
ヘアブラシに絡まった抜け毛。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
GLP-1受容体作動薬などのGLP-1関連薬(以下、GLP-1薬)を使うと、髪が抜けやすくなるのか。この問題について、これまでヒフコNEWSでも記事をまとめてきた。
今回、あらためてこのテーマをまとめた総説が発表され、急な減量や体調変化をきっかけに抜け毛が増える休止期脱毛、男性型脱毛症(AGA)、女性型脱毛症との関連が示された。一方で、炎症性の脱毛などでは改善が報告される例もあることが分かった。
2026年5月に米ジョージ・ワシントン大学の研究グループが発表した。
使用者の増加で見えてきた髪への影響

抜け毛を手に取り確認する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 使用者増加で髪への影響に注目→ GLP-1薬の利用が広がる中で、脱毛との関連を整理した総説が報告された。
- 休止期脱毛が中心→ 急な体重減少や体調変化をきっかけに、抜け毛が増える可能性が指摘された。
- 薬剤ごとの差も示唆→ チルゼパチドやセマグルチドで脱毛の報告が目立つ一方、結果はまだ一致していない。
GLP-1薬は、もともと糖尿病の治療薬として使われてきた薬だが、肥満や体重管理の目的でも存在感を高めている。
使用する人が増える中で、吐き気や下痢などの消化器症状に加えて、皮膚や髪への影響にも注目が集まっている。今回の総説は、GLP-1薬と脱毛の関係について、これまでの研究を幅広く整理したものだ。
ヒフコNEWSではこれまでにも、GLP-1薬と脱毛の関係を検討した論文を紹介している。例えば、5つの研究、計2905人を対象にした解析では、セマグルチド(商品名オゼンピック、ウゴービ、リベルサス)やチルゼパチド(商品名マンジャロ、ゼップバウンド)で脱毛の可能性が示された。一方で、髪の再生の可能性を伝える報告もあり、影響は単純ではないとされていた。
さらに、2026年にはサウジアラビアの横断研究も取り上げた。体重減少目的でGLP-1薬を使った254人を対象にしたアンケートでは、76.0%が現在脱毛があると訴えていた。脱毛に気付いた時期は、投与開始後1〜3カ月が多かった。重い脱毛は、チルゼパチドやリラグルチド(商品名ビクトーザ、サクセンダ)の使用者で目立つ傾向があった。
今回の総説は、こうした過去の報告を含め、より幅広い文献を基に全体像を整理したものだ。対象となった薬剤には、セマグルチド、チルゼパチド、リラグルチド、デュラグルチド(商品名トルリシティ)などが含まれる。
この報告によると、GLP-1薬の使用中に見られる脱毛には、いくつかのタイプがある。中心として報告されているのは、急な体重減少や体調変化をきっかけに抜け毛が増える休止期脱毛だ。休止期脱毛とは、髪の成長サイクルが乱れ、本来より多くの髪が「休む時期」に入り、その後に抜け毛として目立つ状態を指す。
このほか、男性型脱毛症や女性型脱毛症との関連も指摘されている。特にチルゼパチドやセマグルチドで報告が目立っていた。ただし、薬剤ごとの差については、研究結果は必ずしも一致していない。
脱毛が起こる仕組みとして、まず考えられるのは急速な体重減少による身体への負担だ。短期間で大きく体重が減ると、髪の成長サイクルが乱れやすくなる可能性がある。食事量が減ることで、鉄、亜鉛、ビタミンD、ビオチンなど、髪の成長に関わる栄養素が不足することも考えられる。
さらに、ホルモンや代謝の変化も関係している可能性がある。糖代謝やホルモン環境の変化、甲状腺の働き、頭皮の血流の変化などが、毛根に影響する可能性が指摘されている。また、毛根の周りにある脂肪組織が髪の成長を支える環境に関わるという見方もあり、GLP-1薬がこうした組織に影響することで、毛の生え変わりに関係する可能性もある。
脱毛リスクは低い可能性も、発毛改善の報告も

ブラッシング後の抜け毛を確認する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 脱毛リスクは一律ではない→ 体重の減り方、栄養状態、性別、もともとの脱毛傾向などが影響する可能性がある。
- 因果関係は慎重に判断→ 薬そのものの影響か、急な減量や栄養不足によるものかは、まだ分けにくい。
- 改善報告も存在→ 炎症性や代謝異常に関わる脱毛では、髪の状態が改善した報告もあるが検証は今後の課題。
今回の総説では、GLP-1薬と脱毛の関連を示す研究が複数ある一方で、結論はまだ固まっていないと整理された。
薬剤別では、チルゼパチドやセマグルチドで脱毛の報告が目立つ。チルゼパチドは、体重が大きく減りやすいことから、急な減量が抜け毛につながっている可能性がある。セマグルチドについては、使用者が多いことが報告数の多さに影響している可能性もある。
一方で、実際に脱毛が起こる割合は低いとする研究もある。GLP-1薬を使えば必ず髪が抜けるというわけではない。体重の減り方、栄養状態、もともとの脱毛傾向、性別、ホルモンの状態などが重なって、抜け毛として表れる可能性がある。
過去にヒフコNEWSで紹介した横断研究では、脱毛の訴えが76.0%と高かった。ただし、これはアンケートによる調査で、薬を使っていない人との比較はない。そのため、薬そのものの影響なのか、急な体重減少の影響なのか、栄養不足や甲状腺の異常など別の要因なのかは分けにくい。今回の総説でも、因果関係の判断には慎重な姿勢が示されている。
また、GLP-1薬によって髪の状態が改善したという報告もある。糖尿病や代謝異常を背景に持つ人、炎症性や瘢痕性の脱毛症の人では、炎症の抑制、インスリン感受性の改善、頭皮の微小循環への影響などを通じて、髪によい影響が出る可能性があるという。ただし、発毛改善については小規模な症例報告や仮説が中心で、GLP-1薬を発毛治療として評価できる段階ではない。
現時点では、GLP-1薬を使用している人では、髪の変化に注意することが重要になりそうだ。薬剤ごとの違い、減量のスピード、栄養状態、脱毛のタイプなどに配慮する必要があるだろう。今後、さらに検証が進むと考えられる。
参考文献
Zarabian N, Farah M, Stines A, Friedman A. The Role of Glucagon-Like Peptide-1 Receptor Agonists in Hair Loss: Clinical Evidence and Proposed Mechanisms. Dermatol Surg. 2026 Jun 1;52(6S):S67-S71. doi: 10.1097/DSS.0000000000005176. Epub 2026 May 18. PMID: 42210891.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42210891/
GLP-1薬で脱毛は起きるのか 使用者の76%が抜け毛を訴え、一部薬剤や女性で目立つ傾向 因果関係は今後の課題
https://biyouhifuko.com/news/research/17630/
「GLP-1薬で髪が抜ける?」副作用の可能性を分析した結果とは、オゼンピックやマンジャロなどと脱毛の関係とは、「初の体系的レビュー」が可能性を指摘
https://biyouhifuko.com/news/research/15208/
