
体重が重すぎる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
世界的にニーズが高まっている「GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)」が、筋肉をできるだけ減らさず、脂肪を中心に減らすことが遺伝子データの解析により示された。
2025年2月、香港大学の研究チームが世界最大級の遺伝子データを用いた解析結果を発表した。
GLP-1薬は「脂肪だけを狙い撃ち」する?

脂肪だけ減る?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
GLP-1薬は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発された。血糖値を下げる働きに加え、食欲を抑えて体重を減らす効果があるため、肥満症の治療薬としても世界中で注目されている。一方で、脂肪だけでなく筋肉も減らす可能性が課題とされている。「脂肪」が減るのか、それとも「筋肉」まで減ってしまうのかは、これまで明確に示されていなかった。
筋肉が減りすぎると、年を取ってから動けなくなる「サルコペニア」や、全身が弱る「フレイル」という深刻な健康問題につながる。そのため、筋肉を守りながら痩せることが非常に重要とされている。
今回、香港大学の研究チームは80万人以上の欧州系の人々の遺伝子データを調べ、GLP-1薬が体内のどの部位や組織に作用しているのかを詳しく解析した。
脂肪を優先で減らすというが筋肉も減る

美容目的では課題。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)
その結果、体重がBMIで1減ると、約7.9kgの脂肪が減る一方、筋肉は約6.4kg減ると分かった。また、体脂肪率も約4.5%低下していた。研究チームは、GLP-1薬の効果は「脂肪」を中心に作用し、筋肉を守りながら体重を減らせる可能性があると説明している。
研究としては、筋肉を守りつつ脂肪を減らすと伝えているわけだ。一方で、この研究を客観的に見れば、現実的には筋肉も減っている点に注意が必要だろう。
日本では、美容目的のGLP-1薬の使用が問題になっている。今回の結果から、脂肪を優先的に減らすと報告されたものの、美容目的で安易に使えば、筋肉量も減少することから、思わぬ悪影響が及ぶ可能性は否定できない。吐き気などの副作用も指摘されており、使用には十分な注意が求められる。