タトゥーの人気が急速に高まる一方で、インクの健康への影響についての研究が始まっており、今回、血液のがんの一種である悪性リンパ腫のリスクが上昇することが確認された。また、刺青レーザー除去がリスクに関連していることも確認された。
美容医療でもアートメイクや刺青除去の形でタトゥーは関連する話題であり、知っておく価値がありそうだ。
研究結果は、スウェーデンの研究グループが2024年5月に発表した。
インク成分に発がん性が指摘されるものも
- 研究対象→ スウェーデンで診断された20歳から60歳の悪性リンパ腫患者と条件を合わせた対照グループ。
- 研究結果→ タトゥーを入れたことがある人は、悪性リンパ腫の発症リスクが21%高い。
- リスクの変動→ タトゥーを入れてから2年以内が最もリスクが高く、時間が経つと一旦低下するが、11年以上経過すると再び増加する傾向がある。
- リスクの一貫性→ タトゥーの面積や色に関係なくリスクが存在。
タトゥーは、若者を中心に急速に普及しているが、一方で、そのインクの成分となる化学物質には、発がん性が指摘されているものが含まれていることがある。
※例えば、「芳香族アミン」「多環芳香族炭化水素」「金属類」といったものが関連する。
これらの物質が人体にどのような長期的影響を与えるかは十分には解明されていない。
研究グループでは、タトゥーで使われるインクが、体内の免疫に関連しているリンパ球が集まっているリンパ節に蓄積されることに着目した。このことが血液のがんの一種である、悪性リンパ腫のリスクにどの程度影響するかを調査対象とした。
研究グループは、スウェーデンで07年から17年に診断された20歳から60歳の悪性リンパ腫患者のグループと、条件を合わせた対照のグループを比べることで、タトゥーが悪性リンパ腫に与える影響を分析した。
研究には1万1905人が参加し、タトゥーを入れたことがある人の割合が患者のグループでは21%、対照のグループでは18%含まれていた。
この研究の結果、タトゥーを入れたことがある人は、そうでない人に比べて悪性リンパ腫の発症リスクが21%高いことが示された。
特に、タトゥーを入れてから2年以内のリスクが最も高く81%高かった。時間が経つといったんリスクは低下するものの、11年以上経過すると再びリスクが増加する傾向が見られた。
タトゥー面積の大きさや色に関係なく、リスクは一貫して存在したことも分かった。
刺青レーザー除去はリスク上昇につながる可能性
- レーザー治療とリスク→ レーザー治療によるタトゥー除去が行われた場合、リンパ腫リスクが特に増加する可能性が示された。
- 化学物質の規制→ 研究グループは、タトゥーインクに含まれる化学物質の規制強化の必要性を指摘。
- 因果関係の不明確さ→ タトゥーやレーザー除去がリスクにつながる明確な因果関係はまだ解明されていない。
美容医療の観点で気になるのは、レーザー治療によるタトゥー除去が行われた場合、リンパ腫リスクが特に増加する可能性が示されたことだ。
今回の研究では、タトゥーをした人のうちレーザーによる刺青除去まで受けている人の人数は少なかったため、2種類の分析方法で調べられている。そのような検討の結果から、レーザーによる刺青除去を受けた人ではリスクの上昇が示された。
刺青は一般的になっており、それを除去する治療もよく行われるようになっている。今回の研究は、刺青の健康への影響について調べた最新の研究の一つであり、知識として知っておく意義がある。
また、研究グループは「タトゥーインクに含まれる化学物質の規制強化の必要性」を指摘している。アートメイクや刺青で使われるインクもより健康に悪影響がないものが開発されることが重要になるだろう。
もっとも今回の研究では、タトゥーや刺青レーザー除去の何がリスクにつながったのかという因果関係については明らかになっていない。そもそもインクが原因であるということもできない。刺青で肌に傷を付けるプロセスがリスクにつながるなど、さまざまな要因が想定できる。このような詳しい情報については、もっと研究を重ねて突き止める必要がある。
タトゥーを利用する立場からすると、最初の2年間のリスクが特に高かったこともあり、刺青を入れて2年以内は健康への影響を注意深く見ておくことが重要だろう。また11年以上経ったときもリスクが再び高まるため、古くなった刺青の影響も注意しておくとよいかもしれない。