同じ年齢でも老化が進んでいる人、そうではない人がいるが、そのような老化の進み方を表すのが生物学的年齢。それを測定できる検査が国内でもこの秋に登場する。いわば老化を調べる検査。医療機関で提供されるタイプと、一般向けに提供されるタイプの2種類が登場する予定だ。
第24回日本抗加齢医学会総会のシンポジウムで開発者が発表した。
※生物学的年齢とは、生まれてからの年月によって決まる「暦年齢」とは異なり、体の組織や細胞の老化の度合いによって決まる年齢のこと。
レリクサとエピクロノスがそれぞれ開発
レリクサは今秋に「エピクロックテスト」という検査を医療機関を通して提供開始する。レリクサ社長は東京大学の研究員などを務める仲木竜氏。東京大学、筑波大学、国立遺伝学研究所、三菱商事などと協力して事業を進めている。
検査は「エピジェネティック・クロック」という方法を使ったもので、DNAの「メチル化」の状態を利用するものとなる。
※「DNAのメチル化」とは、遺伝情報を収めているDNAにメチル基と呼ばれる分子が付くことで、遺伝子の発現のオン、オフを調整する仕組みのことである。このようなDNAの調節の仕組みは、エピジェネティックな変化と呼ばれている。
DNAのメチル化は老化と関連していることが示されている。レリクサでは、日本人独特のパターンに合わせて老化の程度を測定できるようにした。
一方で、エピクロノスは24年10月に「エピゲノム年齢測定セット」の提供を開始する。岩手医科大学教授の清水厚志氏が社長を務めている。こちらは医療機関を通さずに販売される予定。
エピゲノム年齢測定セットも、エピジェネティック・クロックの方法を利用しており、海外の検査を日本人に合わせて調整し、老化を調べられるようにしたものだ。
海外では既にネット販売も
エピジェネティック・クロックについては、2013年に米国UCLA教授のスティーブ・ホバース氏が開発したHorvath時計が有名で、2018年にPhenoAge、2019年にGrimageといった第2世代、さらにダニーデンPACEという老化の速度を測る第3世代のエピジェネティック・クロックなどが登場している。日本抗加齢医学会理事長の山田秀和氏は、「暦年齢よりも生物学的年齢へと考え方を変える必要がある」と指摘している。
このようなエピジェネティック・クロックの方法を使った検査は海外では既にネット販売もされている。
エピジェネティック・クロックを利用した検査が一般的にあれば、生物学的年齢の方がその人の若さや健康に関連するという考えが当たり前になるかもしれない。これは病気に関係するほか、山田氏は、「生物学的年齢と見た目との関係も分かってきている」と説明している。美容医療とも密接に関係する。
現在、若返りの効果ははっきりと分からないが、今後は、NMN(β-ニコチンアミドモノヌクレオチド)などのサプリメントを使った場合、生物学的年齢が測定できれば、どのような効果が現れたかを数字で理解することができる。