GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1薬)は、血糖や体重を下げる薬として知られるが、最近はそのほかの作用にも関心が広がっている。
その一つとして、アルコール摂取や依存、衝動性などに影響する可能性が報告され、体重管理にとどまらない薬として研究が進んでいる。
米国の研究者らは、GLP-1薬の使用と暴力行動の関係を調べた研究を2026年に発表した。
衝動性や飲酒が暴力行動に結びつく仕組みに注目

鏡で体型の変化を確認する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 衝動性との関係に注目→ GLP-1薬を使っている人で、衝動性や飲酒が暴力行動にどれくらい結びつくかを調べた。
- 米国の成人7521人を分析→ GLP-1薬を現在使っている人と、過去に使っていた人を比較した。
- 脳への作用も研究対象に→ 食欲だけでなく、欲求や快感、衝動のコントロールへの影響も注目されている。
研究が注目したのは、GLP-1薬を使っている人では、衝動性や飲酒が攻撃的な行動に結びつく関係が変わるのかという点だった。
GLP-1薬は、セマグルチド(商品名オゼンピック、ウゴービ、リベルサス)などを含む。もともとは2型糖尿病や肥満症の治療に使われる薬だが、食欲だけでなく、欲求や快感に関わる脳の反応、衝動のコントロールにも関わる可能性が指摘されている。アルコールの摂取や依存に関する研究が進んでいるのも、その流れの一つだ。
今回の研究では、2025年に米国で行われた全国調査のデータを使った。対象は成人7521人で、このうちGLP-1薬を使ったことがある人は821人だった。分析では、現在GLP-1薬を使っている人597人と、過去に使っていたが現在は使っていない人224人を比べた。
研究では、過去12カ月の行動について自己申告で調べた。対象になったのは、けんかや脅し、強盗など、研究で暴力行動として扱われる項目だ。さらに、衝動性や飲酒の程度も調べ、それらが暴力行動にどの程度結びつくかを分析した。この研究でいう衝動性とは、考える前に行動しやすい、結果を考えずに動きやすい、欲しいものを待つのが苦手といった傾向を指す。調査では、こうした傾向を質問によって点数化した。
薬が暴力を減らすと決まったわけではない

注射薬と飲み薬を表す場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 衝動性との結びつきが弱い傾向→ 現在使用者では、衝動性が暴力行動につながる関係が弱まっていた。
- 因果関係は未確定→ GLP-1薬が暴力行動を減らすと証明した研究ではない。
- 今後の検証が必要→ 自己申告や一時点の調査であり、長期追跡研究などで確認する必要がある。
結果として、過去にGLP-1薬を使っていた人では、衝動性の点数が高いほど、暴力行動は約2.8倍多かった。また、飲酒の程度を示す指標が高いほど、暴力行動は約2.4倍多かった。
一方で、GLP-1薬を現在使っている人では、この増え方はどちらも約1.1倍にとどまった。研究全体としては、現在使用者では衝動性と暴力行動の関係が約62%、飲酒と暴力行動の関係が約52%弱まっていたと示された。
もっとも飲酒については、分析の方法を変えると、はっきりした差が出ない場合もあった。研究としてより確かに示されたのは、衝動性と暴力行動の関係が弱かったという点だ。
この研究は、GLP-1薬によって暴力行動が直接減ったと証明したものではない。現在使っている人と、過去に使っていた人を一時点の調査で比べた研究であり、暴力行動も本人の自己申告によって調べられている。薬をやめた理由や生活環境、健康状態などが結果に影響した可能性も残る。
今回の結果は、GLP-1薬を使用している間は、衝動性が攻撃的な行動に結びつきにくい可能性を示すものだ。体重や食欲だけでなく、欲求や衝動のコントロールにも関わる可能性があり、今後の検証が必要になる。
参考文献
Semenza, D. C., & Thomas, C. Glucagon-like peptide-1 receptor agonist use and violent crime among US adults. Criminology, 2026.
https://doi.org/10.1111/1745-9125.70058
