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再生医療で投与中に急変し死亡、厚労省が緊急命令 自家脂肪由来間葉系幹細胞による再生医療などの一時停止を命じる 製造施設にも停止命令、日本の再生医療の運用で事故や問題が相次ぐ

カレンダー2026.3.13 フォルダー 国内
厚生労働省が緊急命令を出した。(出典/厚生労働省)

厚生労働省が緊急命令を出した。(出典/厚生労働省)

 厚生労働省は3月13日、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(安確法)」に基づき、医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック(東京都中央区)および、細胞加工を担う製造施設に対し緊急命令を出したと発表した。

※日本再生医療学会は、間葉系幹細胞のうち脂肪などに由来するものは、間葉系間質細胞へと見直すように呼びかけているが、厚労省資料に従い、以下では、間葉系幹細胞と記す。

投与中に急変、死亡原因は未解明

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

厚生労働省。(写真/Adobe Stock)

  • 幹細胞治療中に急変→ 脂肪由来間葉系幹細胞の投与中に患者が急変し、その後死亡が確認された。
  • 原因はまだ不明→ 心肺停止の原因が分からないため、厚労省が調査を進めている。
  • 再生医療を一時停止→ 厚労省は法律に基づき、該当する再生医療の提供停止を命じた。

 今回の行政処分の理由は、同クリニックが提供した再生医療等提供計画「自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた慢性疼痛の治療」を受けた患者1人が投与中に急変。救急搬送中に心肺停止となり、搬送先の医療機関で死亡が確認されたという疾病等報告があったためだ。

 厚労省によると、今回の治療は、患者自身の脂肪から採取した細胞を培養・加工して体内に戻す「自家脂肪由来間葉系幹細胞」を用いたものだった。

 慢性的な痛みの治療として提供されていたとされる。

 患者は投与中に容体が急変し、救急車内で心肺停止となった。その後、搬送先の医療機関で死亡が確認された。

 厚労省によれば、原因が明らかになっていないことから、厚労省は安確法22条に基づき、銀座クリニックに対して該当する再生医療の提供の一時停止を命じたと公表している。

 さらに、今回の再生医療に用いられた特定細胞加工物は、株式会社JASCが設置する「JASC京都幹細胞培養センター」(京都市)と、韓国RBioが設置する「RBio幹細胞培養センター」(韓国・ソウル)の2施設で製造されていたことが確認されたと説明。厚労省は、安確法47条に基づき、JASC京都幹細胞培養センターにも製造の一時停止を命じた。

韓国Rbioは「患者が転倒」と釈明

RBioはウェブサイトトップでメッセージを出した。(出典/RBio)

RBioはウェブサイトトップでメッセージを出した。(出典/RBio)

  • 企業側は転倒事故と説明→ 患者がトイレ移動中に転倒し、外傷を負った可能性を公表した。
  • 細胞には問題ないと主張→ 幹細胞製剤自体には問題がないとの見解を示している。
  • 調査で原因確認へ→ 厚労省の調査で事故との関係が明らかになると説明した。

 なお、韓国のRBioは、自社ウェブサイト上で、今回の事故について説明を公表した。

 同公表文書によれば、2026年3月11日、株式会社JASCの日本再生医療協力病院の一つである東京銀座クリニックで、患者1人がトイレへ移動中に激しく転倒し、頸椎骨折などの外傷を負う事故が発生したと明らかにしている。

 これに続け、「正確な死因がまだ明らかになっていないため、日本の厚生労働省は安確法に基づき定められた手続きに従い、京都のCPCを運営するJASCに対して安全管理の点検および細胞製造の中止を命じました」と説明。

 その対応や事故に関して、Rbioは、「これにより、やむを得ず幹細胞再生医療の提供に支障が生じることとなりました。しかしながら、本件については細胞自体には全く問題がないものであり、この無関係性については、数日以内に厚生労働省の実地調査を経て明確になるものと考えております」と釈明している。

 そして、「私たちバイオスターグループは、日本のJASCとともに顧客の安全確保のため、製造施設およびクリニックの徹底した点検を実施し、万全の準備を整えた上で幹細胞再生医療の再開を目指してまいります。あわせて、不慮の事故によりご逝去された故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます」と述べている。

 日本のJASCの最高経営責任者(CEO)は、RBioのCEOと同じ名前である。RBioのウェブサイトでは、ファミリーサイトの一つとして、JASCが挙げられている。

再生医療の制度運用の課題も浮上

コージンバイオの行政処分に当たって衛生管理を疎かにすることは「再生医療等の提供を受ける者の命を危険に晒す」と指摘。(出典/厚生労働省)

コージンバイオの行政処分に当たって衛生管理を疎かにすることは「再生医療等の提供を受ける者の命を危険に晒す」と指摘。(出典/厚生労働省)

  • 再生医療で事故や処分が続く→ 近年、関連施設やクリニックへの行政処分が相次いでいる。
  • 運用体制の問題が指摘→ 医療機関や細胞加工施設の管理体制の不備も問題になっている。
  • 制度の信頼性が課題→ 事故が続けば、日本の再生医療全体の信頼にも影響する可能性がある。

 再生医療の安全管理は、個別の医療機関だけでなく、細胞加工施設を含めた提供体制全体にまたがる問題だ。

 日本において、再生医療関連施設が行政処分を受ける事例が相次いでいる。

 医療機関、細胞を製造する施設の杜撰な運用も明らかになっている。

 2026年、銀座鳳凰クリニック(東京都中央区)が改善命令を受けた。また、再生医療に関連するコージンバイオが改善命令を受けた。2025年には銀座のクリニックで死亡事故が起きている。2025年の事故は、医療法人やクリニックが名称変更を事故直後に行うといった不審な対応を見せていた。この事故は、コージンバイオが関連していた。

 再生医療の運用をめぐり、事故や行政処分が繰り返される状況は望ましいものではない。安全性が確保されなければ、継続した運営は難しい。日本の再生医療全体の信頼性の低下にもつながりかねない。

 今回の事故で、厚労省は経緯の把握と原因究明を進めるとしている。再生医療の提供体制や安全管理のあり方が、改めて問われる事例となっている。

参考文献

再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71555.html

再生医療クリニック改善命令、幹細胞や免疫細胞による治療で計画逸脱や報告漏れ 銀座鳳凰クリニック管理者を名指し 厚労省が公表
https://biyouhifuko.com/news/japan/16800/

再生医療関連施設を運営するコージンバイオ、厚労省が杜撰な管理に改善命令 クリニックは事件直後に名称変更し、その後廃止届出
https://biyouhifuko.com/news/japan/16308/

PRPや脂肪由来間質細胞も、厚労省が再生医療の汚染防止ルール、改正安確法に伴い新指針を通知
https://biyouhifuko.com/news/japan/14928/

再生医療で死亡事故、足を運んでみて分かったこと、「事故が起こってもどこか不明」お粗末な日本の再生医療運営
https://biyouhifuko.com/news/column/14235/

【補足】
・見出しで、慢性疼痛治療の一時停止と記載していましたが、再生医療などの一時停止と修正しました。(2026/3/14)

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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