
Sumit Mehta(スミット・メータ)氏。CETAS healthcare CEO(左)と、Raghav Tangri(ラガヴ・タングリ)氏。CETAS healthcareクライアントエンゲージメントマネジャー。(写真/編集部)
Sumit Mehta(スミット・メータ)氏
CETAS healthcare CEO
Raghav Tangri(ラガヴ・タングリ)氏
CETAS healthcareクライアントエンゲージメントマネジャー
- 医師の見方を数字で示す→ 美容医療が今後どうなっていくかを、現場の医師の実感から読み取ろうとする指標。
- 複数の視点で評価→ 需要の強さや新しい患者の増え方、人材や規制の状況など、7つの観点から全体の雰囲気を見ている。
- 業界の流れを知る手がかり→ 美容医療が伸びそうなのか慎重に見るべき時期なのかを考える、ひとつの参考材料になる。
──美容医療の指標になるIMCAS Confidence Indexを計画している。
メータ氏: 美容医療に関連する最高経営責任者(CEO)と話していると、美容医療業界のこれからの実態が読みづらいという声を聞くことが少なくありません。今年どうなるか、次の3カ月がどうなるかという見通しを理解するのが難しい世界です。
製剤やデバイスの売り上げから美容医療のこれからを予想できればよいですが、それでは先のことを理解できるわけではありません。
そこで、この市場の方向感を示す指標として、医師が美容医療のこれからをどう見ているかを数字にするという発想が出てきました。
医師が悲観的なら患者数や施術数は伸びにくい。そういうムードは、遅れて美容医療界に反映されます。
──2025年の結果は最初の数値が出た。
タングリ氏: 2025年は基準年となりました。グローバル指数が79.3でした。
指数は「7つの要素すべてに完全に自信がある場合を100」という前提で設計しており、79.3は「世界全体としては高い自信がある」水準だと解釈しています。
7つの要素は次の通りです。
- 診療の質を維持・向上できるか
- 美容医療サービスへの需要
- 新規顧客を獲得できるか
- コストを管理できるか
- 美容医療に関する規制環境
- 人材(有資格スタッフ)を確保・維持できるか
- 新技術に投資できるか
──指標はどのような価値を生むのか?
タングリ氏: 例えば、あるメーカーがこれくらいのフィラーを作る必要があると想定して生産したところ、結局、美容医療の状況が変わって半分も売れなかったということが起こり得るのが、今の美容医療です。
この先美容医療がどうなるのかを理解できる目安がないと、やみくもに期待だけで生産や在庫を増やしてしまい、健全な美容医療にならないのです。
もう一つ、よくある誤りは、美容医療の理解が偏ることです。美容医療に新たに参入する企業が、有名な医師数人の意見を聞いて美容医療の状況を判断する。しかし、その有名な医師の診療は、街中の「普通のクリニック」と違い、判断を誤ることがあります。
だからこそ、私たちは幅広い層の医師から情報を集める必要があると考えています。有名な医師だけでは、美容医療の真実には届きません。
──指数は、どのような仕組みで作っている?
