美容と健康は密な関係にあり、健康は美しさを保つ上で不可欠。スマートフォンアプリなどを活用した健康管理が注目を集めているが、活用している女性は一握りといえるようだ。
東京大学、聖路加国際大学の研究グループは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、働く日本人女性の健康管理におけるIoTおよびアプリの利用状況を調査した。東京大学などが2024年8月に結果を発表した。
※IoT(Internet of Things、モノのインターネット)とは、あらゆる「モノ」がインターネットに接続され相互に情報をやり取りする仕組み。健康管理の分野では、ウエアラブルデバイスやセンサーが体温や心拍数、睡眠パターンなどのデータを収集しアプリと連携して健康状態をモニタリングするといった用途が実用化されている。
女性にとって健康管理のアプリはどれほど身近?
美容医療にとっても健康管理は重要。デジタル技術の進歩で、スマホアプリやIoTデバイスを活用した新たなサービスが次々と登場している。例えば、肌の状態をチェックできるアプリや、美容クリニックのオンライン予約、さらにはカウンセリングを遠隔で受けられるサービスなど、アプリは美容と健康をサポートする強力なツールとなっている。
しかし、これらのアプリがどれほど女性たちの日常生活に浸透しているのか、その実態は明らかではない。最近では、スマートウォッチやスマートリングなどの健康管理のためのデバイスもさまざまな製品が開発されている。
研究グループは、全国の20歳から64歳までの働く女性1万人を対象にインターネット調査を実施した。調査では、健康管理のためのIoTおよびアプリの利用経験や、その利用目的、抱えている健康問題などを詳細に尋ねた。
IoT/アプリを利用している女性は14.6%
結果として、健康管理のために現在IoT/アプリを利用している女性は14.6%、過去に利用していた女性は7.0%、利用経験がない女性は78.5%であることが明らかになった。
多くの女性が健康管理目的でこれらのデジタルツールを利用していない現状が浮き彫りとなった。
調査では頭痛や片頭痛を抱える女性が24.6%と最も多く、次いで月経関連の症状や疾患が21.3%であることも判明した。しかし、これらの健康問題の改善にIoT/アプリが十分に活用されていなかった。
現在IoT/アプリを利用している女性のうち月経関連の症状や疾患を抱える女性は27.6%だったが、それを改善するためにIoT/アプリを利用している女性は17.1%にとどまった。
また、やせ・肥満・むくみ・ダイエットや栄養障害の問題を抱える女性は17.1%であったが、これらの改善を目的にIoT/アプリを利用する女性は27.8%と、実際の健康状態よりも多くの女性がこれらの目的でデジタルツールを利用していることが分かった。
IoT/アプリの利用が進まない要因として、大きく3つの課題がある。一つ目は、日本の女性向けに特化した適切なデジタルヘルス機器の開発が不足していること。二つ目は、それらの存在が広く認知されていないこと。三つ目は、医療機器としての承認プロセスやデータプライバシーの保護といった制度上の課題があること。今後、こうした課題を克服することで、健康管理へのアプリがより身近になる可能性がある。