ニキビ痕の治療で広く使われるフラクショナルCO2レーザー。その効果を保ちながら、ケミカルピーリングを組み合わせることで、治療後に起こる「炎症後色素沈着」を減らせる可能性が報告された。
オーストラリアの研究グループが2025年に報告した。
CO2レーザーの弱点、どう防ぐか

ニキビ痕の治療では、凹凸の改善と色素沈着リスクの両方を考える必要がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 炎症後色素沈着→フラクショナルCO2レーザーはニキビ痕に有効な一方、肌の色が濃い人ではPIHが起こりやすいことが課題となる。
- 研究対象→重度のニキビ痕がある29人を、ピーリング併用群15人と非併用群14人に分けて比較した。
- ピーリング方法→レーザーの15日前から複数成分を含むピーリングを使用し、施術後は皮膚の再生を確認して7日目から再開した。
へこんだニキビ痕、いわゆる萎縮性瘢痕には、小さめに深く凹んだアイスピック型、広めに境界明瞭に凹んだボックスカー型、なだらかに凹んだローリング型などがあり、治療には皮膚の深い部分でコラーゲンの再構築を促す方法が用いられる。その手法の一つとしてフラクショナルCO2レーザーがある。
CO2レーザーは皮膚に微細な熱損傷を加えることで、線維芽細胞の働きや新しいコラーゲンの産生を促し、凹凸の改善を目指す。ニキビ痕治療では有力な選択肢となる。
一方でこの手法には大きな弱点がある。治療による炎症をきっかけとしてメラニン産生が活性化し、照射した部分が茶色く残る「炎症後色素沈着(PIH)」が起こるケースがあることだ。
紫外線に対する皮膚反応で分類されるフィッツパトリック・スキンタイプIII~VI、とりわけ色素沈着を起こしやすい肌ではPIHが問題になりやすい。論文では、過去の研究でフィッツパトリック・スキンタイプIV以上ではCO2レーザー後のPIHが高頻度に生じたとの報告も紹介している。こうした背景から、十分な治療効果を得ようとすると熱負荷が増え、色素沈着のリスクとのバランスが課題になる。
これまでにも、紫外線対策、レーザーの出力や照射密度の調整、冷却、ハイドロキノンなどの色素産生を抑える外用薬、ステロイド、トラネキサム酸など、さまざまなPIH対策が試されてきた。
今回の研究グループは、ピーリングをレーザーの前後に使って、そもそもPIHを起こりにくくする効果について検証した。
研究には17~45歳で、フィッツパトリック・スキンタイプIII~V、重度のニキビ痕を持つ30人が参加した。最終的には29人を解析し、15人がピーリングを使う群、14人がピーリングを使わない群となった。
ピーリング群では、CO2レーザーの15日前からピーリング製品を使用し、レーザー前日は休止した。レーザー後は皮膚表面の再生を確認した上で、7日目から使用を再開し、その後4週間継続した。使用したのは「メラノプロ・ピール・システム(MelanoPro Peel System)」と呼ばれる製品で、アゼライン酸10%、トラネキサム酸2%、サリチル酸0.1%、グリコール酸3.5%、乳酸2.7%、レチノール0.25~0.3%、ナイアシンアミド5%などを組み合わせている。
これらは単に角質をはがすだけではない。アゼライン酸やレチノールなどはメラニン産生に関わるチロシナーゼを抑え、トラネキサム酸は炎症に伴うメラニン産生経路に働きかける。ナイアシンアミドはメラノソームが表皮細胞へ受け渡される過程を抑えるとされる。複数の段階で色素沈着を抑える成分が含まれている。
6週間後の色素沈着は少なく

CO2レーザー前後のピーリング併用により、6週間後の色素沈着が少なかったと報告された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 色素沈着→レーザー6週間後のPIHはピーリング併用群で少なく、PIHASIの中央値は0.0、非併用群では0.2だった。
- 皮膚の回復→皮膚表面が再生するまでの日数はピーリング群6.4日、対照群6.2日で、ほぼ差がなかった。
- ニキビ痕への効果→ニキビ痕の改善幅には両群で明確な差がなく、ピーリングは主にPIH予防に役立つ可能性が示された。
結果を見ると、レーザーから6週間後の炎症後色素沈着は、ピーリングを併用した群で少なかった。
研究では、色の濃さ、色むら、色素沈着の面積を組み合わせた「PIHASI」という指標を使って評価した。ピーリング群の中央値は0.0、ピーリングを使わなかった群では0.2だった。統計解析でも両群の差は有意で、研究者らは、ピーリングによってPIHの程度を抑えられた可能性があるとしている。ピーリング群では、6週間後に目立つ色素沈着が認められなかった人が多かった。
一方で、ピーリング群でも皮膚の回復が明らかに遅れる傾向は見られなかった。皮膚表面が再生するまでの日数は、ピーリング群で平均6.4日、対照群で6.2日とほぼ同じだった。
また、肝心のニキビ痕そのものの改善にも差はなかった。ニキビ痕の重症度は両群とも改善し、その改善幅はピーリング群で平均1.27、対照群で1.36となり、統計的な差は認められなかった。つまり今回の範囲では、ピーリングを追加してもCO2レーザーによるニキビ痕の改善に明確な差はなく、PIHを抑えられる可能性が示された。
安全性については、ピーリング群の2人で皮むけやかゆみ、軽い不快感などの刺激症状が見られた。いずれもピーリングを4日間中止すると改善し、その後は徐々に再開できた。持続する赤みやアレルギー反応などは報告されなかった。
対象者が少なく、この研究がピーリング製品を販売するDermalogicaから一部研究資金の提供を受けている点には留意が必要だが、「レーザーの後に色素沈着が出たら治療する」という考え方ではなく、「レーザーの前から肌を準備し、治療後も色素産生を抑える」という予防的な考え方が注目される可能性がある。
参考文献
Hang X, Lim DS. A Novel Peel to Prevent Post‐Inflammatory Hyperpigmentation After CO2 Resurfacing for Acne Scars. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025;24(8). doi:10.1111/jocd.70366.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12309148/
