書を公表している。過剰増殖によるしこり形成や膨隆などのトラブルが報告されるケースもある。
日本の美容医療診療指針(令和3年版)では、PRP(多血小板血漿)にbFGFを添加する施術について「行わないことを弱く推奨する」という記載がある。
PRP+bFGFの施術による健康被害によって、訴訟も起きている。NHKなどで同治療による健康被害が大きく報道されたことがある。
こうした状況にもかかわらず、リスク情報が明確に示されないまま、検索エンジンにおいて、ニュースの欄に、グロースファクター注入によるほうれい線改善が効果的であるかのように情報提供されている。しかも、PRP+bFGFの注入ではなく、組織を増やしすぎる恐れがあるbFGF単独を注入するような施術である点は一層問題である可能性がある。
こうした医療界で評価が定まっていない美容施術が安易に検索サイトで情報拡散される理由は、医療機関などがPR媒体に費用を支払って、ニュース記事を作成させている状況が関連している。この場合、事実上、宣伝情報であるにもかかわらず、GoogleではPR媒体をニュースとして採用しているために、ニュース欄に掲載されることになる。
検索エンジンのトップに表示された情報であれば、利用者は「信頼できる情報源」と思い込みやすいというリスクも見逃せない。利用者が宣伝記事と気付かずに信頼してしまう可能性がある。
PR媒体の情報は宣伝と見なされる

ヤフー(Yahoo!)。(写真/Adobe Stock)
大手検索エンジンはアルゴリズムを基に情報を拾い上げるが、PR媒体によって金銭で掲載された宣伝情報があたかも中立な情報であるかのように情報発信されている状況は、日本国内でも問題視されているステルスマーケティングに近い状況が懸念される。
もっとも、PR媒体に掲載されていることで、広告であることが適切に示されていると解釈することはできる。「宣伝」「PR」という情報が目立つように示されていれば、読む人も宣伝だと分かる。そうした条件を満たせば、ステルスマーケティングにはならない。ただし、その場合、医療広告ガイドラインに従う必要がある。その条件から見ると、PR媒体に掲載された情報は適切ではない可能性も出てくる。厳しくチェックする必要が出てくる。また、広告であるならば、それをニュースと呼ぶのは適切ではない可能性がある。ニュースは中立な情報であるべきだ。
こうした状況を放置すると、医学的根拠に乏しい情報やPR記事が、正しい情報として受け止められる危険がある。安全性に不安のあるにもかかわらず、そうした施術を希望する人が増えれば、結果的に不必要な健康被害や経済的な被害を増やすことにつながりかねない。
こうした検索サイトの問題については、継続的にウオッチしていこうと考える。