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医療脱毛クリニック突然閉鎖、医療ローン返金不可に、美容医療の落とし穴、お金が返ってこない問題の内情とは、国民生活センターがトラブル詳細を公表

カレンダー2024.7.16 フォルダー 国内
美容医療の返金トラブルが問題に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

美容医療の返金トラブルが問題に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 国民生活センターは2024年7月10日、医療脱毛の契約後のクリニック閉院による返金トラブルでの返金交渉の経緯を公表した。医療ローンの支払いが続いているのにクリニックが閉院したために施術が受けられなくなったというもの。医院が突然閉鎖される状況は23年に大きな問題となっており、参考になる部分もありそうだ。

医療脱毛のクリニックが突然閉鎖

クリニック側と見解が相違。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

クリニック側と見解が相違。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • ADR結果報告→ 7月10日に公表された美容整形手術のトラブルに続き、医療脱毛に関連したトラブルを紹介
  • 事例→ Aさんが医療脱毛の契約後、クリニックが休院・破産し、施術未完了
  • 支払い状況→ Aさんは現金10万円と医療ローン15万円の支払いを行っていた
  • クリニックの対応→ 休院後、残りの医療ローン支払い不要と通知、返還は拒否
  • 契約の形態→ B社がクリニック運営に関与し、医師が業務委託契約で開設
  • 書面の不備→ 医療ローン契約書にB社の記載がなく、クーリング・オフ可能の可能性
  • 返金提案→ クリニック側が1万1000円の返金を提案、Aさんは拒否
  • 和解の不成立→ 委員がクーリング・オフを説明するも、クリニック側が異議を唱え和解に至らず

 国民生活センターが紛争解決委員会を通して消費者のトラブル解決に取り組んでおり、7月10日に公表されたADR(裁判外紛争解決手続)の結果報告の中で、美容整形手術のトラブルを紹介したが、今回は医療脱毛に関連したトラブルについて。こうしたトラブルの多くは公開されないが、重要なケースは法律に基づいて公表されている。

 Aさんが22年10月にクリニックで医療全身脱毛総額25万円8回コースの契約を結んだことから始まった。最初に現金10万円を支払い、残り15万円を医療ローンで15回払いにした。23年3月までに施術を3回まで受けたが、4月に突然クリニックが休院し、5月中旬に再開予定としていたが施術は再開されなかった。その後、最終的には破産手続が開始された。

 この過程で、クリニックは5月に残りの医療ローンの支払いは不要と回答してきた。Aさんは既に医療ローン6回分の支払いを済ませており、医療ローンの支払った分も含めて返還を求めたものの、クリニックは拒否した。

 クリニックは美容医療契約は無効にならないこと、仮に美容医療契約が無効でも医療ローン契約は別の契約なので無効にならないなどと回答した。

 国民生活センターの委員がトラブルの解決に向けて間に入り、双方の主張と契約の詳細が調べられた。Aさんは株式会社B社と契約したことになっており、株式会社は美容医療契約を結べないため、そもそも契約が違法である可能性が浮上。このためAさんは、医療ローンの契約も、「不実告知」のために無効であると主張した。

※不実告知は、重要なことを誤って伝えていること。

 一方、クリニック側は、医療ローン契約の当事者はクリニックの開設者である医師個人であり、美容医療契約も医師個人とAさんとの間で結ばれており有効であると主張した。

 B社はメディカル・サービス法人と呼ばれる形態の会社で、B社がクリニックの運営に関与し、クリニックの店舗ごとに業務委託契約した医師が開設して運営する形になっていた。B社が物件の契約や医療機器の購入、従業員の雇用をする形だ。

 美容医療契約は医師と施術を受ける個人の間で結ばれることが多かったが、Aさんの場合にはB社との間で契約が結ばれていた。一方で、医療ローン契約の書面にはB社の記載はなく、医師の名前が記載されており、Aさんに交付された書面に不備がある可能性が明らかになった。結果として、クーリング・オフも可能である可能性があった。

 その後、クリニック側は約1万1000円の返金を提案したが、Aさんはこれを拒否。委員はクーリング・オフが可能であると説明したが、クリニック側の見解は異なり、和解には至らなかった。

運営会社の経営が傾くとなすすべないことも

手術を伴わない非外科的手技では脱毛などが多い。(出典/厚生労働省、美容医療実態調査)

手術を伴わない非外科的手技では脱毛などが多い。(出典/厚生労働省、美容医療実態調査)

 今回のケースは、23年4月にクリニックが閉鎖され、9月に関連の運営会社が倒産に至ったという事例である。美容医療の中でも最もメジャーな脱毛に関わるトラブルとなり、身近な問題といってもいいだろう。

 ヒフコNEWSで何度も伝えたが、昨年4月に男性専門の医療脱毛ウルフクリニックが突然閉鎖となり、多くの男性が路頭に迷うトラブルがあった。運営に関与していたTBIは9月に経営破たんしている。

 今回の国民生活センターが紹介しているように、美容医療では、医療チェーンとの契約と見えて、実際には医師個人と契約を結ぶ形であることがある。メディカル・サポート法人といった運営会社が実質経営の中心になっており、クリニックを運営する医師がその支援を受けている形になる。メディカル・サポート法人が順調に経営できていればよいが、運営会社の経営が傾いたときに施術が不可能となり、業務委託契約を結んでいる医師も実質的な権限がほとんどないという状況になり得る。この場合、施術は受けられず、返金も得られないという事態になりかねない。

 美容医療では医療ローン契約を結ぶケースが多いと思われるが、クリニックが破綻した場合には、今回紹介したようなトラブルに巻き込まれる可能性もあり、十分に注意しておくことが必要だろう。

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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