毎日の洗顔に使う水の性質によって、肌のうるおいやバリア機能に違いが生じる可能性が示された。「弱酸性軟水」の洗顔での効果が示されたのは世界初だという。
パナソニック HVAC & CCと神戸大学の共同研究グループが2026年7月に発表した。
洗顔後のpH上昇と「せっけんカス」に着目

洗顔後の肌では、水分の逃げやすさや肌表面のpH変化が、うるおいやバリア機能に関係する可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 洗顔後のpH上昇に着目→ 水道水ですすいだ後は、肌表面が本来の弱酸性から中性付近へ傾くことが確認された。
- せっけんカスも乾燥要因に→ 水道水中のカルシウムやマグネシウムがせっけん成分と反応し、肌に残る可能性がある。
- 弱酸性軟水を4週間使用→ 40~50代の男女27人が、弱酸性軟水と中性軟水を朝晩の洗顔に使って比較した。
研究グループの発表によると、健康な肌の表面は一般に弱酸性で、この状態を保つことが肌のバリア機能に重要とされる。一方、今回の研究では、水道水ですすいだ後の肌表面が、水と同じ中性付近へ傾くことが確認されたという。
pHは酸性やアルカリ性の程度を示す数値で、7が中性、それより低いと酸性となる。肌表面が本来の弱酸性から離れると、肌にすむ常在菌の環境にも影響する可能性があると研究グループは説明している。
発表資料では、水道水に含まれるカルシウムやマグネシウムにも着目している。これらの硬度成分は、せっけんの成分と反応し、水に溶けにくい「せっけんカス」をつくる。肌に付着すると、乾燥を招く一因になるという。
そこで研究グループは、カルシウムやマグネシウムを取り除いて軟水化し、さらに肌に近い弱酸性に調整した「弱酸性軟水」を開発した。軟水化によってせっけんカスを減らし、弱酸性化によって洗顔後の肌表面を弱酸性に保つ考えだ。
試験には、関東地方に住む40~50代の健康な男女27人が参加した。参加者を2つのグループに分け、弱酸性軟水と中性軟水をそれぞれ4週間、朝と夜の洗顔に使用してもらった。本人には使用している水の種類を知らせず、途中で使う水を入れ替える方法が採られた。
弱酸性軟水はpH4.2±0.4、中性軟水はpH7.8±0.7で、いずれも硬度は10ppm以下に設定された。参加者宅の水道水は平均でpH7.2±0.4、硬度60~120ppmだった。
研究グループは、額、右頬、左頬を対象に、肌のうるおいを示す角層水分量、肌から逃げる水分を示す経表皮水分蒸散量、肌のはりを示す皮膚粘弾性などを測定した。肌表面のpHや常在菌の状態を調べ、しっとり感やすべすべ感についてのアンケートも行った。
中性軟水でも肌のうるおいが増加

弱酸性軟水は、軟水による乾燥低減と、弱酸性による肌pHの安定化を通じて、肌環境やバリア機能の改善につながる可能性が示された。(出典:パナソニック HVAC & CC)
- 水分蒸散量が最大19%低下→ 弱酸性軟水の使用後は、顔の3カ所すべてで肌から逃げる水分が減少した。
- 中性軟水でもうるおい増加→ 硬度成分を除いた軟水そのものが、角層水分量の増加に関わった可能性がある。
- はりや質感も改善→ 弱酸性軟水では皮膚粘弾性が改善し、しっとり感やすべすべ感の評価も高まった。
結果として、弱酸性軟水を4週間使用した後、肌から逃げる水分を示す経表皮水分蒸散量は、使用前と比べて額で9%、右頬で13%、左頬で19%低下した。
経表皮水分蒸散量は、皮膚の内側から外へ失われる水分の量を示す。数値が低いほど水分が逃げにくく、肌のバリア機能が保たれていると評価される。今回の試験では、測定した顔の3カ所すべてで数値が低下した。
肌のうるおいを示す角層水分量は、弱酸性軟水だけでなく、中性軟水を使用した場合にも増加した。この結果について研究グループは、カルシウムやマグネシウムを取り除いた軟水そのものが、肌の保湿に良い影響を与えたと説明している。
一方、肌のはりや引き締まりを示す皮膚粘弾性の値は、弱酸性軟水の使用後に改善した。この指標は数値が低いほど、肌のはりが良いことを示す。使用前と比べて、額で15%、右頬で17%、左頬で16%低下した。
参加者へのアンケートでも、弱酸性軟水を使用した後は、「しっとりする」「すべすべする」といった肌の質感に関する平均評価が向上した。機器による測定に加え、主観評価でも改善が示された。
研究グループは、こうした変化につながった仕組みとして、次のような仮説を示している。
軟水化によるせっけんカスの抑制が肌の乾燥低減につながり、弱酸性化によって肌表面のpHが安定し、収斂作用によって肌が引き締まる可能性を考えている。さらに、こうした即時的な作用を起点に、中~長期的には悪玉菌の低減やバリア機能の改善が進み、炎症の抑制につながる可能性があるという。
共同研究者である神戸大学大学院海事科学研究科の辻野義雄特命教授も、せっけんカスなどの付着の低減とpH上昇の抑制を組み合わせたことが、良好な肌の状態につながったとの見方を示している。
洗顔では、洗顔料の成分や洗い方に目が向きやすい。今回の発表からは、それらを洗い流す水の硬度やpHも、肌のうるおいやバリア機能に関係する可能性が見えてきた。
毎日使う水の性質を整えることで、肌の状態を支えられる可能性がある。洗顔や入浴に使う水そのものを、スキンケアの一部として生かす道も考えられそうだ。
参考文献
世界初、「弱酸性軟水」による肌の保湿・バリア機能効果を確認
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20260727-68157/
