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GLP-1薬は「脂肪」だけを落とす?筋肉を守りつつ減量か、美容医療での利用には課題も、香港大学の研究チームが報告

カレンダー2025.3.12 フォルダー最新研究
体重が重すぎる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

体重が重すぎる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 世界的にニーズが高まっている「GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)」が、筋肉をできるだけ減らさず、脂肪を中心に減らすことが遺伝子データの解析により示された。

 2025年2月、香港大学の研究チームが世界最大級の遺伝子データを用いた解析結果を発表した。

GLP-1薬は「脂肪だけを狙い撃ち」する?

脂肪だけ減る?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

脂肪だけ減る?画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 GLP-1薬は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発された。血糖値を下げる働きに加え、食欲を抑えて体重を減らす効果があるため、肥満症の治療薬としても世界中で注目されている。一方で、脂肪だけでなく筋肉も減らす可能性が課題とされている。「脂肪」が減るのか、それとも「筋肉」まで減ってしまうのかは、これまで明確に示されていなかった。

 筋肉が減りすぎると、年を取ってから動けなくなる「サルコペニア」や、全身が弱る「フレイル」という深刻な健康問題につながる。そのため、筋肉を守りながら痩せることが非常に重要とされている。

 今回、香港大学の研究チームは80万人以上の欧州系の人々の遺伝子データを調べ、GLP-1薬が体内のどの部位や組織に作用しているのかを詳しく解析した。

脂肪を優先で減らすというが筋肉も減る

美容目的では課題。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容目的では課題。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 その結果、体重がBMIで1減ると、約7.9kgの脂肪が減る一方、筋肉は約6.4kg減ると分かった。また、体脂肪率も約4.5%低下していた。研究チームは、GLP-1薬の効果は「脂肪」を中心に作用し、筋肉を守りながら体重を減らせる可能性があると説明している。

 研究としては、筋肉を守りつつ脂肪を減らすと伝えているわけだ。一方で、この研究を客観的に見れば、現実的には筋肉も減っている点に注意が必要だろう。

 日本では、美容目的のGLP-1薬の使用が問題になっている。今回の結果から、脂肪を優先的に減らすと報告されたものの、美容目的で安易に使えば、筋肉量も減少することから、思わぬ悪影響が及ぶ可能性は否定できない。吐き気などの副作用も指摘されており、使用には十分な注意が求められる。

参考文献

HKUMed reveals genetic evidence that diabetes drug GLP-1 receptor agonists achieve weight loss primarily by reducing fat mass more than muscle
https://hkucms.hku.hk/press/news_detail_28147.html

韓国、GLP-1薬など違法なオンライン販売359件を摘発、偽造品や汚染品である可能性を指摘、日本でも類似の問題で注意喚起
https://biyouhifuko.com/news/world/10075/

GLP-1薬のセマグルチドに失明につながる視神経症リスク、副作用の可能性に注意、NAIONという病気リスクが上昇、米国ハーバード大学の研究グループが7月に明らかに
https://biyouhifuko.com/news/research/8540/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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