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女性のしつこいニキビに画期的な研究結果、ガイドラインにも影響?

カレンダー2023.5.23 フォルダー最新研究

ポイント

  • 英国の研究グループが高血圧の薬スピロノラクトンのにきび治療への効果を検証
  • ニキビに関係するQOL改善の確認、有望な選択肢になる可能性が示された
  • 研究グループはガイドラインの推奨に影響を与える可能性があると指摘する
肌の状態が良好に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

肌の状態が良好に。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 ニキビ治療に高血圧の薬として使われている「スピロノラクトン」が効果を示すことが最新の研究から示された。これは日本でもニキビの治療に使われることがあるが、これまで根拠不足と指摘されてきた。

10代にニキビができた女性の約3分の1が悩まされる

ニキビは精神的にも悪影響。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

ニキビは精神的にも悪影響。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 今回の発表によると、10代にニキビができた女性の約3分の1は、その後もニキビに悩まされているという。その症状は、身体的な不快感をもたらすだけでなく、精神的にも大きな影響を及ぼす。場合によっては、抗生物質の内服も必要なときもあるが、薬の効かない耐性菌の出現が懸念されている。

 このたび英国サウサンプトン大学の研究グループは、高血圧の治療薬として一般的に処方されているスピロノラクトンが、女性のしつこいニキビの治療薬としてどのような効果があるかを検証した。今回の結果は著名な医学誌のブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)で5月17日に発表された。

 冒頭に書いたように、以前からこの薬は女性ホルモン作用があると知られ、ニキビ改善の目的で使われることがあった。それにもかかわらず、有効性を裏付ける証拠が不足していると指摘されていた。というのも、数十人程度を対象にした小さな試験で効果が報告されたに過ぎなかったためだ。

 そこで研究グループは、6カ月以上持続するニキビのある18歳以上の女性400人以上を対象に大規模な研究を実施した。参加者の半数にスピロノラクトンを投与し、残りの半数にはプラセボを投与するように、ランダムにグループ分けして、スピロノラクトンとプラセボの効果を比較した。

24週間目まで有効性が継続

しぶといニキビ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

しぶといニキビ。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 こうして判明したのは、12週間および24週間のアンケートと評価を通じて、スピロノラクトンを投与された人は、ニキビの状態が顕著に改善し、肌に対する満足度が高まり、副作用も最小限に抑えられていたことである。これらの結果は、スピロノラクトンがニキビの治療薬として有益であることを示す。

 大学の発表では、研究に参加した女性が自身の経験を語っている。それは何年もひどいニキビに悩まされていたものの、試験に参加した後、ニキビが消えて、気持ちが晴れたというものである。

 研究グループは、医療従事者がスピロノラクトンを用いたニキビ治療の有効性をどう見るかに影響を与える可能性があるという。さらに、この結果がガイドラインでの推奨に影響する可能性も指摘する。なお、日本の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023」では、スピロノラクトンはニキビ治療に推奨しないと明記している。今回の研究により海外や日本のガイドラインの方針がどのように影響されるか今後注目されそうだ。

参考文献

Non-antibiotic treatment for women with persistent acne shown to be effective
https://www.southampton.ac.uk/news/2023/05/non-antibiotic-treatment-for-women-with-acne-effective.page

Santer M, Lawrence M, Renz S, Eminton Z, Stuart B, Sach T H et al. Effectiveness of spironolactone for women with acne vulgaris (SAFA) in England and Wales: pragmatic, multicentre, phase 3, double blind, randomised controlled trial BMJ 2023; 381 :e074349 doi:10.1136/bmj-2022-074349
https://www.bmj.com/content/381/bmj-2022-074349

尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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