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肌を若返らせるECM製剤とエネルギーデバイス、画像でカスタマイズ「肌育」新時代、第112回日本美容外科学会で最新情報

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第112回日本美容外科学会(JSAS)の肌の若返り治療講演。(写真/編集部)

第112回日本美容外科学会(JSAS)の肌の若返り治療講演。(写真/編集部)

 肌の若返り(rejuvenation、リジュビネーション)を促す新しい手法について、ニードルRF(高周波、ラジオ波)、SUPERB、ECM製剤、肌育などの利用について議論された。肌に熱を与えるエネルギーデバイスに、熱を使わず肌再生を促すECM製剤を組み合わせていく治療が広がりを見せている。

 2024年5月31日に第112回日本美容外科学会(JSAS)で、「Skin Rejuvenation治療の多様性」と題した講演が開催された。

高周波や超音波治療の進化と「カスタマイズ治療」

第112回日本美容外科学会(JSAS)の講演会場。(写真/編集部)

第112回日本美容外科学会(JSAS)の講演会場。(写真/編集部)

  • 治療のアプローチ→画像診断に基づき、スキンケア指導、飲み薬や塗り薬、機械を使った治療を個人に合わせて行うカスタマイズ治療
  • 肝斑の治療→ニードルRFを利用して効果的に治療可能
  • ソフウェーブの特徴→7つのトランスデューサーから超音波を出し、1.5mmの深さを60~70度に加熱し、コラーゲンやエラスチンの生成を促す
  • VISIA→治療効果の確認に使用し、施術後の肌の引き締め、色調や質感の改善に役立てている

 KO CLINIC & Lab(横浜市中区)院長の黄聖琥氏は、肌の若返り治療において高周波や超音波などを使ったRFやHIFU(高密度焦点式超音波治療、集束超音波治療、ハイフ)など、熱を与えるエネルギーデバイスと薬の内服などによる保存治療を組み合わせることで効果を発揮すると解説した。画像診断に基づき、スキンケア指導、飲み薬や塗り薬という保存療法から機械を使った治療まで、個人に合わせて治療計画を立てる「カスタマイズ治療」に取り組んでいるという。

 日本人のシミの治療では、同じシミでも複数の種類が混在しているために治療が難しいと説明する。肌の表面に近いシミはレーザーで治療する一方で、より深い真皮の毛細血管や線維芽細胞をニードルRFで減らす治療を行っている。ニードルRFを利用することで肌表面に近いシミも改善しやすくなったと述べている。黄氏によると、女性ホルモンの変化などの原因で発生する肝斑は、対処が難しいが、最近ではニードルRFを利用することで、効果的に治療ができるようになった。

 咲くらクリニック(愛知県安城市)院長の小林直隆氏は、SUPERB(同期並行型超音波ビーム)の技術を使ったソフウェーブ(機器名、Sofwave)を、肌の若返り治療に利用している。この機器は超音波照射をする機器だが、ハイフとは異なっている。7つのトランスデューサー(発信器)から超音波を出し、1.5mmの深さを60~70度に加熱する。ハイフのように超音波を1点に集めるのではなく、面で超音波を照射する。これにより、コラーゲンやエラスチンの生成を促して肌のリモデリング(再構成)を促す。小林氏は実例を紹介しながら、小ジワや肌質改善に効果を示すと解説した。

 小林氏は、VISIAという肌診断機を使って、治療効果の確認に活用していることも紹介した。施術後に肌を引き締める効果ばかりではなく、色調や質感の改善につながることも多い。

機械とECM製剤を組み合わせた肌の若返り

第112回日本美容外科学会(JSAS)が都内で開催。(写真/編集部)

第112回日本美容外科学会(JSAS)が都内で開催。(写真/編集部)

  • ECM製剤→細胞外マトリックスをターゲットにした製剤の総称で、線維芽細胞の機能を維持改善し、コラーゲンやエラスチンを増やす
  • 原かや氏の説明→ECM(細胞外マトリックス)製剤を使って、肌に生理的な刺激を与えてコラーゲンやエラスチンの生成を促す「肌育」を行う
  • 使用する製剤→スネコス、プロファイロ、ジャルプロ、プルリアル、ジャルプロのヤングアイなどを使い分ける
  • 菅原順氏の説明→熱を使った治療と熱を使わない治療を組み合わせることで、肌の若返り効果を向上
  • 治療のポイント→熱を使った治療はシミに効果的だが、肌への負担にも配慮し、ECM製剤を使った治療が重要

 八重洲形成外科・美容皮膚科(東京都中央区)院長の原かや氏とJUN CLINIC(長野市)院長の菅原順氏は、機械とECM(細胞外マトリックス)製剤を組み合わせた肌の若返りについて説明した。

 原氏は、ECM製剤を使って、肌に生理的な刺激を与えてコラーゲンやエラスチンの生成を促していく「肌育」について説明した。導入のきっかけは2019年4月に、ECM製剤について論文を出していた海外の医師と直接話したことという。ヒアルロン酸がボリュームを出すだけではなく、肌の若返りにも使えることを理解。成分もヒアルロン酸とアミノ酸を組み合わせたシンプルなもので、欧州で認証を受けていることも評価し、導入を決めたという。

 原氏はECM製剤を、細胞外マトリックスをターゲットにした製剤の総称と説明する。ECM製剤により線維芽細胞の機能を維持改善して、ECMを構成するコラーゲンやエラスチンを増やす。逆にECMが減少すると、肌の細胞と骨格を結びつける役割を持つECMが失われ、肌のバリア機能低下などの問題につながり、老化やトラブルを引き起こすことにある。

 当初はスネコス(SUNECOS、商品名、以下同様)から開始し、プロファイロ(Profhilo)、ジャルプロ(JALUPRO)、プルリアル(PLURYAL)、ジャルプロのヤングアイ(Young Eye)という目元用の製剤などを使い分けている。「肌育」の考え方が広まり、施術を受ける人たちの理解が深まっているという。原氏は長期の安全性を重視しており、国内外での公的な承認を受け、しかも長期間肌に残らないことを重視して採用するECM製剤を決めているという。

 JUN CLINIC(長野市)院長の菅原順氏も、エネルギーデバイスに力を入れつつ、肌育にも取り組んでいる。熱を使った治療と、熱を使わない治療の組み合わせで肌の若返り効果を向上させることができるという見方を示した。レーザーのような熱を使った治療はシミの治療に効果を示すが、熱は肌に負担をかけるので注意が必要であることを指摘した。そこでECM製剤のような熱を使わない治療が重要になる。菅原氏は画像を示しながら、熱を使った治療の間に、熱を使わない肌育を組み合わせることでより良い効果を引き出せると説明した。

 このような機械とECM製剤との組み合わせは、肌の若返りで今後一層広がりを見せそうだ。また、講演者はいずれも画像診断を行って施術の効果や安全性を継続的に確認していくことを重視していた。画像での効果の確認も欠かせないのだろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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