
厚生労働省が緊急命令。(出典/厚生労働省)
福岡市の再生医療クリニック「医療法人社団禮聖会トリニティクリニック福岡(以下、トリニティクリニック福岡)」で、韓国ソウル市の培養センターなどに細胞加工を委託した幹細胞治療をめぐる問題が表面化した。
少なくとも5人に体調不良が起き、国の中止要請後も治療が続けられていたことに加え、韓国ソウル市の培養センターを含む委託先を含む第三者に強く主導される形で診療が行われていた実態も明らかになった。
厚生労働省は2026年4月21日、同クリニックに対し、再生医療の一時停止を命じる緊急命令を出した。
少なくとも5人が体調不良、それでも治療継続

厚生労働省は3月にも緊急命令を出したが、今回の緊急命令と関連した。(出典/厚生労働省)
今回の緊急命令に当たっては、トリニティクリニック福岡にまつわる複数の問題が指摘された。
まず、厚労省による立入検査で、トリニティクリニック福岡が提供した「自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた慢性疼痛の治療」を2023年5月12日または13日に受けた人のうち、少なくとも5人が、治療後に悪寒、発熱、吐き気などの体調不良を訴えていたことが分かった。少なくとも1人は、その後に入院加療を要したという。
それにもかかわらず、同クリニックは、法律に基づく疾病等の報告や原因究明を行わないまま、同じ計画による再生医療を続けた。厚労省は4月16日の立入検査でこうした状況を把握した。
さらに、今年3月に東京都中央区で起きた再生医療関連の死亡事案との関連が指摘された。
具体的には、トリニティクリニック福岡は、3月13日に緊急命令が出された「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」の死亡事案で使われた加工物と、「極めて類似した製造工程の特定細胞加工物を使っていた」とされた。
同死亡事案で問題になった製造委託先は、JASC京都幹細胞培養センターと、韓国ソウル市のRBio幹細胞培養センターだったが、トリニティクリニック福岡も同じ製造委託先を利用していた。
厚労省は3月13日と4月17日に、トリニティクリニック福岡に対して、死亡事案で使われたものと類似した加工物を用いた治療の中止を要請したが、4月20日の再度の立入検査で、同院が4月18日に治療を実施していたことを確認した。
患者選定も投与量も第三者主導だった

厚生労働省が緊急命令。韓国語でも報道発表した。(出典/厚生労働省)
今回、一層深刻なのは、トリニティクリニック福岡が再生医療に主体的かつ十分に関与していない診療体制が判明したことだ。
厚労省によると、トリニティクリニック福岡は、委託先側から、患者情報、対象疾患、投与する細胞数、投与方法などが書かれたリストの提供を受け、その内容に従って再生医療を実施していた。
さらに、施術費用も第三者が決め、治療計画の策定から実施まで細かい指示を出していたという。
その一方で、同クリニックは、患者が治療対象として適切かどうかや、投与する細胞数が妥当かどうかを主体的に判断していなかった。
厚労省は、こうした実態について、法律が想定する再生医療の提供とは異なると明記した。
これらを踏まえ、厚労省は保健衛生上の危害の発生や拡大を防ぐ必要があると判断し、4月21日付で、同クリニック関連の計画による再生医療と、製造方法が類似する再生医療の一時停止を命じた。
なお、厚労省によれば、問題はトリニティクリニック福岡だけにとどまらなかった。厚労省は、死亡事案と似た加工物を、同じ委託先で作っていた他の再生医療等提供機関でも、過去に投与後にめまい、嘔吐、呂律が回らないなどの症状を訴え、一過性脳虚血が疑われて入院した事案があったことを確認している。
今回の問題は、一つのクリニックだけの個別トラブルではなく、同様の製造工程による再生医療全体に広がる恐れがある。
今回、健康被害の発生、中止要請後の治療継続、さらに第三者主導の診療実態まで判明した点で、再生医療をめぐる事案としては異例の深刻さを示した。再生医療の健全化が求められている。
参考文献
厚生労働省「再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について」(2026年4月21日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72690.html
再生医療で投与中に急変し死亡、厚労省が緊急命令 自家脂肪由来間葉系幹細胞による再生医療などの一時停止を命じる 製造施設にも停止命令、日本の再生医療の運用で事故や問題が相次ぐ
https://biyouhifuko.com/news/japan/16958/
厚労省、再生医療の医療機関に注意喚起 届け出と異なる治療など問題を指摘、制度10年で再点検、救急対応や試料保管の徹底も求める
https://biyouhifuko.com/news/japan/17428/
