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安全な医療提供と若返り研究の新展開に期待感、再生医療の活用には課題山積、日本美容内科学会が発足記念講演会を開催

カレンダー2024.4.22 フォルダー 国内
理事長を務める青木晃氏。(写真/日本美容内科学会)

理事長を務める青木晃氏。(写真/日本美容内科学会)

 2024年4月21日、日本美容内科学会の発足を記念した講演会が東京都内で開かれた。

 同学会の活動としてまずは、内服薬や点滴などの安全な普及が求められる。

「安全・安心」は始めの大テーマに

森下竜一氏。写真は第1回再生医療抗加齢学会のもの。(写真/編集部)

森下竜一氏。写真は第1回再生医療抗加齢学会のもの。(写真/編集部)

 同学会理事長はウェルエイジングクリニック南青山(東京都港区)院長の青木晃氏が務める。

 発足が発表されたのは天赦日かつ大安の吉日に当たる23年10月17日。ここ数年美容医療における非外科的治療の占める割合が増えてきている。

 美容内科が関連するのは、「内科医療」の範疇に入るものになる。例えば、ダイエットやホルモン療法などに使われる「内服薬」のほか、「ビタミン点滴」「プラセンタ注射」「サプリメントを使った栄養療法」「再生医療関連の点滴療法」などである。

 中にはその安全性や効果のエビデンスがきちんと取れていない治療法が、SNSなどで無秩序に広められており、これらの美容内科医療の安心・安全、効果の有無の問題が社会の注目を集めてきていることを青木晃氏は危惧している。

 今回の発足記念講演会では、学会顧問を務める大阪大学臨床遺伝治療学寄附講座教授の森下竜一氏が登壇し、美容医療で関心を高めている再生医療について講演した。

 森下氏は講演で、幹細胞培養上清やエクソソームの自由診療での利用について言及した。

 森下氏によると、そもそも幹細胞培養上清やエクソソームは「法的にはグレーゾーン」と指摘した。さらに、点滴には、自家培養間葉系幹細胞、幹細胞培養上清液やエクソソームの経静脈的投与が行われることもあるが、幹細胞培養上清液やエクソソームは未承認薬扱い(試薬と同じ)であり、経静脈投与は医療行為であり、本来は「アウト」であると説明。

 薬剤を提供する側は未承認医薬品を扱うことで薬機法違反となり、点滴をする側も医療法や医師法違反に問われるため、医療側には説明責任が必要とされ、何か事故が起こった際にはその医師の責任となる。

 実際のところ、医師の裁量権の下で行われているわけであるが、いつ何が起こってもおかしくない状況となっている。美容内科では、このような状況に対して安全・安心、真の効果の検証を十分行っていくことが欠かせない。

 日本美容内科学会では設立概要を次のように掲げている。

美容外科や美容皮膚科の治療・施術と違い、これら内科的な治療は結果がすぐに現れず、医療従事者も患者もその効果・副作用などがわかりにくいという側面があります。再生医療系治療を除けば、治療費用の単価もそれほど高価でないため、患者に安易に勧め漠然と継続されていることも多いのが現状です。業者主導で作られた安全性が担保されていない製剤を、医学的にしっかりと検証することなしに患者に使用している問題も散見されます。オンライン診療の利便性を逆手に取り、正しい適応を無視し、基本的な検査や副作用チェックをせずに薬だけを送りつける乱暴な医療が横行し社会問題にもなりました。これらの問題を解決し、真に効果的で安心・安全な美容内科医療を学会会員全員で構築・共有・啓発していくことが本学会のミッションです。

 さらに森下氏は、24年3月に厚生労働省から都道府県知事などに出された自由診療でのインフォームド・コンセントに関連した通知が紹介された。

 この中では、医療関係者が「承認等されていない医薬品・医療機器・再生医療等製品」を使う場合、医療関係者は治療を受ける人に対して「国により認められていないこと」「公的な救済制度の対象にならないこと」などを説明するよう求めていた。この通知では、説明した当日に治療開始するのは避けるよう求めていた。未承認の医薬品などでトラブルが相次いでおり、安易な治療を防ぐことが目的として考えられる。

 注射や点滴、培養上清液・エクソソームを含む再生医療のほかにも、美容医療そのものではないものの、機能性表示食品として販売されていた紅麹のサプリメントの問題も発生している。講演ではこの問題にも触れられた。

若返り「エピジェネティック・クロック」進展の見通し

2024年4月21日、日本美容内科学会の発足記念講演会が開かれた。(写真/日本美容内科学会)

2024年4月21日、日本美容内科学会の発足記念講演会が開かれた。(写真/日本美容内科学会)

 講演会では、そのほか「フィーリングアーツ」現代美術作家、フィーリングアーツ創始者の北村義博氏が紹介されたほか、学会顧問の日本抗加齢医学会理事長で、近畿大学医学部客員教授の山田秀和氏が登壇した。

 山田氏は従来、若返りに関連した医療に注目しているが、若返りの目安になる「エピジェネティック・クロック」に関連した進展が今年中にも見られる可能性があるようだ。いくら若返り治療をしても、どれくらい若返ったかを数字で確認できないと、効果が分からない。そこのニーズを埋め合わせる手段が登場するのは大きいだろう。

 美容内科の分野は良くも悪くも動きが活発だが、健全に発達していくことが不可欠だ。発足した学会の多くの人にメリットをもたらす美容内科普及への役割が期待される。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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