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4月にエクソソーム関連ガイドライン発表へ、美容医療にも影響、乱用抑制や安全性や有効性の確立へ、日本再生医療学会が記者会見で見通し示す

カレンダー2024.3.21 フォルダー 国内

ポイント

  • 日本再生医療学会がエクソソーム関連のガイドラインを4月に発表の見通し
  • 自由診療での乱用を抑制し、安全性や有効性の確立を目指す
  • 国際的な治療技術の進展と日本での規制整備の必要性を指摘

 2024年3月20日、日本再生医療学会が記者会見を開き、エクソソームを含む細胞外小胞(EVs)の臨床応用についてのガイドラインを4月に発表する見通しを示した。

 この取り組みは、国際的にEVsの応用が注目される中、国内での未承認利用が広がる状況を受け、正式なプロセスの構築と自由診療での乱用抑制につながるものになる。

エクソソーム治療の可能性と課題、日本再生医療学会が指摘

日本再生医療学会が新潟市で記者会見を開催。(写真/編集部 )

日本再生医療学会が新潟市で記者会見を開催。(写真/編集部 )

 記者会見は、新潟市で3月21日より3日間にわたり開催される第23回日本再生医療学会総会に先立ち行われた。この場には、学会理事長を務める慶應義塾大学教授の岡野栄之氏、東海大学教授の佐藤正人氏、総会会長の新潟大学教授の寺井崇二氏らが登壇した。

 会見では、新潟大学の寺井氏からエクソソームに関連したガイドラインが4月に公表予定であることが示された。

 寺井氏は、自身が専門とする肝臓病では、エクソソームの利用に大きな期待を寄せている。既に細胞を用いた治療法が臨床試験の段階にある中、エクソソームが肝臓の炎症や再生をコントロールする役割を果たす可能性が分かってきたからだ。

 日本再生医療学会では、「エクソソーム等の調整・治療に関する考え方ワーキンググループ」を23年12月から設置している。このグループはこれまでに、自由診療で行われる治療の科学的根拠の不足や、法律や製造工程の整備が不十分である点を問題視した。寺井氏は、「現在、国内で行われているエクソソーム治療に科学的根拠のあるものはない」として、その安全性や有効性を臨床試験で確認する重要性を強調した。

海外で進む細胞外小胞治療技術、日本も規制整備を

 寺井氏がこれから進める対策として重要と掲げたポイントは2つだ。いずれもエクソソームを含む細胞外小胞の安全な臨床応用を目指す上では不可欠となる。

  • 品質評価の基準となるチェック項目の提示→現状の医療環境において、細胞外小胞治療を安全に応用するためには、治療の前提となる細胞源を含めた品質評価の基準を明確にする必要がある。使用される細胞外小胞の起源や品質に関する詳細な評価が必須であり、その安全性と効果を保証するための重要なステップとなる。
  • 効果を確かめるFunctional Assayの検証→治療の有効性を科学的に検証するためには、適切なFunctional Assay(機能的試験)がどういうものかを決め、それに沿って検証を進める必要がある。これは、治療が目指す具体的な効果を正確に評価し、その結果をもとに治療法の改善や人に適用可能性を判断するために求められる項目であり、細胞外小胞治療の臨床応用を成功に導くための鍵になる。

 これらのポイントを踏まえた次のステップとして、以下のプロセスが実施されることになる。

  • リスクプロファイリング→治療に伴う潜在的なリスクを詳細に分析し、対応策を検討することで、治療を受ける人たちの安全を最優先に考慮。
  • 製造工程/品質の管理→細胞外小胞治療の効果と安全性を保証するために、製造工程と品質管理の基準を厳格に設定し、遵守できるようにする。
  • チェック項目の確認→安全な臨床応用に向けたチェック項目をもとに、治療前に必要な準備と評価を徹底。
  • 効果検証→適切なFunctional Assayを通じて治療の効果を科学的に検証し、その結果を基に治療法を最適化。

 こうした体制を整えて臨床試験で安全性や有効性が確認されれば、治療法は信頼性を得て、広く利用されるようになるだろう。

「まず教科書を示し、国に働きかける」

 エクソソームなどの細胞外小胞は、細胞から作られるため、細胞を用いた治療法と多くの共通点を持っている。しかし、細胞を直接含まないため、現在の法律では「特定細胞加工物」として「案確法」による規制を受けない点が課題になる。

※「安確法」は「再生医療等の安全性等確保に関する法律」の略称。再生医療を研究目的や自由診療で実施するときに、民間の委員会による審査を経て実施可能とする制度。これに対して、「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」は、国の審査を経て医薬品が承認されるプロセスを定めている。再生医療も保険診療で実施するには、薬機法に基づく承認を受ける必要がある。

 このような背景の下、海外では、細胞外小胞を用いた治療技術が進展している。新型コロナウイルス感染症、糖尿病、目の病気、呼吸の病気などへの安全性や有効性を確かめる臨床試験が23年10月の時点で93試験が実施されているという。市場規模も22年の約2億ドル(日本円でおよそ300億円)に対して、35年には45億ドル(同約6500億円)に達すると予想されている。日本でも有効活用を見据えた規制の整備が求められている。

 日本再生医療学会が23年10月に厚生労働省に働きかけたポイントは次の通りだった。

  • 厚生労働省の委員会での提言→日本再生医療学会がエクソソームなどの規制強化を提言。
  • エクソソームの現状→これまで法律の規制対象外だったが、今後のルール作りが求められている。
  • 日本再生医療学会の指摘→「細胞外小胞(EVs)」を規制の下に置く必要があると指摘。

 寺井氏は、「我々は規制をする立場にはなく、まずは教科書を示すことが大切」と表現した。学会としては、4月にガイドラインを示すことで、厚労省との連携を一層強めていく。今後、エクソソームを取り巻くルール作りが注目されることになる。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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