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AGA薬のフィナステリドに予想外のメリット?コレステロール低下などの効果、米研究グループが発見

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ポイント

  • 男性型脱毛症(AGA)薬のフィナステリドがコレステロール低下に関連
  • 高用量のフィナステリドを摂取したマウスでは動脈硬化の進行が遅くなった
  • AGAの治療が心臓病予防におけるフィナステリドの使用に新たな可能性を示唆している。
薬に意外なメリット?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

薬に意外なメリット?写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

 美容皮膚科でもよく処方されているフィナステリド──一般的に男性型脱毛症や前立腺肥大の薬として知られるこの薬が、コレステロールを下げ、心血管疾患のリスクを低下させる意外な効果を持つ。そんな意外な発見が、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究グループによって2024年1月に発表された。

予想とは逆の効果

脱毛の薬なのに。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

脱毛の薬なのに。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • フィナステリドと健康リスク→世界中で数百万人の男性が使用するフィナステリドが、動脈硬化など心臓病や血管病のリスクと無関係に見えるが、コレステロールに影響を与える可能性を研究。
  • コレステロールへの影響調査→米国国民健康栄養調査データを用いた人間に関する研究で、フィナステリド使用がコレステロール値を低下させる可能性が示された。
  • 研究の限界と動物実験→フィナステリド使用者が少数で、詳細な使用状況が不明であったため、確定的な結論を出すために動物実験を行うことに。

 フィナステリドは、世界中の数百万人の男性が男性型脱毛症や前立腺肥大の治療のために世界中で使われている薬。それに対して、動脈硬化は心臓病や血管病といった、世界で最も一般的な死因になる病気の根本的な原因になっている。フィナステリドと心臓病や血管病と関連性は、一見すると無関係にも見えるかもしれない。

 今回、研究グループはフィナステリドが、コレステロールを上昇させる可能性があることも想定して、人間を対象として調査を行った。人間に関する研究では、09年から16年にかけての国が実施している「米国国民健康栄養調査」に参加した男性のデータを分析。

 この研究から明らかになったのは、フィナステリド使用によってコレステロールの値が低下する可能性があること。研究の責任者ジャウマ・アメングアル助教は、「逆の結果になるとも思っていたので興味深かった」という。

 一方で、研究では、分析に含められた約4800人の調査回答者のうち、フィナステリドを使っていたのは155人だけで、どれくらい薬を飲んでいたかなどの情報も不足していた。

 要するにフィナステリドが本当にコレステロールに効果を示すかがはっきりしなかったため、研究グループは動物実験でも確かめることにした。

動物実験でも確認されたリスク低下の効果

フィナステリドの効果。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フィナステリドの効果。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 動物実験の結果→動物実験においても、フィナステリドが動脈硬化のリスクを低下させるという結果が確認。
  • 具体的な効果→高用量のフィナステリドを摂取したマウスで、血液中のコレステロールレベルが低下し、動脈硬化の進行が遅くなり、肝臓内の炎症が低下するなどの効果。
  • 研究グループの見解→高用量のフィナステリド使用に関して人とマウスの反応の差を考慮し、研究結果は不自然なものではないと指摘。

 こうして確認されたのは、動物実験においても、フィナステリドが動脈硬化のリスクを低下させるという結果。

 具体的には、高用量のフィナステリドを摂取した、遺伝的に動脈硬化になりやすいタイプのマウスで、血液中のコレステロールレベルの低下し、動脈硬化の進行が遅くなり、肝臓内の炎症が低下するなどの効果が確認された。

 研究グループによると、高用量のフィナステリドが人間の使用料と比べるとはるかに高濃度だったものの、マウスが薬剤の濃度に対して人とは異なる反応を示すため、今回の結果についておかしなところはないと指摘する。

 また、フィナステリドのテストステロンに作用する特徴から、これが動脈硬化のリスクを低下させる可能性があると研究グループは推定する。

 美容医療の目的で使われることが多い薬だが、思わぬメリットがあるのかもしれない。

参考文献

Common hair loss and prostate drug may also cut heart disease risk in men and mice
https://aces.illinois.edu/news/common-hair-loss-and-prostate-drug-may-also-cut-heart-disease-risk-men-and-mice

McQueen P, Molina D, Pinos I, Krug S, Taylor AJ, LaFrano MR, Kane MA, Amengual J. Finasteride delays atherosclerosis progression in mice and is associated with a reduction in plasma cholesterol in men. J Lipid Res. 2024 Jan 23;65(3):100507. doi: 10.1016/j.jlr.2024.100507. Epub ahead of print. PMID: 38272355; PMCID: PMC10899056.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38272355/

美容皮膚科研究が示す、脱毛症改善の新たなヒント、コラーゲン&アミノ酸サプリ効果確認
https://biyouhifuko.com/news/research/2831/

たばことAGA、喫煙本数が多い男性は薄毛になりやすい、美容皮膚科の医学誌で1月発表
https://biyouhifuko.com/news/research/5116/

若者や女性も、AGA治療の相談が急増、都が注意点を示す
https://biyouhifuko.com/news/japan/3132/

男性看護師座談会 Vol.1 「美容医療現場で働く男性看護師に聞いた!よくお願いされる施術は?」
https://biyouhifuko.com/news/column/4167/

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Author

ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表 獣医師/ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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