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GLP-1関連薬は骨折を増やすのか 骨密度低下を示す研究も ただし骨への安全性を言い切れる段階ではない セマグルチドは他薬より骨折15%減と米研究の発表

カレンダー2026.6.23 フォルダー最新研究
脚の状態を確認する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

脚の状態を確認する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 GLP-1関連薬は、体重減少の効果が大きい一方で、骨や筋肉への影響が気にされてきた。特に急速な減量では、骨密度の低下や骨折リスク、さらには体が弱ることへの不安も語られてきた。

 そうした中で、米国内分泌学会「ENDO 2026」で、セマグルチド(商品名オゼンピック、ウゴービ)は少なくとも2型糖尿病患者では、他の減量薬群より骨折が少なかったと報告された。

2型糖尿病では、他の減量薬群より骨折が15%少なかった

体型や体の変化を意識する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

体型や体の変化を意識する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • 骨折は15%少ない結果→ 2型糖尿病患者では、セマグルチド使用群の骨折が他の減量薬群より少なかった。
  • 比較対象に注意→ 通常の食事療法や運動療法との比較ではなく、他の減量薬群との比較だった。
  • 前向き研究が必要→ 骨折リスクを本当に下げるかは、今後の研究で確認する必要がある。

 学会で報告されたのは、米国の大規模電子カルテデータを使った後ろ向き解析だ。

 対象は、過去の骨折歴がなく、骨粗鬆症治療薬も使っていない18歳以上の2型糖尿病患者だった。

 セマグルチドを使用するグループは2万6324人、比較対照グループは3万3555人で、比較対照グループには、同じGLP-1関連薬で糖尿病治療に使われるデュラグルチド(同トルリシティ)に加え、食欲を抑えるタイプの経口減量薬であるフェンテルミンとトピラマートの合剤(同Qsymia)、さらに食欲や過食のコントロールに使われるブプロピオンとナルトレキソンの合剤(商品名Contrave)が含まれた。

 結果として、セマグルチドのグループはBMI低下が大きく、骨折件数も794件と、比較対照グループの1045件より少なかった。研究発表では、骨折が15%少なかったと説明している。

 ただし、ここで注意したいのは、今回比べた相手が、あくまで他の減量薬群だという点だ。

 食事療法や運動療法を中心にした通常の減量と比べた研究ではない。したがって、この結果だけで、セマグルチドの方が通常の減量より体が弱りにくいとか、骨折や、体が弱る「フレイル」の面でより安全だとまでは言えない。

 今回の学会報告だけを見ると、セマグルチドは骨折を増やさないどころか、減らす可能性があるようにも見える。だが、骨への影響については、別の研究も合わせて慎重に見る必要がある。研究者自身も、前向き研究で確認する必要があるとしている。

「骨に安全」とはまだ言えない

注射型の薬剤デバイス。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

注射型の薬剤デバイス。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

  • 骨密度低下の報告も→ 2024年の研究では、セマグルチド使用群で腰椎や股関節の骨密度が低下していた。
  • 骨折増加は未確認→ 現時点でセマグルチドが骨折リスクを明確に上げるとは示されていない。
  • 骨と筋肉も見る必要→ 減量時は体重だけでなく、筋肉量、タンパク質摂取、運動、骨密度にも注意が必要。

 一方、2024年には、骨折リスクが高い成人を対象に、セマグルチドを使った別の研究が発表されている。

 この研究では、参加者をセマグルチドを使うグループと、見た目は同じだが有効成分を含まない薬を使うグループに分け、52週間にわたって比較した。こうした研究は、薬の効果をより公平に見るために行われる方法だ。

 この研究で見られたのは、少し複雑な結果だった。セマグルチドを使った人では、骨を新しく作る働きの目安となる指標が高まったとは確認されなかった。一方で、古い骨を壊す働きの目安となる指標は上昇していた。これは「骨吸収マーカー」と呼ばれるもので、骨の入れ替わりのうち、壊す側の動きを見る指標だ。骨は一度できたらそのままではなく、古い骨を壊し、新しい骨を作る入れ替わりを続けている。このうち、古い骨を壊す側の動きが強まったことを示す結果だった。

 さらに、腰椎や股関節の骨密度も、比較したグループより低下していた。骨密度は骨の強さを考える上で重要な目安であり、低下が続けば骨折への注意が必要になる。ただし、この変化は、体重が減ったことで骨にかかる負荷が少なくなった影響かもしれないと研究では整理されている。体重が減ると、膝や腰への負担は軽くなる一方で、骨にかかる刺激も減るため、骨密度が下がることがある。

 ただし、この研究は骨折そのものが増えたかどうかを判断するための研究ではなかった。見ていたのは、骨密度や骨の入れ替わりを示す指標であり、骨折リスクを直接結論づけるには限界がある。

 そのため現時点では、セマグルチドを「骨折を増やす薬」と見なす根拠は乏しい。一方で、骨密度の低下が見られた研究もあるため、「骨に安全」と言い切ることもできない。今回の学会報告は不安を和らげる材料にはなるが、通常の減量と比べてどうなのか、筋肉量や身体機能にどう影響するのかは、引き続き確認が必要になる。

 特に高齢者では、体重を落とすことだけでなく、筋肉量を保つこと、十分なタンパク質を摂ること、運動を続けること、必要に応じて骨密度やビタミンDなどを確認することも重要になる。セマグルチドによる減量では、体重の数字だけではなく、骨と筋肉をどう守るかも同時に見ていく必要がありそうだ。

参考文献

Semaglutide linked to lower bone fracture risk
https://www.endocrine.org/news-and-advocacy/news-room/2026/jairo-norena-press-release-endo-2026

Hansen MS, Wölfel EM, Jeromdesella S, Møller JK, Ejersted C, Jørgensen NR, Eastell R, Hansen SG, Frost M. Once-weekly semaglutide versus placebo in adults with increased fracture risk: a randomised, double-blinded, two-centre, phase 2 trial. EClinicalMedicine. 2024 May 3;72:102624. doi: 10.1016/j.eclinm.2024.102624. PMID: 38737002; PMCID: PMC11087719.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38737002/

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ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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