メータ氏: IMCASとの協業がきっかけでした。
IMCASはもともと学会後に参加者のフィードバックを取っています。そこで私たちは、「その仕組みに上乗せして、医師向けの追加の質問を実施し、CETASが分析とレポート化を担う」形を提案しました。IMCAS側もオープンで、協業が成立しました。
タングリ氏: 私たちは医師に直接調査を行っている会社です。整形外科、循環器、歯科、美容医療など複数領域で、毎年多数の医師に直接ヒアリングしてきました。
ニュースや財務報告から推計するアナリスト型のやり方もありますが、私たちは医師に直接聞き、そこから分析する。この方法論が指数の土台になっています。
──指数を見ると、西欧が低く、アジアが高い傾向もある。
メータ氏: 2025年の地域別指数は、ラテンアメリカ(LATAM) 84.1、アジアパシフィック(APAC) 81.0、北米(USCAN) 79.9、西欧(Western Europe) 73.3 などでした。
これがどのような影響を受けているかは、二つの視点があります。
一つは市場の成熟度です。成熟市場は成長率が低くなりやすいし、場合によっては減速や縮小も起きる。一方、新興市場はベースが小さいので成長が速い。
もう一つは市場規模です。欧州は市場そのものが大きい。指数が低くても市場価値は巨大です。だから「指数が低い=市場が小さい」ではありません。
タングリ氏: 米国や欧州は金利が上昇して可処分支出が絞られ、財布の紐が固くなっています。さらに西欧では、ボリュームを足す治療よりバイオスティミュレーション志向が強まっている、というトレンドもあります。このように複合的な要因が絡み合って、指数に影響します。
──指数に「規制環境」が含まれています。
メータ氏: そこは誤解されやすいのですが、「機器が承認されるか」「製品が登録されるか」ではありません。臨床現場の運用として、誰が施術できるのか、どんな監督が必要なのか、医療委員会や倫理委員会がどう判断するのかという、施術のやりやすさ、やりにくさを反映しています。
例えば、ある国では歯科医ができる施術が、別の国ではできない。あるいは皮膚科医の監督が必要になる。そういうルールが、施術者の実感として数値に出てきます。
タングリ氏: ラテンアメリカなどで規制環境の数値が高く出るのは、制限が少なく、施術者から見ればやりやすいからです。ただし、これは医療倫理的に良い、悪いを指数が裁いているという意味ではありません。施術者の体感としての指標です。

IMCASで講演するRaghav Tangri(ラガヴ・タングリ)氏。CETAS healthcareクライアントエンゲージメントマネジャー。(写真/編集部)
- 美容医療の先行きの目安→ 医師たちが今後の美容医療をどう見ているかを数字で示し、市場の雰囲気を分かりやすくする取り組み。
- 業界の変化を早めに知る→ 需要が伸びそうか、慎重になるべきかを見極める材料として使われることが想定されている。
- 続けて見ることに意味→ 1回だけでなく継続して調べることで、美容医療の流れや変化が見えやすくなる。
──このような指数はどう利用されるのですか。
メータ氏: 指数は、参入や撤退のための判断材料ではありません。医療機器や製剤の世界では、主要な市場となる米国、欧州、中国、日本などが売上の大半を占めます。指数が低いからといって、主要市場から撤退するわけにはいかない。
指数の価値は別にあります。指数が低ければ、今年は売りにくいので、在庫、販売計画、広告投資を調整する必要がある。指数が上がれば「売れる準備を厚くする」。つまり指数は、年次予算、売上目標、販売の計画を組む際の判断をする材料の一つになります。
タングリ氏: 主要市場の成長が鈍ると、企業は伸びしろを探します。そのとき指数は「可能性がある地域」を見る材料になります。ただし繰り返しますが、指数だけで投資を決めることはありません。複数要因の一つです。
──指数そのものは有料?
メータ氏: 指数自体は、IMCASのニュースレターなどで広く共有されます。企業はまずそれを見て、「なぜこの地域は低いのか」「規制のスコアが高いのはなぜか」と疑問を持つ。そのときに初めて、私たちに追加調査や分析の相談が来る。私たちは、その深掘りのコンサルティングで価値を提供します。
──将来、この指数はどう育てる?
メータ氏: 単年の数字ではなく、継続して更新することで波形が見えるようになります。落ち込みが起きたとき、それがある会社だけの要因なのか、市場全体要因なのかを切り分ける助けになる。将来的には四半期や半年ごとの更新も視野にあります。段階的に、認知と運用を育てていきたいと考えています。
タングリ氏: 消費者信頼感指数のように、継続して追うから意味が出る。私たちは「消費者」ではなく「施術者(医師)」のセンチメントを取っている。業界の共通言語として、育っていく余地があると思います。
プロフィール

Sumit Mehta(スミット・メータ)氏。CETAS healthcare CEO(左)と、Raghav Tangri(ラガヴ・タングリ)氏。CETAS healthcareクライアントエンゲージメントマネジャー。(写真/編集部)
Sumit Mehta(スミット・メータ)氏
CETAS healthcare CEO。一次調査(primary market research)に基づく医療市場分析に長年従事。IMCAS Confidence Indexの構想・位置づけを統括。
Raghav Tangri(ラガヴ・タングリ)氏
CETAS healthcareクライアントエンゲージメントマネジャー。IMCAS Confidence Indexの具体設計、運用を担当。
